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[MOM915]国士舘大DF望月海輝(4年)_町田内定DFが優勝パレードと同日に町田市内でもう一つの歓喜呼び込む

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1部残留に導くゴールを決めたDF望月海輝

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.18 関東大学L1部第22節 国士舘大3-0東海大 国士舘大G]

 FC町田ゼルビアのJ2優勝とJ1昇格を祝うパレードが盛大に行われた今月18日、町田入りを内定させるDF望月海輝(4年=三菱養和SCユース)が同じ町田市内でもう一つの歓喜を呼んだ。実質、勝てば1部残留を決めることが出来た国士舘大が、望月の先制弾を皮切りに3得点を決めて、東海大に快勝。自力で1部残留を決めた。

 気持ちで押し込んだゴールだった。後半9分の先制弾はFKのこぼれ球を押し込んだものだったが、FKを獲得した際に望月が左足首を負傷。最近まで痛めていた箇所で、「足首は何回もやっていて、感覚的に行っちゃってる感じ。普段だったら変わっていた」というほどの痛みがあったという。

 それでも「最後の試合でしたし、ここで変わるもの違うなと思った」と気持ちを奮い立たせると、体は自然とゴール前に。「何とか残ってやったら入った感じ。無我夢中という感じです」。後半20分に途中交代となったが、スコアレスの緊張から解かれたチームは、その後2得点を積み上げた。

「後期が始まるときはインカレがまだ狙える位置だと話していたけど、苦しい戦いになってしまった。勝てずに順位が落ちていく中で、残り4節で最下位。でも先輩から1部を残してもらって、何人かチームが決まっている中で、このままじゃ終われないっていうのは本当にあって、その思い一心でチーム一つになってやった感じです」

 個人としても誤算続きの1年だった。総理大臣杯で日本一を経験するなど、飛躍の年になった昨年。当時の主将GK飯田雅浩(現東京V)も、「来年はヘンリー(望月)の争奪戦になるんじゃないですか」と話していたように、大型右SBが大学サッカー界の顔の一人になると予想されていた。しかし今季始動のタイミングで腸脛靱帯を負傷。デンソーカップチャレンジなど、シーズン前の戦いの欠場を余儀なくされた。

 ただ卒業後の進路は思いのほか、早く決まった。今年5月10日に町田から24シーズン加入内定のリリースがされた。複数のオファーを待つより、「早めにオファーをくれたことに対する誠意」を示すことを選んだという。チーム方針で内定後も練習参加は出来ていないが、「声が低いな」という第一印象を持ったと笑う黒田剛監督とは、一度話をする機会があったといい、「体を作っておけ」「厳しい戦いになるぞ」と発破を掛けられたことを明かす。

「(クラブからは)身体能力に関する面を評価してもらっている。ここからほかのところを武器にするのは難しいので、それを伸ばしていきながら、ほかのところを補強していきたい。Jリーグはこれまであまり見てこなかったけど、4年生になってから積極的に見るようになった。やっぱり町田はすごく戦うなと思ったし、守備へのこだわりが凄いと思った。正直、このままだときついと思っているので、さらに頑張っていかないといけないと思っています」

 高校時代までの環境は、先輩後輩の上下関係をそれほど気にすることはなかったが、大学では「入った時は本当に辛くて。あと4年もあるんだみたいな感じだった」と悩む日々を過ごしたという。だがそこに身を置いたからこそ、今の自分があることも分かっている。「今の姿?何にも見えていなかった。技術も足りなかったりして、きつかったけど、本当にいろんな経験をさせてもらった。メンタルは強くなったと思います。ここに来たからプロになることが出来たと思っています」。

 残留を決めたことで、国士舘大生として戦う最後の試合を終えたことになる。スタンドにはこの日も、女手一つで育ててくれたお母さんの姿があった。「お母さんもJ1で心配している。厳しいじゃないですか。賞味期限が短いというか、多くの選手がすぐにいなくなっちゃう世界。自分なんかがそこで生き残っていけるのか、すごく心配していると思うので、そこは自分の結果で安心させたいなと思います」。給料が入った暁には「旅行にでも行ってほしい」と話す孝行息子のプロ生活が、いよいよ始まる。

(取材・文 児玉幸洋)
●第97回関東大学リーグ特集
児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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