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「今日はボールいらない」展開も大久保が初の得点王へ独走

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[11.23 J1第32節 浦和1-3川崎F 埼玉]

 浦和レッズが人数をかけて攻め立てて、ボールを奪った川崎フロンターレが一気にカウンターに出る。後半14分に川崎Fが2-1としてからは、その展開がより顕著になった。川崎Fの十八番とも言えるカウンター。3点目を奪えばとどめを刺せるという流れだったが、なかなかゴールが決まらない。それにはある理由があったとMF中村憲剛

「(大久保)嘉人に得点王獲って欲しいから。嘉人いいところにいるから、普通に(パスを)出しちゃうよね。俺もそうだし、(山本)真希も。真希のは自分で撃ったほうがよかったんじゃないかって今でも思うけど(笑)」

 川崎Fが浦和ゴール前に迫ると、パスの行方としてFW大久保嘉人がファーストチョイスに。決められそうで決まらない。そんな焦れた時間が続いた。

「今日は気持ち入っちゃって、それが嘉人にプレッシャーになっちゃてた。最後決めてくれてよかったけど、今日は嘉人ダメかもしれないって思ってた(笑)」と憲剛が案じたとおり、大久保にゴールを決めさせることができない。大久保自身、「今日はボールいらないって思った(笑)」という。それでも後半アディショナルタイム1分にようやくゴールを挙げた。

 ゴールが遠かったものの、じつは川崎Fの2点目も大久保の存在が浦和のオウンゴールの呼び水となっていた。DF登里享平がドリブルでPA内に切り込み、中央に送ったグラウンダーのボールをDF槙野智章が触ってオウンゴールに。仮に槙野が触らなければ、その後ろにいた大久保が決めていたはずだった。

「(槙野が)フリーだったら足出さなくて済んだだろうし。レナトのシュートも絶対届きそうにないのにスライディングしたり。そういうのを嘉人はできるから。後ろから見ていて、(ゴールを)取らせたい」

 稀代のプレイメーカーである憲剛にそこまで言わせるエースストライカーは、今季得点数を「25」に伸ばし、この日得点のなかった得点ランキング2位のFW川又堅碁(新潟)との差を「4」に広げた。初の得点王がいよいよ確実なものになってきた。25得点は、06年のFWワシントン(当時浦和)、FWマグノ・アウベス(当時G大阪)以来7年ぶりとなる。

 かつて日本代表でチームメイトだったDF坪井慶介も「ここまできたら(得点王)取ってくれよ」とすれ違い様に大久保にエールを送る。10月に入ってからの公式戦8試合で9得点と絶好調の大久保。この勢いは、まだまだ止まりそうにない。

(取材・文 奥山典幸)

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