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町田期待の192cm新人SB望月ヘンリー海輝、初の先発抜擢で“快速”決勝アシスト「ある程度は自信になった」“オラオラ系”への変身願望も?

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FC町田ゼルビアDF望月ヘンリー海輝(写真右)

[4.21 J1第9節 FC東京 1-2 町田 味スタ]

 圧巻のスケール感を持つJ1初先発の大卒ルーキーSBが、FC町田ゼルビアを首位に返り咲かせる決勝点を導いた。

 DF望月ヘンリー海輝は1-1に追いつかれた直後の25分、ビルドアップの間に右サイドの高い位置を取ると、DFドレシェヴィッチのロングフィードを合図に猛スピードで駆け上がった。相手左サイドハーフのMF俵積田晃太だけでなく、左SBのDFバングーナガンデ佳史扶をも振り切って深い位置へ。最後はゴールラインギリギリで豪快なワンタッチクロスを上げ、FWオ・セフンのヘディングシュートを導いた。

 チームが同点に追いつかれた直後、悪い流れを一掃する勝ち越しアシスト。「自分のストロングのスピードを活かせる形だったし、常日頃から狙っている形だった。自分の得意な形で結果を残せて良かった」(望月)。黒田剛監督の「前に道が空いた時には恐ろしいくらいのスピードを出す。かけっこ勝負でしっかりと相手を翻弄するだけのスピードがある」という信頼起用に応える活躍だった。

 さらに望月はこの日、SBでは異例といえる192cmという上背を活かし、ロングボールのターゲットとしても存在感を発揮。特に高い位置に顔を出し、サイドチェンジを頭で折り返すというプレーで大きな脅威となっていた。「192cmでSBというのはJ1で見ても大きいサイズだと思うし、相手から見ても高さはアドバンテージがあると思うので狙っていた」。高いポテンシャルが一つの攻撃戦術となりうる可能性を示した。

 加えて町田の代名詞であるロングスローやセットプレーでも迫力十分。ブラジル人DFエンリケ・トレヴィザンとのマッチアップには「すごく強い人が来ているなと思いながらやっていました」と苦笑いも浮かんだが、「勝つか負けるかに関係なく自分のやることは変わらなかった」と果敢に挑み続け、制空権を手繰り寄せていた。

 そんな望月は今季、国士舘大から加入したばかりの大卒ルーキー。しかし、開幕節・G大阪戦(△1-1)の後半37分から投入され、さっそくJ1リーグデビューを果たすなど、指揮官からの評価は高かった。

 ところが、その試合は味方の退場によって数的不利だったこともあり、一方的な守勢を強いられると、投入からわずか2分後にFW宇佐美貴史の直接FKが望月の頭上を越す形で失点。相手のドリブル対応にも苦慮する場面もあり、「あの舞台で自分の力を出し切る力がなかった。シンプルに課題を痛感した試合だった」と悔しさを味わう形となった。

 またG大阪戦後には黒田監督から「もっとああいう場面で入った時にチームに対する鼓舞とか、やってやるぞというメンタルを出してチームに貢献できるようにしてほしい」という精神面の指摘をされたという望月。「正直、自分のことでいっぱいいっぱいになった部分があった。次からもっと余裕を持って、チームに還元できるものを増やしていきたい」と意識改革の必要性も実感していた。

 そうした課題は日々のトレーニングでも意識を深め、着実に改善を試みているようだ。特に2018年ロシアW杯メンバーで経験豊富なDF昌子源からピッチ内外でのアドバイスをもらい、刺激を受けている様子。この日は「昌子選手もそうだし、上のレベルで活躍している方は、他の人とは違ういい意味での“オラオラ感”がある。自分はあまりそういうものを持っていないので見習っていきたい」と冗談まじりに変身願望をのぞかせた。

 また黒田監督はこの日の会見で「初戦のガンバ戦に途中から出た時もかなり緊張して入っていて、優しい性格からなかなか闘志をむき出しにし、全面的に出せるタイプではない」と望月のパーソナリティーを評しながらも、「経験を通じながら彼のストロングが徐々にフィットしてくれると思う」と太鼓判を押した。精神的に発達途上の高校生を数多く指導してきた名将だからこそ、プロの世界に身を投じる決断をした22歳のメンタリティーには一定の信頼を置いているようだ。

 だからこそ黒田監督はあくまでもピッチ上の役割を求めて起用していたという。「今日は相手の両ワイドが本当に速い選手だったので、スピードの対応、空中戦のところで絶対に負けないこと。またヘンリーを中のターゲットにすることでロングスローもより活きるということで試行錯誤した中で、一か八かというよりも準備の中でやれるという評価を得たので彼を起用した」。そう振り返った指揮官は「徐々にフィットし、緊張しながらもよくやってくれたと思う」と高い評価を下していた。

 もっともその一方、望月自身は冷静に現状を見つめていた。「ある程度は自信になったけど、足りない部分が明確に見えた試合だった」。この日の課題として挙がったのは「前への配球、コーチング、守備の対応」。J1デビュー戦で苦しんだドリブル対応ではこの日も俵積田相手に苦戦を強いられ、「結果を残すことはできたけど、総合的に見たらあまり良くなかった」と現実的な自己分析をしていた。

 とはいえ望月にとっては、これがJ1リーグ戦での初先発。初アシストという結果に手応えを得つつ、フル出場できたという経験は大きな収穫だろう。「今回の試合では結果を残すことはできたので、今日だけで終わらずに良い部分は伸ばして、改善するところは改善して、始まったばかりのキャリアをさらにつなげられたらと思う」。ターニングポイントとなり得る90分間を経て、さらなるレベルアップを遂げていくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)

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Text by 竹内達也

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