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第一印象は「友達の弟」「お兄ちゃんの友達」 扇原×南野特別インタビュー

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 MF香川真司(ドルトムント)、MF清武弘嗣(ハノーファー)、MF乾貴士(フランクフルト)、FW柿谷曜一朗(バーゼル)…。現在、欧州で活躍する彼らは皆、セレッソ大阪のユニフォームを着てプレーしていた。そんな彼らの後を追う世代も着実に成長を遂げている。先日発足したアギーレ・ジャパンにも選ばれた扇原貴宏と、日本の次世代を担うストライカー南野拓実に様々な質問をぶつけた。

―扇原選手はハビエル・アギーレ監督を迎えた新生日本代表の初陣メンバーに選出されました。
扇原(以下、扇)「初めて一緒にやる選手も多くて、刺激は大きかったですね。試合に出れなかったことは悔しかったですけど、自分にとってはプラスになりました。アギーレ監督の練習はメリハリもしっかりしていて、やっていて楽しかった。また次選ばれるように、頑張っていきたいという気持ちはより一層強くなりました」

―アギーレ監督の印象は?
「印象としては、攻守のバランスは気にするし、めちゃくちゃ細かいという訳ではないんですけど、リスク管理は注意深くする監督だなというのは感じました。攻撃に関しては自由というか、ある程度バリエーションはありますけど、選手の考え方を尊重してくれる監督だなと。選手としてはすごくやりやすい監督なのかなと感じました。個人的に特別アドバイスを受けたわけではないですが、いいプレーをしたらすごく褒めてくれますし、選手のモチベーションを上げるのは上手い監督なのかなと思いました」

―アギーレ監督は扇原選手も参加されたロンドン五輪の日本代表を高く評価していました。
「あの時は全員が守備意識が高かったですし、確かに全員に守備意識や運動量を求める監督だとは思います。そういう意味ではセレッソのサッカーもそうですし、今のサッカーでは基本となるところなのかなと思います」

―南野選手は先日の代表戦をご覧になりましたか?
南野(以下、南)「2試合とも見ましたけど、外から見ている僕からしたら、まだ分からないというのが正直な感想です。ただ僕も早くそこに行けるようにしたいですし、そのためにもまずはセレッソで頑張りたい。常に高いところに目標にしていないといけないと思っています」

―A代表への期待ももちろんですが、南野選手には10月に開催されるU-19AFC選手権での活躍にも期待が集まります。U-20W杯への出場権もかかる大事な大会です。
「難しい試合になると思っています。アジアの戦いはどの試合でも厳しくなる。ただU-20W杯はなかなか行けていない大会ですし、自分の力でU-20W杯出場権獲得に貢献出来たらいいなと思います。頑張ってきたいと思います」

―過去の大会をみても韓国に苦しめられている印象です。今回は同組での戦いとなります。ロンドン五輪の3位決定戦でも戦った扇原選手は韓国の強さをどう感じましたか?
「韓国は気持ちを前面に出して戦ってきます。その部分で日本は劣っていたのかなと思います。まずは気持ちの部分で戦う準備をしないといけない。しているつもりはありましたけど、それ以上に戦う気持ちを持たないといけない。技術的には勝てると思っていますけど、それをどんな状況でも出せるようにならないといけないと感じています。頑張ってきてほしいですね」


 昨年は4位と躍進。オフにはウルグアイ代表FWフォルランを獲得したこともあり、開幕前にはC大阪は一躍優勝候補の筆頭に躍り出ていた。しかし蓋を開けてみれば、2度の監督交代を含め、不本意なシーズンを送っている。

―今季のC大阪の戦いぶりについて振り返ってもらってもいいですか?
「今シーズンは監督も変わってスタートしたのですが、新しいサッカーに取り組む中で、なかなか結果が付いてこなかった。正直、ここまで苦しいシーズンになるとは思っていなかった。優勝を目標にしていましたし、自分としては全く思い描いていたシーズンになっていません。序盤の過密日程もそんなに影響もなかったです。逆にいっぱい試合できることはプラスだったと思っています。ただ結果が出なかったことで、自信を少しずつ失っていったのかなと思っています」

―ただ9月に入ってようやくチームとして調子が上向いてきたのかなと感じます。
「全員が守備の意識が高くなったと思います。守備の連動性が上がったと感じています。それが上がっただけでも大きい。(13日の柏戦)は0で抑えて2点取ってという理想的な試合が出来ましたし、そういう部分はしっかり継続していければいいなと思っています。そう簡単に状況はよくなるものではないと思っていますが、そういう中でも全員が一丸となって戦えたゲームはいいゲームが出来ています。そういう試合を増やしていきたいなと思っています」

―リーグ戦では難しい試合が続きますが、天皇杯のタイトルを獲得できるチャンスも残っています。
「現状、リーグ戦でタイトル争いをすることができていません。今年はタイトルを獲るという目標を持って入ったので、唯一残っている天皇杯は目指したい。全員で天皇杯を獲りたいという目標を立てているので、なんとしても獲ってシーズンを終えたいですね」

