beacon

「ノーアップ」でピッチに入った熊本FW北嶋「やっとスタンダードに戻った」

このエントリーをはてなブックマークに追加
[4.7 J2第7節 横浜FC0-0熊本 ニッパ球]

 出番は、いきなりやってきた。前半開始早々にロアッソ熊本のFW齊藤和樹がヒザを負傷し、ベンチにプレー続行不可能と伝える。「ノーアップですよ」と振り返るFW北嶋秀朗は、同じくベンチ入りしていた選手たちから「肉離れだけは気を付けてください!」という声に送り出されて、ピッチに立ったという。

「ノーアップ」の北嶋は、慎重に試合に入ろうと考えていた。だが、交代直後に右サイドのMF仲間隼斗から出てきたボールは、自身の重心の逆を突くボールだった。これに反応し、しっかりとボールをさばいた北嶋は、自身の状態が良いことに気付いたという。「いきなり厳しいボールが入って来たけど、うまく収めることができた。あれで試合に入ることができましたね」。

 メインスタンドから見て、右から左へ強風が吹き続ける中で、経験豊富なストライカーは巧みなポストプレーで熊本の攻撃を支えた。特に「風下の方がボールは伸びないし、DFが落下地点に入りにくい。失速して自分のところにボールが来るようになるから、FWにとってはキープしやすい。嫌いじゃない」と話すように、風下に立った前半の熊本ペースを支えた。

 しかし、得点を挙げられないまま後半を迎えると、リズムがつくれなくなった。「風上であることをチーム全体が意識し過ぎました。『シュートを打たないといけない』っていう意識が強すぎた。横にいても無理にシュートを打つ感じになってしまい、悪くはないのだけど、チャンスを逃すことが多かったと思います」と、反省した。

 それでも無失点に抑えて迎えた試合終了間際には、ビッグチャンスが来る。左サイドで粘り強くボールを奪ったMF藤本主税からの折り返しに、34歳のストライカーは反応した。マークを外してヘッドでゴールを狙ったが、ボールは無情にもゴール左へと外れた。「あれは決めたかった」と、北嶋は悔しがる。「ポストの位置を間違えていた。ポスト(と並行)の位置にいると思って打ったから、打った直後は『なんで入っていないんだろう』っていう感じでした。自分の立ち位置の感覚のミスです」と、反省した。

 結局、試合はスコアレスドローに終わり、熊本は4試合連続ドローとなった。「引き分けが続いたあとの勝ち負けが重要になる」と北嶋は説く。「自分たちで引き分けが続いていることをネガティブに持って行かずに、勝ちにつなげていきたい。引き分けが続いたあとの勝ち負けが重要になる。勝てばポジティブな引き分けになるし、負ければネガティブになる。今は変にダメだという空気にしてはいけない。自信を持って、やっていけたらと思います」と、続けた。

 北嶋自身には前向きになれる要素が、ある。「開幕戦からどこかしっくりきていないところがあった。でも、今日は自分の感覚でやることができた。やっとこのライン、自分のスタンダード(基準)に戻った」と、コンディションが上向きであることを実感できた。この日はヒーローになり損ねたが、昨季途中加入し8試合で3得点を挙げた点取り屋は、ここから本領を発揮しそうだ。

(取材・文 河合拓)

TOP