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東京V谷口栄斗はともに歩んだ森田の涙に感慨「晃樹がキャプテンで、J1昇格を成し遂げられて本当によかった」

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DF谷口栄斗

[12.2 J1昇格PO決勝 東京V 1-1 清水 国立]

 リーグ最少失点の要として、今シーズン最後の試合でも最終ラインに立ちはだかった。PKによる失点で苦しい戦いを強いられたが、終盤には味方のゴールに救われる。その瞬間崩れ落ちた東京ヴェルディDF谷口栄斗も「レギュレーション上、引き分けることができれば優位に試合を進められるのでこみ上げてきた」と振り返った。

 リーグ2位の得点力を持つ清水に立ち向かった。FWチアゴ・サンタナやMF乾貴士といった清水の攻撃陣に冷静に対応。サイドからクロスを上げられる場面が目立ったが、「クロスの対応は一年間積み上げてきたものがあった。そこは自信を持ってしっかり対応できた」。流れのなかからの失点を許すことはなかった。

 後半18分、キャプテンMF森田晃樹のハンドで与えたPKをT・サンタナに決められた。それでも、同点に追いつけばJ1昇格を手にすることができる。残り時間を鑑みて、谷口は冷静に試合を運ぶ。「しっかりリスク管理もしていたし、相手の選手があまり寄ってこなかった」。後方からのパスで攻撃の起点となりつつ、2失点目は与えない。そして、染野の同点ゴールの瞬間を迎えた。

 1歳年下でアカデミーから育った森田がキャプテンに就任し、谷口は副キャプテンとしてチームを支えた。若きキャプテンがハンドでPKを献上した瞬間、谷口も絶望を味わう。「彼のハンドでPKを与えてしまって、サッカーの神様は本当に残酷なことをするんだなと」。劇的なJ1昇格には「晃樹がキャプテンで、J1昇格を成し遂げられて本当によかった」と目を細めた。「おれが言うのもなんですけど……本当にたくましくなった」と戦友を称えていた。

 16年ぶりという時間の分だけ歴史を支えてきた存在がいる。谷口は「僕たちはタイミング良く、この昇格に立ち会えただけ」と強調する。

「この15年、いろんな歴史があった。僕がジュニアにいたときは経営危機でクラブが存続できるかできないかの厳しい立ち位置だった。それ以外でもJ2で15年間戦ってきた選手や監督、スタッフ、いろんな人の苦労があったからこそ、きょう僕たちはこのタイミングで昇格に立ち会えた。だから、そういう人たちへの敬意を示さなければいけない。そういう人たちの苦労があったからこそ、こういう大きな喜びが味わえる」

 J1昇格が終着点とは思っていない。「(昇格)達成はできたけど、本当の勝負、スタートはこれから。クラブとしてもう一度気を引き締めなければいけない」。たった一年でJ2リーグに戻るわけにはいかない。谷口はさらなる高みを見つめていた。

(取材・文 石川祐介)
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石川祐介
Text by 石川祐介

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