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男泣きの川崎F・DFジェシ「いろいろな想いがよぎった」

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[9.22 J1第26節 F東京 1-2川崎F 味スタ]

 その目には、涙があった。DF井川祐輔の出場停止を受け、CBとしてスタメン出場を果たしたDFジェシは、チームの7試合ぶりの勝利に大きく貢献した。守備面ではもちろん、攻撃面でも後半9分に決勝点となるゴールを決めた。「自分の母国から遠く離れ、家族とも離れて海外でプレーしている中で、重傷を負って、なかなか復帰できなかった。まだ、多少の痛みはあるが、こうしてプレーできています」と、涙をこらえながら、ピッチに立つ喜びを口にした。

 ジェシは4月18日のナビスコ杯・仙台戦で負傷し、左ヒザ後十字靭帯損傷で全治3か月と診断された。その後、治療、リハビリを経て、予定より1か月遅い8月18日の横浜FM戦(2-2)に途中出場し、戦列に戻っていた。それでも、スタメン出場は負傷以降は初めてだった。

 直近の6試合、チームは未勝利(3分3敗)と苦しんでいた。それでもジェシは、チームにはストロングポイントがあると感じていた。23節の名古屋戦こそ0-1とスコアレスで敗れたが、それ以外の試合では得点を挙げることができていた。試合前、ジェシは「ゴールはできているから、失点をしないように行こう」と、チームに話したという。守備で凌ぐことができれば、ゴールは取れる。そう信じられたからこそ、前半、F東京に押し込まれる展開になったが「チーム全員がゴールできると自信を持ちながら守れた」と振り返る。

 前半を耐えると、後半のキックオフから1分も経たないうちに、川崎FはFW楠神順平がゴールを決めて1-0とリードする。さらに後半9分にはゴール前でFKを得ると、ジェシがMF中村憲剛の蹴ったボールに合わせ、追加点を挙げた。

「本当に良いボールを中村選手が入れてくれました。FKを蹴る前に、目が合ったので、中に入れてくるなと思っていました。あとはマークに付いてきたDFに、体を当ててフリーになりました。私もDFだから分かっているのですが、ゴールに向かって行く選手の方が、力を持ってゴール前に入れます。しっかり力を持ってゴール前に入り、正確なヘッドができました。良いボールを上げてくれた憲剛にも感謝したい」

 得点を挙げた瞬間、多くの想いが込み上げてきたという。「時間は一瞬だったと思うけど、いろいろなことが頭をよぎりました。苦しい時期を過ごしましたし、多くの人に助けてもらいました」。サポーターの前でゴールを喜んだジェシは、自陣に戻る際に負傷した左ヒザにキスをした。「ここまで大きなケガを負ったことはなかったから。でも、苦しい時間を過ごして、ゴールを決めることができた。今日はヒザの状態が良かったから、そうしたんだよ」。

 試合終了間際、川崎Fは1点を返されてしまった。それでも、ジェシの追加点があったからこそ、2-1で勝利できた。ケガに苦しんできたジェシだが、「自分は幸せだ」と語る。「ケガをして、なかなか復帰できなかった。チームから離れていたのに、サポーターは私を信じてくれて、後押ししてくれました。今日のようなゴールができた自分は幸せです。支えてくれたサポーターに感謝しています。今まで出せなかった結果を出していきたい」と、人生初の大ケガを乗り越えたブラジル人DFは、サポーターへの感謝を口にし、『恩返し』を約束した。

(取材・文 河合拓)

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