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交代枠0でGK負傷の緊急事態…湘南DF大岩一貴が“積極キャッチ”で無失点「1本だけど良かった」

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代役GKを務めた湘南ベルマーレDF大岩一貴

[10.28 J1第31節 湘南 1-1 神戸 レモンS]

 首位のヴィッセル神戸を相手に1-1で迎えた後半アディショナルタイム、湘南ベルマーレは想定外の窮地に追い込まれた。この日再三のビッグセーブを見せていたGK富居大樹がゴール前の競り合いで腰を負傷し、プレーを続けることができなくなったが、残る交代枠はゼロ。フィールドプレーヤーをGK役に指名し、終盤を10人で戦うことを強いられた。

 そこでGKを担ったのが、キャプテンのDF大岩一貴だった。

「トミが無理となった時点で周りのメンバーを見て、僕か(石原)広教かなと思った。もしかしたらやるかもなと思っていた」(大岩)

 過去にGKでプレーしたのは「幼稚園(以来)とかじゃないですか」と未経験。それでもシーズン終盤の重要な1試合、ベンチに控えるGK馬渡洋樹から借り受けたピンクのGK用ユニフォームに身を包むと、「どうこう考えるより、やるしかない」との思いでゴールマウスに立った。

 相手にはFW大迫勇也、FW武藤嘉紀といった日本を代表するストライカーが居並び、ゴール前には緊迫した空気感が漂っていた。相手のボール保持時には大岩を含む9人がペナルティエリア内に撤退。ホームのレモンガススタジアム平塚に集まったホームサポーターは固唾をのみ、“代役GK”の姿を見守っていた。

 そうした中、大岩は一度の守備機会で完璧な対応を披露した。後半アディショナルタイム8分、DF本多勇喜からのクロスボールがゴール前に入り、大迫が走り込んできたが、果敢に前に出てボールをキャッチ。「落としたら最悪なので大事に」とがっちり掴み、サポーターからの大声援に包まれた。

「フィールドをやっていても(前に)出てくれるキーパーは助かるし、出られるところは出たいなと思っていた。1本だけど良かった」。そんな大岩の働きも実り、1-1のままタイムアップ。試合後には「同点だから勝たなきゃと思わないといけないけど、ホッとした」と正直な気持ちを吐露した。

 結果的には被シュート0。大岩は「それ(シュート)だけはやめてくれと思っていた」と苦笑い気味に振り返り、「みんな打たせないようにしてくれて良かった」と守備陣への感謝を口にした。また試合中に数々のファインセーブを見せた守護神にも「本当にトミに助けられたし、GKを今日やって改めて富居すげえなと思いました」と賞賛の言葉を送った。

 大岩はこの日、自身のパフォーマンスについて「もう少し個のところでボールを取り切りたかった」と振り返り、「チームとして悪くはなかったけど、勝ちたかった」と満足した様子を見せなかった。

 危機的な状況を乗り越えて掴んだ勝ち点1の価値は大きいが、11月25日の次々節には最下位・横浜FCとの直接対決。緊迫した状況は変わらない。大岩は「次につなげたい。あと3つ勝てば何の問題もない。まずは次の試合(11月11日の名古屋戦)に勝ちたい」と気を引き締め、次の一線を見据えていた。

(取材・文 竹内達也)
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Text by 竹内達也

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