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“異色の守護神”松山工GK伊藤元太が神戸へ。3度の練習参加、イニエスタらとのプレーで刺激受けてプロ入り決断!

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松山工高のGK伊藤元太がヴィッセル神戸入り

 ヴィッセル神戸は17日、松山工高のGK伊藤元太(3年)が来季から加入することが内定したと発表した。松山工からJリーガーが生まれるのは神戸から仙台への移籍が決まっているMF松下佳貴、現・FC今治のDF中野圭に続き3人目で、高卒で直接プロに進むのは初めてだ。伊藤は中学2年生の春にボランチから転向した異色の守護神で、高校に入学してすぐにレギュラーに定着。1年目の夏に挑んだインターハイでPKを止めるなどしたプレーが代表スタッフの目に留まり、U-16日本代表候補に選ばれた注目選手だ。

 189cmの高身長と足元の技術が特長のGKは昨年11月に神戸の練習に参加。GKとしての経験値は足りないもののアレックスGKコーチから、高身長選手らしからぬ俊敏性と足元のシュートに対する反応の速さが評価されたという。今年1月には約2週間に渡って沖縄キャンプに帯同し、「キム・スンギュさんは一本のシュートに対する集中力が違った。普段は優しいけど、サッカーになった時の集中力が違い、これがゴールキーパーで、これが代表選手なのかと勉強になった」。

 高校生活のラストイヤーは、このまま順調に進むかと思われたが、アクシデントは3月半ばに訪れた。ハイボールに対応した際に着地に失敗。左足を骨折したため、手術を余儀なくされた。インターハイ予選での復帰は間に合わなかったが、「全国に行けなかったので僕がいれば…という悔しさはありましたが、怪我をプラスに捉えようと思いました。線が細かったので、筋肉をつけるためにウェイトを頑張ろうと思った」と振り返る。

 7月半ばに実戦復帰してからは体重が5kg増えたことにより、ひ弱な印象が消え去った。上半身が鍛えられたことで接触を恐れなくなり、DF裏に出たボールに対しても、恐れず前に出られるようになったという。パントキックの距離が以前よりも伸びたことも肉体改造で得たメリットだ。

 夏休みには3度目の練習参加を実施。「スピードが速いプロの世界でも、キャッチをしようと心がけたら苦手だったセービングも得意になった」と話すように、技術面でも確かな成長を実感した。「ボールを預ければ何とかなるので、本当に凄いと思った」元スペイン代表のMFイニエスタや元ドイツ代表のFWポドルスキとプレーするうちに進学希望だった考えが変わり、「ワールドクラスの選手ともっとプレーしたいと思ったし、何回も練習にいくうちに神戸に入りたいという気持ちが生まれた」という。

 2年連続出場がかかった選手権は予選のベスト8で敗退。「選手権はインターハイとは違う空気があって、スタジアムに入った瞬間に圧倒された。(前回の全国大会は)初戦で負けたけど、サッカーしていて凄く楽しかったので、後輩のためにもこれが選手権だぞと教えてあげたい。自分自身も選手権での勝利を経験して、更に注目されたい」と語っていたが、その目標を果たすことはできなかった。それでも、骨折、最終学年で選手権に届かなかった悔しさも必ずプロでの力になるはずだ。

(取材・文 森田将義)

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