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[特別インタビュー]最注目ルーキーの素顔F東京FW武藤(前編)「自分のことを客観的に見ることが得意」

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 現在、国内でプレーするサッカー選手の中で、最も注目を集めているといっても、過言ではないだろう。FC東京に所属する現役大学生ルーキーは、ハビエル・アギーレ監督の下、日本代表にも選出された。「この1、2か月ですべてが変わった」と話すFW武藤嘉紀とは、どのような人物なのか。ゲキサカが、その素顔に迫った。

―――リーグ戦20試合終了時点で7ゴール(インタビュー時)。好調に見えますが、ご自身ではどのような感触ですか?
「調子が良い実感はありますが、今までのチャンスの数を考えると7得点には物足りなさを感じています」

―――チームトップの成績ですが、物足りない?
「そうですね。前半戦の方で、だいぶシュートを外してきたので。そこには物足りなさも感じています。プロになった今年は10点を取ることを目標にしてきました。大きな目標だと思っていたのですが、それにだいぶ近づけているかなと思います。あと3点ですが、それを越えていけるように頑張っていきたいと思います」

―――これだけ早い段階でレギュラーに定着できるとは思っていなかった?
「そうですね。FC東京というチームにはタレントも多いですし、先輩方も実力のある先輩方がそろっているので。入ったときに、自分も『絶対にレギュラーを取ろう』と思っていたのですが、こういうふうに早い段階で出られるようになるとは思っていなかったですね」

―――中盤戦あたりからレギュラーに定着するイメージだったのですか?
「最初の方は、試合の途中から入っていくことが多くなるのかなと思っていたのですが、開幕戦にスタメンで使っていただいて、そこで手応えをつかめたので、そこからはレギュラーに定着しなければいけないと思って、毎試合、取り組んでいました」

―――開幕戦は新監督になって、新チームのお披露目でした。そこで先発に抜擢されたことについては?
「だいぶ緊張しましたね(笑)。とにかく緊張していました。最初のプレーがカギになると思っているのですが、その試合が始まるときの入り方。それが良いプレーだったりすると乗れるというのが、自分の中であって。最初のプレーでミスなどをすると『今日はよくないのかな』と思ったりしてしまうので、ファーストプレーはすごく大事にしています」

―――浦和戦後にも、『最初のプレッシングがうまくいったから乗れた』と話していました。そのバロメーターとなる最初のプレーとは、どんなプレーでもいいのでしょうか?
「自分の中では、何でもいいんですよね。自分にボールが来たときのファーストプレーがDFに取られるのか、抜けるのかで、自分のモチベーションというわけではないのですが、意気込みが変わるというか。最初のプレーに気を付けようと思ったのは、大学の頃からです。最初に軽いプレーをすると、そのまま軽い流れができてしまうので、最初はしっかりプレスに行くなど、そういうことを気にしながらやってきました」

―――開幕直後はサイドでした。途中からFWに移りましたが、戸惑いはありませんでしたか?
「最初は3トップのサイドでしたが、そこからフォーメーションの変更があって、4-1-2-1-2になって、サイドがなくなってしまったんです。『自分はどうしよう?』と不安になったのですけれど(笑)、そこで監督がFWに抜擢してくれて。そのおかげでだいぶ点を取ることも意識し始めましたし、サイドでプレーしていたときよりも、得点に関する貪欲さも出て来たと思います」

―――ポジション変更の際、監督からはアドバイスがあったのですか?
「ゴールに向かう姿勢や裏へ抜ける姿勢は、個人指導を受けましたね。でも、最初はやっぱり戸惑いました。サイドだと、自分のライン際からは相手はこないので、180度を考えればいいのですが、FWになると360度どこからDFが来るのかもわからないので、そこに戸惑いもありましたが、数試合こなしていくうちに慣れたので、柔軟に対応できたことは良かったなと思います」

―――ユースのときはサイドバックもやっていたそうですが、本来はどこの選手なのですか?
「そうですね。どこでもできますね。DFも苦手ではないですし。やっていて気持ちが良いのはサイド…なのかな。でも、最近はFWで点も取れるようになってきて、得点する喜びも感じられるようになってきたので、FWも楽しんでやれるようになっています」

―――プロの壁は、ここまでありましたか?
「プロの壁ですか? 特別指定のときはだいぶありましたね。周りの選手の目を気にしたり、自分のプレーを上手く出せなかったり、自分の良さを上手くアピールできなかったので。その面で少し悩んだ時期もありました。でも、今年FC東京に入ったときは、とにかく『やってやろう』という気持ちしかなかったので、壁という壁はなかったですね」

―――武藤選手は石橋を叩いて渡るタイプの慎重派? それとも大胆に橋を渡るタイプ?
「どうだろう? サッカーに関しては、どちらかというとガンガン行く方ですが、普段の生活とか、物事を決めるときには石橋を叩く方かな(笑)」

