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新潟が奇跡の残留、キャプテン本間「とりあえずみんなで飛び跳ねた」

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[12.1 J1第34節 新潟4-1札幌 東北電ス]

 一番最初に試合が終わったのはアルビレックス新潟だった。4-1での快勝。J1残留への最低条件をクリアし、あとは神戸とG大阪がともに引き分け以下に終わることを祈るだけだった。ピッチ中央での整列と挨拶を済ませても届かない朗報。ピッチ上の選手がベンチの様子をしきりに気にしていると、突如、スタンドが沸いた。神戸、G大阪の敗戦。ベンチから選手、スタッフが飛び出し、気温5度の寒空の下、喜びを爆発させた。

「どう喜んでいいのか……。とりあえずみんなで飛び跳ねました」。MF本間勲が歓喜の瞬間を振り返る。試合中は一切、他会場の情報は耳にしなかった。むしろ「後半ロスタイムの時点でスタンドの雰囲気がいまいち盛り上がってないなと感じて、もしかしたらダメな状況なのかなと思っていた」と言う。「試合が終わって、ベンチに聞いて、このままいけば大丈夫だけど、まだロスタイムだと。早く終わってくれ。それだけでした」。最終節での奇跡の逆転残留。2万8000人を超えるサポーターと喜びを分かち合った。

 今年5月、成績不振の責任を取り、就任3年目の黒崎久志前監督が辞任。柳下正明監督が就任したが、新潟にとってシーズン途中の監督交代はクラブ史上初のことだった。「僕自身、初めての経験で、この先どうなるのかと。時間は止まってくれない中でいろいろ起きて、あのころが一番苦しかった」。キャプテンとしての責任も感じ、もがいた日々。徐々にチーム状況は好転していっても、必ずしも結果が付いてこないもどかしさもあった。

「とにかく負けたことを引きずらないように。気持ちの切り替えだけはしっかりやろうと話した。練習を見ていてもそういう雰囲気の選手はいなかったし、タイミングを見て『苦しい状況だけどしっかりやろう』と呼びかけてやっていた。チームが一つになってやれたと思う」

 残り2試合で残留圏まで勝ち点5差に開く絶望的な状況にも「厳しい状況だったけど、あきらめたらそこで終わり。あきらめる選手は一人もいなかった」と強調。「うちの一番いいところである、一人ひとりがブレずに戦うということを最後まで貫けた」と胸を張った。

 04年にJ1昇格を果たした新潟にとって、来季はJ1で10年目という節目のシーズンとなる。「この結果に満足している人は一人もいない。サポーターの方も、僕らの残留して喜んでいる姿なんて見たくないと思う。来年は10年目。いい結果を残すだけです」。最後まで苦しみ抜いた2012シーズン。この経験を来季に生かすことで、最後まで支えてくれたサポーターに応えるつもりだ。

(取材・文 西山紘平)

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