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東洋大3年生がPO決勝でもジョーカー起用! 東京VでJ1昇格のMF新井悠太「チャレンジャーとして立ち向かう」

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MF新井悠太

[12.2 J1昇格PO決勝 東京V 1-1 清水 国立]

 東京ヴェルディは1点ビハインドとなった直後の後半21分、東洋大3年生で2025年からの加入が決まっている左ウインガーのU-22日本代表MF新井悠太をピッチに送り込み、反撃の一手を打った。直接得点に絡むことはできなかったが、そうした交代選手の奮闘もあり、土壇場に決まったPKの同点ゴールで16年ぶりのJ1復帰を掴み取った。

 東京VはJ1昇格をかけたプレーオフ決勝の後半18分、MF森田晃樹のハンドでPKを献上すると、キックが成立する前から新井は準備を始めた。現役大学生にしてJ2リーグ戦8試合2得点を記録し、J1昇格プレーオフ準決勝・千葉戦でもベンチ入りを経験した20歳。最初の交代カードという大役を託された。

 新井自身、その重みはしっかりと認識していた。「今までとは違った状況で、トーナメントの決勝戦という場面で、自分がヴェルディで帯同して力になれたかというと……。でも選手もいっぱいいる中で、そういう人の思いも感じながらの緊張感があった」。ただ、その中でも積極的にプレーする姿勢は忘れなかった。

 ファーストプレーはやや空回り気味にタッチが伸び、相手のスローインに。それでもこのミスを前向きに昇華した。「まず1本目を受けた時はとにかく前にドリブルで運んでいこうという気持ちがあった。タッチがうまくいかなかったのはネガティブなミスではない。ミスがあったけど、こんなピッチかなと感じながらやっていた」。国立の芝生はところどころが剥がれていたが、感触を探りながら時間を過ごしていった。

 新井は7月5日の第24節・長崎戦でJ2デビューを果たし、その一戦でJ2初ゴールを記録。続く同9日には、国立で行われた第25節・町田戦に途中出場し、キレキレのドリブル突破からFW染野唯月の同点ゴールをアシストしていた。この日のスタンドには「国立男」の横断幕を掲げられていたが、すでにJ2の舞台でも警戒される存在となっていた。

 とくにこの日の相手は清水エスパルス。新井のJ2デビュー後、元日本代表のGK権田修一やMF乾貴士が名指しで称賛するコメントがメディアを通じて広がっており、新井にとっても一つの転機となった特別な相手だった。

「本当に偉大な方なので、そういった方々にああいった言葉をいただけたのは素直に嬉しかった。でもその反面、もっと言われたからにはもっと実力をつけていかないといけないと思う。名前だけ先に行って、今後活躍できないのが怖いこと。浮かれた気持ちをなくしてやっていきたいと思っていた」(新井)

 この一戦でも新井に対し、ウイングバックのDF北爪健吾と右CBの原輝綺が次々に寄せてくる警戒体制が継続。試合途中からは原に代わってDF岸本武流が入ってきたが、そこでもマークが緩むことはなかった。

 ただ、新井にとってもこうした対応は想定内だった。「町田戦が終わって、次に帯同した時は自分の中で思ったようなプレーはなかなかできず、やりづらさを感じていた。もっとSBの選手やFWの選手とうまく連係を取って、逆に仲間を活かしてハードなプレッシャーを利用できればと思っていた」。球離れよく味方と連係することで、相手を押し込む場面が増えていった。

 結果的にはゴールに絡めず、満足のいくパフォーマンスではなかった。「相手の15番(岸本)と5番の選手(北爪)がうまくポジションを取ってきて、思うような形でボールを受けられなかったのが今日のプレーの印象。背後に抜け出そうというシーンも、足もとで仕掛けようとするシーンも、対峙する相手をよく見ながらプレーできればもっと良かったと思う」。それでも大事なのはチームの結果。新井の左サイドで押し込むことができていたからこそ、右サイドでカウンターが効いたとも考えられる。

 経験の少ない若手選手にとって大事なのは、こうしたチャンスを数多く経験し、一つ一つを大事に戦っていくことだ。試合後、新井は「本当にこのような舞台に立たせてくださった人たちに感謝しないといけない」と述べつつ、「怖気づかずに自分らしいプレーを出すことが、自分がヴェルディに対してすべき最低条件だと思っていた。こんな大舞台でもっともっと自分らしいプレーを出せれば」と決意を語った。

 また来季もチーム帯同の機会があれば、J1リーグの舞台でアピールできる絶好のチャンスとなる。「マッチアップする相手にも知らない選手は一人もいないし、チャンスだと思って取り組めたらいい。こうして上がってきた身としてはチャレンジャーとして立ち向かうことができるし、自分たちはやるだけなので、そういった意識でやっていきたい」。ゼロからブレイクを果たした今季と同様、恐れるものはない。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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