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選手だけのミーティングでU-23日本代表が結束…佐藤恵允の背中押した内野貴史の計らい

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DF内野貴史

 U-23日本代表は23日夜、選手のみでミーティングを行った。最初はキャプテンのMF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)が話すと、副キャプテンのDF内野貴史(デュッセルドルフ)は2番目をMF佐藤恵允(ブレーメン)に託した。話し終わった佐藤は内野に「なんか楽になったわ」と明かしたという。内野は「選手ミーティングという機会を設けてよかった。それを改めて再確認した」と語った。

 グループリーグ突破を決めていた日本だが、22日の第3節・韓国戦で今大会初黒星を喫した。25日には決勝トーナメントが始まり、準々決勝で開催国カタールと対戦。負けたら解散という空気が流れるなか、韓国戦翌日に選手たちは約30分間のミーティングを行った。キャプテンと副キャプテンが中心となり、一部の選手たちが思いの丈を吐き出したという。

 持ち前のキャラクターでチームを明るくしていた佐藤だが、ここまで3試合で決定的な場面を決めきれず。内野はそんな佐藤の内面を察し、ミーティングの2番手として話すよう促した。

「ポジションも左サイドでやることもあって、いろいろサッカーの話をしていた。彼は大丈夫とみんなの前で言っているが、彼なりにいろいろ難しく、2人で話したときも溜まっているものは感じていた。恵允に溜まっているものがあるとして、チームにもっと吐き出してほしかった。そういう意味で恵允に話してほしいと自分から言いました」

 誰かに打ち明けることの意味は、自らも体験していた。

「自分も今まで、自分だけで溜め込んで色々試行錯誤した時期があった。難しい時期があったというその経験値から、誰かに話したらやっぱり楽になると思った。ましてやそれが一緒にピッチの上で戦うチームメイトなら、もう一回ピッチの上に立ったとき、自分の気持ちをみんなが理解してくれるという安心感も出てくる。一人で抱え込むより、みんなに話したほうがいいということは、今までの経験から思っていた」

 内野はみんなで話したことの意味を噛み締める。「恵允のちょっと楽になったという言葉を聞いて、自分もうれしかった。もうちょい早くやっておけばよかった(笑)。これからもみんなで、そういうことは積極的に設けたいとみんな言っていた」。決勝トーナメント初戦を控えた今、再びチームがひとつになった。

 発足から2年、チームはパリオリンピック出場を懸けた大会に挑んでいる。注目度は急激に増し、一つひとつのプレーに対して批判も集まることも多い。「世間から叩かれたり、注目されることは、そういう職業なのでしょうがない」(内野)。それでも味方はいる。韓国戦でキャプテンマークを巻いた内野は、ロッカールームの円陣で「ここにいる選手23人とスタッフは絶対に仲間だから」と選手たちに伝えたという。

「キャプテンだったので、そこで話す機会があった。ピッチに立ってもまたロッカールームに戻ったら叩く人なんていないし、全員がファミリー。またここに帰ってこれるから。ピッチに出たときに堂々とサッカーしようと話しました」

 日の丸を背負う戦いだからこその思いがある。「感情移入して見てもらえている嬉しさは選手として感じている。ここには望んで各々が来ているので、そういうのが嫌だったらやめればいい」。反響に対して文句は言わない。「だったら見ててくれという気持ち。サッカーで表現する」。ひとつになった仲間とともに、熾烈な戦いへと突き進んでいく。

(取材・文 石川祐介)

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石川祐介
Text by 石川祐介

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