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ラッキーボーイは29歳のSB、降格を3度経験した坪内が新潟を残留に導く

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[12.1 J1第34節 新潟4-1札幌 東北電ス]

 最後の最後で大仕事だ。今年8月に大宮から完全移籍でアルビレックス新潟に加入したDF坪内秀介が値千金の先制点を決めた。前半8分、CKの流れからゴール前に残っていると、MFアラン・ミネイロのクロスボールをFWブルーノ・ロペスが競り合い、こぼれ球が目の前へ。「ブルーノがつぶれて、たまたま僕のところに来て、打っちゃえという感じだった」。反転しながら右足で押し込む先制点。気持ちでねじ込んだゴールだった。

「まぐれですね。10回やって1回入るかどうか。それがたまたま1回目に来た。たまたま入っただけです」。そう謙虚に話した坪内だが、勝利が残留への最低条件というプレッシャーのかかる試合で奪った先制点の意味は大きかった。チームは前半43分に追加点。2点リードで折り返した後半立ち上がりは札幌の反撃に遭い、後半8分に1点を返されたが、同26分、35分のゴールで突き放した。

「後半の最初はやっていても嫌な雰囲気があって、怖いなと感じていた。2-2にされてもおかしくない場面もあったけど、そこが入らなくて、アラン(・ミネイロ)が決めてくれたのが大きかった」

 今年8月の加入当初は3試合連続で先発した時期もあったが、その後はベンチスタートが続き、第29節から第32節までは出番なし。「試合に出られない時期が多くて、チームに貢献できてなかったし、悔しい気持ちもあった。でも、チームが勝てば残留に一歩近づくからうれしいし、ずっとモヤモヤした感じだった」。率直に当時の心境を振り返る。

 チームは残り2試合で2連勝以外に残留の道はないという崖っ縁の状況まで追い込まれ、迎えた前節の仙台戦。右SBのレギュラーであるDF村上佑介の出場停止に伴い、9試合ぶりに先発すると、1-0の大金星に貢献し、残留に望みをつなぐ。そしてこの日、村上の出場停止が明けても右SBで先発したのは坪内だった。

 攻撃に守備に奮闘してのラスト2連勝。チームは劇的な逆転残留を果たし、間違いなくその立役者の一人となった。「僕が来なかったらもっと上の順位にいたかもしれないし、もしかしたらもっと下の順位だったかもしれない。ギリギリだけど、結果として(J1に)残れたのは僕にとっても大きな出来事だった」。神戸、札幌、大分、大宮と渡り歩き、新潟は5チーム目。毎年のように残留争いを経験し、05年の神戸、08年の札幌、09年の大分では実際にJ2降格の憂き目にも遭った。

「移籍は間違ってなかった。うれしい気持ちとホッとした気持ち、両方あるけど、ホッとした気持ちの方が大きい。最後の最後でちょっとは貢献できたのかなと思う」。そう言って笑みをこぼした坪内。「ラッキーボーイになった?」と聞かれると、「そういう風に扱ってください」とはにかみながら答えていた。

(取材・文 西山紘平)

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