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痛恨ハンドに絶望も…仲間に救われた東京Vキャプテン森田晃樹は感謝の涙「一年間、いろんな人に助けられた」

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東京VキャプテンMF森田晃樹

[12.2 J1昇格PO決勝 東京V 1-1 清水 国立]

 キャプテンMF森田晃樹は劇的終了に涙が止まらなかった。東京ヴェルディは引き分ければJ1昇格という条件も、90分が過ぎた時点で0-1。しかし後半アディショナルタイムにFW染野唯月が自身で手にしたPKを決め切り、1-1でドロー。森田は「一年間、いろんな人に助けられた」と振り返った。

 23歳のキャプテン森田は今シーズンからキャプテンに就任。チームをけん引し続けた。シーズンが始まる前には“J1に上げた男”になると明言していたが、その言葉のとおりに東京Vは安定した戦いぶりを見せる。終盤にさらに加速した勢いでJ2リーグ3位に食い込み、自動昇格こそ逃したが、J1昇格プレーオフで優位に戦うことになった。

 森田はJ1昇格プレーオフ準決勝で1ゴール1アシストの活躍を見せた。残り1勝と迫った清水エスパルス戦。若きキャプテンはMF乾貴士とのマッチアップにも冷静に立ち向かった。前半をスコアレスで折り返し、決着がつく後半45分間に臨んだがまさかの展開が訪れる。後半15分、森田が自陣内で痛恨のハンド。「ハンドではないかなと思ったが、VARがいる中でそういうジャッジをされてしまった。それがすべて。しょうがない」。しかし清水FWチアゴ・サンタナにゴールを決められると冷静なプレーは一変。その後は明らかに精彩を欠いた。

「ブレブレだった」と試合後に胸中を語る。球際で負けている様子を見かねて、染野からは喝を入れられた。「初めて呼び捨てで。『晃樹おまえ負けんなよ』って言われて、そこでハッとしました」。顔を上げた森田は、頼もしい味方とともに最後まで戦う。自らPKを奪取して得点を挙げた染野には「本当にすごく大きいプレッシャーがある中で決め切ってくれた。染野選手を称賛したい」と感謝を口にした。

 城福浩監督が掲げた“リカバリーパワー”は、ボールを失った後の守備強度を意味するフレーズだが、森田は自身の解釈を語る。「ミスしても周りの選手が取り返すとか、リカバリーをするという言葉。その裏にはどんどんチャレンジしていけという意味がある。それがきょうの試合でも大きな力を持った」。自身を逆境から救ってくれた意味合いで「リカバリーしてもらった側。本当にすばらしいリカバリーパワーだった」と笑みをこぼした。

 クラブ一筋で戦い、今シーズンはキャプテンとして引っ張ってきた。周囲にいる仲間たちの有難みを感じる一年になった。シーズンを終えて、改めてその重みを口にする。「本当にいろんな人に助けられてやってきた一年だった。僕だけの力じゃないですけど、僕がキャプテンという立場になって、その年でJ1昇格を勝ち取れた。うれしい」。終了後に仲間たちが喜ぶ姿を見て、涙があふれる。

「なんかもう自然と泣いていました。いまのチームはアカデミー上がりの選手もいるし、梶川(諒太)選手や小池(純輝)選手といった本当にチームを長く伝えてきた選手もいる。そういう人の嬉しそうな顔や泣いている顔を見て……泣いちゃいました」

 来シーズンからは未知の世界となるJ1へ。「ヴェルディはJ1にいるべきチームとずっと教えられてきたので、ようやく戻すことができて本当にうれしい」。喜びを噛み締めつつ、すでに先を見据える。「本当に、一年で落ちたら意味はない」と新たな舞台での躍進を誓った。

(取材・文 石川祐介)
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石川祐介
Text by 石川祐介

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