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富士フイルム杯の“疑惑判定”に家本元主審が見解「テクニカル上はレッドカード間違いない」

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当該場面で倒れずにプレーを続けたFW明本考浩

 DAZNで配信されている判定検証番組「Jリーグジャッジリプレイ」は15日、最新回の公開をスタートし、今月12日に日産スタジアムで行われた富士フイルムスーパーカップ・川崎フロンターレ浦和レッズ戦で物議を醸した判定を取り上げた。

 問題の場面は後半30分だった。浦和のFW明本考浩がドリブルでゴール前に侵入し、後方から追っていた川崎FのMF大島僚太が明本の腕を掴んで減速させたが、明本は倒れずにプレーを続行。しかし、直前の減速が大きく響き、カバーに入った川崎F守備陣に止められた。ところが、試合はノーファウルのまま継続。その場に倒れ込んだ明本は首をかしげ、浦和の選手たちは一斉に笠原寛貴主審に詰め寄って抗議した。

 明本はスピードに乗った状態でゴールに向かっており、大島の行為がファウルであればDOGSO(決定的な得点機会の阻止)であった可能性が高い。またDOGSOの反則はレッドカード相当のため、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入基準も満たす。ところが、この場面ではVARレビューが行われず、ファウルかどうかの再確認もなし。試合後、多くのサポーターから「倒れなかったからノーファウルなのか」「倒れたほうが得なのか」などとSNSを通じて疑問の声が上がっていた。

 番組では当初、DAZN放映権対象外の富士フィルムスーパーカップの事例について扱う予定はなかったようだが、サポーターからの高い関心を受けてピックアップ。Jリーグの原博実副理事長、FIFA・AFC・JFA審判インストラクターの深野悦子氏、昨季までJリーグで主審を務めていた家本政明氏らが議論をかわした。

 冒頭で深野氏は「結果的にはDOGSOにしたほうがよかった。ファウルが起きて、その後にプレーが流れた。とはいえプレーを見る時間もあり、そこは戻せるので、戻してあそこで映像を静止画にすると、DOGSOの4要件に当てはまるのでDOGSOだと思う」と説明。レッドカードが適切な判定だったいう見方を示した。

 一方、これに家本氏が審判員の立場から「まあ、FIFAインストラクターはそうね。テクニカル的に……」と前置きしながら一部反論。「大島選手が完全にシャツを掴んだり、腕を引きずり倒したならわかりやすいが、手をいい感じで絡めに行くんですよね。それに明本選手が嫌がって、絡まるようになってバランスが少し引っ張られた。レフェリーの判断からするとそこで『おっ』と思う」と状況を説明した上で「倒れれば100%レッドだなとは現場の人間なら誰しも思う。ただ少し勢いを失いながらも行ったところはレフェリーからしたらホッとしている。でも体勢が崩れたところに車屋選手がカバーでカットして、状況が遮断された」と審判員の心情を推察しながら分析。「常にどうなの、どうなの、どうなのとなって、100%レッドだと意思決定しづらい」とノーファウル判定に至った背景を慮った。

 また、VARが介入しなかったことについては「おそらく情報は取っているけど、VARが入り切れなかったのは悩みながらも、迷いながらもフォローしたという状況」と推論。「現場の人間からするとあれがいかにFKにしづらいかということを思った」と審判員目線で話した。

 これに対して原副理事長は「大島僚太が上手いところで手を離している。もう少し行き過ぎたらアウトかもしれないけど、なんかうまくやっていたなという印象。退場になんなくて次の開幕戦に出られるなら良かったね」とプレーヤー目線で総括。家本氏も「テクニカル上はレッドカード間違いない」としつつも、「ただ、大島選手のしたたかさというか、ギリギリ加減というところは上手いなと思った。こういう表現が適切かはわからないけど」と振り返った。

 その後、番組の配信開始を受けて、審判関係者が「DOGSOにしたほうがよかった」「テクニカル上はレッドカード間違いない」としながらも大島の行為が肯定的に捉えられたことについて、出演者らに批判が殺到。家本氏は自身のTwitter(@referee_iemoto)で「あれがDOGSOかどうかの見解を示すのはJFA審判委員会であって、我々Jリーグではありません。そこのところよろしくお願いしますね」と釈明した。

 また家本氏は続けて「僕の個人的な見解はDOGSOだと言っています。判定のまるばつだけで終わるよりも、なぜ審判チームがDOGSOの判定を下せなかったのか?という理由を自分の経験を踏まえて話した方が皆さんの理解が深まると思ったのでああいった表現をしましたが、余計誤解を生ませてしまったようですね。すいませんでした」と述べつつ、「それともうひとつ。なぜVARが助言しなかったのか、それはわかりません。見せた方が良かったと、あの試合を見ながら僕は思ってました。助言 “できなかった” 理由として考えられるのは、迷いやためらいが勝ってしまって、素直さが負けてしまったという心理面が起因していると個人的には考えます」と見解を伝えている。


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