―南野選手は公式戦4試合連続ゴールを決めるなど、コンディションも良さそうです。
「個人的にはコンディションも上がってきています。チームとしてもいろいろな状況がある中で、みんな一つになってやれていると思います。間違いなくいい方向には向かっていると思います」

―チーム全体で戦えてきているということですか?
「チーム全体として守備の意識は高まっています。90分通して自分達の理想的な戦い方が徐々に出来始めていると感じます。切り替えのところだったり、自分たちのやりたいことが出来てきていると感じます」

―柿谷選手が抜けて、南野選手には伝統の背番号8を引き継ぐような活躍が期待されています。
「でも8番が付けたいという気持ちは全くないんですよね。逆に自分の背番号(13番)を8番くらい重い背番号にしたいと思っています。この番号で結果を残したいという気持ちが強いです。結果というのはもちろんゴールを取ることですが、苦しい時にチームを助けられるようなゴールを取りたい。番号で注目されるより、そういう選手になりたいと思っています」


 2人はともにC大阪の下部組織出身。年齢は3つ離れているが、2人は幼少期からお互いの存在を知り合う関係性にあった。

―お互いの第一印象を教えてください。
「最初の印象は友達の弟でした。プレーに関しては、ジュニアユースに入るまで見たことなかった。初めて会った時はお兄ちゃんと走り方が似てるなというのが第一印象でした」

「僕も最初はお兄ちゃんの友達という印象しかなかったですね。試合とかは見に行ってましたけど、小さいころなので、試合もちゃんと見ていなかった。家に遊びに来てくれてて、その時にちょっと話しをしたかなという程度ですね。ただ存在はずっと知っていた。世代別代表に入っていたし、ずっと凄い人という印象でした」

―2人がC大阪に入った経緯は?
「単純にセレッソが好きだった。住んでるところから一番近かったというのもあるんですが、Jリーグで1番好きだったのがセレッソだった。セレッソに入って良かったことは頻繁に強いチームと試合ができたこと。年上の選手ら上手い選手と接することで毎日刺激があったことですね」

「僕はお兄ちゃんが行っていたというのもあって、プロになるにはここが一番近道だと思った。だからセレッソでやることしか考えてなかったですね。環境も整っていたし、周りも上手い選手ばかりだったので、自分が成長するにはいい環境だったと思っています」

―小さいころよくした練習は何ですか?
「とにかくボールを蹴っていました。的があったので、そこを目がけてよく蹴っていたなという印象はあります。小さいころからキックの上手い選手が好きだった。でも小学校の時からFKを蹴ってましたが、あまり決めた記憶はないんです。今でもあまり決まらないですけど(笑)。それと第一にサッカーのことを考えていました。サッカーが上手くなりたいという気持ちはずっと持ち続けていました」

「僕はずっとドリブルをしていた記憶しかないです。コーンを置いて、ドリブルして、壁にシュートといった練習だとか、お兄ちゃんと1対1の練習をしていました。年上の人と勝負するとどうしても体格で勝てない。でもその時に負けん気の強さだとかは身についたんじゃないかなと思います。あとは規則正しい生活というのを心がけていました。ご飯もちゃんと食べて、睡眠もちゃんと取って。当たり前のことですけど、すごく大事。差が付くところでもあると思います」


 契約するアディダス社のスパイクが彼らの成長をサポートしている。2人はともにアディダス社の技術の推移を結集した「必殺5ゾーン」が搭載されている『プレデター リーサルゾーン』を着用している。

「僕の場合、ロングキックをよく蹴るので、インサイドのゾーンはよく使います。しっかりボールを捕えてくれる感覚はあります。天候にも左右されませんし、自分のプレースタイルにすごく合っていると思います」

「雨の時に革のスパイクだと滑るのですが、『プレデター リーサルゾーン』だとしっかりボールを捕えてくれる。いつも通りのプレーが出来るので、自分に合っていると思います。あとは足にすごく馴染む。90分通して何回ターンをしても伸びることもないので、そういう面でも自分には合っていると思います。かっこいいですしね」

―お2人はスパイクでゲンを担いだりしますか?
「自然になったのですが、右足から必ず履くようにしています。普段はあまりゲンを担ぐことはないんですけどね」

「僕は全くないですね。ゴール決めても履き続けるということもないです。新しいスパイクが出たらすぐ変えますし。スパイクに限らず、普段からゲンはかつがないタイプなんです」

―C大阪には日本を代表する選手が羽ばたいたという土壌があります。お2人もそういった選手の後に続きたい思いは強いかと思います。
「僕もいつかは海外でプレーしたいという気持ちはあります。そういう中で、曜一朗くんという身近な存在が活躍してヨーロッパに行ったことは、刺激になっています」

「曜一朗くんもそうですが、この間、代表に行って海外組の選手と初めて練習したんですけど、海外で揉まれている人たちを見ると、やっぱり精神的に強い部分があるなと感じました。厳しい環境で自分もやりたいという思いは常に持っていますし、そのためにはセレッソでしっかり結果を残さないといけないと思っています」

(取材・文 児玉幸洋)

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