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「自分の良さは出せた」急造起用から横浜FMの新たなオプションへ…新加入・上島拓巳は右SBで新天地デビュー

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DF上島拓巳

[2.11 FUJIFILM SUPER CUP 2023 横浜FM 2-1 甲府 国立]

 新加入の急造サイドバックが攻守の起点となった。横浜F・マリノスDF上島拓巳はこの試合で「ほとんど初めて」という右SBでプレー。「自分の良さは出せた」。前半30分には鋭いパスを通し、FWエウベルの先制ゴールにつなげた。

 柏レイソルユース出身の上島は中央大を経て、19年から柏に帰還。アビスパ福岡へのレンタルも含めて4シーズンを過ごし、今季からJ1王者の仲間入りを果たした。キャンプでは本職のセンターバックでプレー。「始動してからここまでCBで、自分の中ではいいパフォーマンスを出せている」と手応えを掴んでいた。しかし、スーパー杯の2日前にケヴィン・マスカット監督から伝えられたのは、小池龍太、小池裕太、松原健といった負傷者が出た右SBでの起用だった。

 フル出場で戦い抜き、今シーズン初タイトル奪取に大きく貢献した。指揮官は試合後、SB起用の意図を語る。「練習でいい姿勢を見せていた。いつもと違うポジションで簡単でなかったのは事実だが、ピッチで責任を持ち、チームを助けてくれた。柔軟性を持って対応してくれて、彼のプレーを誇りに思う」。高い要求をこなした上島を褒め称えた。

 SBは大学時代に1、2試合やった程度だった。「ほとんど初めてですし、マリノスのSBは特殊なポジショニングだったり、スタイルがある。難しさもありましたけど、自分にできることをやろうと」。今回のSB起用も、キャンプでアピールしたひとつの成果だ。「もちろんCBでポジションを取るというところは変わらない。だけど、こういうアクシデントが起きたときに対応できるような選手になりたい」と前を向き、デビュー戦に臨んだ。

 新天地でのデビュー戦で急造のポジションをこなすことは難しい。新シーズンの幕開けとなるスーパー杯なら尚更だ。「前半のところは攻撃でも守備でもリズムを作れずに、難しい部分があった」。パスミスやトラップミスもあり、持ち味の安定感を欠くプレーが続く。それでも味方のフォローに助けられた。「自分がミスをしても常にポジティブな声をかけてもらいました。たくさんミスはありましたけど、彼らのおかげで最小限に抑えられた」。徐々に順応していくと、前半30分には上島のプレーから先制点が生まれた。

「試合を通して(アンデルソン・)ロペスだったり、西村(拓真)選手のところは常に意識していました」。水沼が落としたボールを、右サイドタッチライン際にいた上島がダイレクトパス。相手選手の隙を突き、中盤の広いスペースで待ち構えた西村に通した。上島から始まったパスワークは西村、水沼宏太、A・ロペスを経由し、最後はPA左へ。エウベルが冷静にシュートを決め切り、今シーズンのファーストゴールとなった。

 指揮官からは「3CBの右のイメージでやってほしい」と言われていたという。それは右SB不在時の新たなオプションになる可能性もある。「こういうアクシデントは起こりえるもの。これからそういうオプションのひとつとして、監督に僕がそういうものを与えられれば、また自分がチームに貢献できる要素が増えるかなと思っています」。想像とは違うデビューだったかもしれない。だがしっかりと実力を見せつけ、新戦力としての存在をアピールしてみせた。

(取材・文 石川祐介)
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