―――ユース時代、トップチームからオファーがあったのに断った。そこは慎重派が顔を出した?
「そうですね。自信がなくて。結構、自分のことを客観的に見ることが得意で、絶対に自分のことを過剰評価もしませんし、そうやって自分を外から見たときに、自信がなかった。『まだ、これはプロではできないな』と思ったので、ユースのときはトップに行かずに大学を経由していこうと思いました。もちろん、プロは目標に置いていたのですが、キャンプに参加させていただいたときなどに、『ちょっと違うな』というか。『自分はまだ実力が足りていないな』と感じました」

―――そこから慶應大学ソッカー部に入りましたが、求めたものとは?
「プロで活躍できる成長を求めましたし、プロで活躍できる自信を付けようと思っていろいろなことに取り組みました。フィジカル面、筋トレは力を入れて取り組みましたね」

―――その後、特別指定として戻りましたが、そのときは自信をつかんでいたのでしょうか。
「特別指定のときも、最初は自信がありませんでしたね。1年目の特別指定のときは、練習もあまり行きたくなかったくらい。自分はドリブルが得意なのですが、ドリブルすることを許されなかったり。でも、監督に気に入ってもらえないと、試合では使ってもらえないので、そこで葛藤はだいぶありましたね。フィッカデンティ監督は、自分の良さを理解してくれた上で、プラスの声掛けであったり、もっと直したらいいところだったりを教えてくれたので、すごく助けてもらえました」

―――変化のきっかけは?
「監督が代わって、監督が自分のプレーを理解してくれて、良いアドバイスをくれるようになったことでしょうか。『持っているものは、素晴らしい』と言ってくれて、その良さをどう活かすかを、細かく教わりました。監督からは自分に対してのプラスの言葉がけをしてくれて、だいぶ自信が付いてきたかなと思います」

―――フィッカデンティ監督に一番評価された部分は?
「裏への飛び出しです。そこで、裏への駆け引きをしっかりしろと言われていますね。そこは得意な部分ですし、DFとの駆け引きに勝つことができれば、自分はまぁまぁスピードもあるので、追いつかれないと思うので。そこで点を取り切ることが大事になってくるのかなと思います」

―――今季のFC東京は守備に特徴があると思います。監督も求めることが多いと思いますが、意識していることは?
「やっぱり連動性を大切にしていますし、FWであっても守備をさぼらないことは意識しています。切る方向もケアしていますし、そこをしないと監督も試合に使ってくれないと思います。FWは点を取ればいいというサッカーではないので、守備に関しても献身的にやらないといけません」

―――かなりの量を走っていますよね?
「めちゃくちゃ走ります(笑)。多分、試合が終わったら2kg、3kgは落ちています。それを次の試合までに、戻さないければいけません。これだけ試合があるのは初めてですし、最初はだいぶきついなと思いましたが、少しずつ慣れてきました。最初の方は我武者羅にやっていったのですが、今は体の使い方であったり、DFとうまくぶつからないようにいったりと、そういうことができるようになってきたので、そこで無駄に疲れなくなったんじゃないかなと思います」

―――普段は石橋を叩いて渡る武藤選手が、試合後にサポーターの前で日本代表入りを公言したこともありました。
「あれはね、ズルいんですよ(笑)。うまく言わされてしまいましたね。だって、『今後、個人としてどういう大きな目標がありますか?』って聞かれたら、それしかないじゃないですか(笑)。言った後に、後悔することはありませんでした。別に『代表に入ります!』と断言したわけでもなかったですし、『これから日本代表を視野に入れて頑張っていきます』って言っただけなので。でも、それが新聞に載るし、テレビでも流れるし。そのときですね、言っちゃったなと思ったのは(笑)」

―――日本代表も監督が代わり、みんな横一線でのスタートになると思います。そことの距離はどのように見ていますか。
「とにかく日本代表というのは、幼いころからのあこがれでもありますから目指しています。でも、今はFC東京でコンスタントに結果を残すことが大事だと思っていますし、コンスタントに活躍しているところを代表監督やいろいろな方が見てくれて、評価してもらえたら嬉しいですね」

―――そこに自分が入っているイメージは?
「将来的には、絶対入って行きたいと思います。でも、まだFC東京でも1年目でコンスタントに活躍できているわけではないので。とにかくFC東京をリーグ戦で優勝させたいという気持ちがあるので、その優勝する過程で、自分のプレーを見てもらって評価してもらえるのが、一番いいのかなと思います」

―――全然イメージがないところを恐縮ですが、代表ではスピードを活かして途中出場というのもあるのかなと思います。途中から出場しても、試合に入れるタイプですか?
「FC東京でもずっとレギュラーに定着できていたわけではないので。初ゴールを挙げたときのように途中から入ることもあったので、決して不得意ではありません。途中から入るなら絶対に流れを変えないといけないと思っているので、そこでアピールすることも、最初は必要なのかなと思います。途中からだと相手も疲労していて裏を取りやすいこともありますし、そういう使われ方をするイメージはできています」

(取材・文 河合拓)

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