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全中制覇の浜松開誠館、“陰”の存在に主将MF川合亜門が感謝「本当に大きかった」

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[8.22 全中決勝 静岡学園1-4浜松開誠館 小真木原]

 18年ぶりの日本一に輝いた浜松開誠館中(東海2)のFW川合亜門(3年)は試合後、ただ一人、大粒の涙を流していた。

「僕たちの学年はずっと幼いという感じで、正直、学校生活もあまり良くなかった。そこで自分がいろいろ怒っちゃって、時にはみんな仲良くやって、自分だけ注意している感じの時もあった。でもそれはチームとして違うと感じて。手を取り合いながら、楽しむときは自分も一緒になって楽しむ、しっかりやる時はやるという風に声掛けの使い分けを意識するようにした。そのことで最終的にチームが分裂することなく、全員が仲良く元気にやれたのかなと思います」

 背番号10を背負い、プレー面でも大黒柱としてチームの先頭に立つ主将だが、人知れずプレッシャーとも戦っていた。「このチームは全国にも出られないんじゃないかというくらいに言われていて、苦しんだ時期、辛かった時期があった。でもみんなで力を合わせてここまで来れた。その涙だったと思います」。汗に交じって流がした涙には、様々な理由があった。

涙を流した主将MF川合亜門

 そんな川合は「本当に大きかった」と2人を紹介してくれた。種吉咲人(3年)と斉藤俊星(3年)。登録メンバー18人からは外れた選手だが、サポートメンバーとしてチームを陰で支えていた。

 特にGKの種吉は当初、背番号12でメンバー入りするはずだった。しかし今大会初戦の前日に左腕を負傷。病院で検査をすると、骨にひびが入っていることが判明した。

 ただ種吉がチームメイトに落ち込む姿をみせることは一切なかったという。ギブスを巻きながら宿舎に帰ってきた時も、「ひび入っていたわ」「代わりに迅(松浦迅ビエラ)が入るから、俺サポートに回るね。みんな勝ってよ」と明るく振舞った。大事な試合直前にチームに動揺を与えるわけにはいかない。普段の練習から誰よりも声を出してチームメイトを鼓舞しているというムードメーカーらしい行動だった。

 川合もそんな同級生の気持ちを十分に汲んでいた。「もし僕が種吉の立場だったら涙が止まらないと思うけど、あれがあいつのいいところ。それでみんな種吉のためにがんばろうと思えた。俊星は個人的に仲がいいんですが、1回戦2回戦でプレッシャーにつぶされそうになっていた時に部屋に来てくれて、相談に乗ってくれた。本当に2人はいろんなところに顔を出して、声をかけていた。あの2人の影響は大きかったと思います」。背中を押してくれた力に感謝してもしきれない様子だ。

 日本一が新たなスタートになる。頂点に立ったからと言って、追われる立場になったとも思っていない。

「負けて悔しい思いをしているチームの方が成長があると思うし、自分たちも東海大会決勝で負けたことで、ここまで来れたと思っている。ここでサッカー人生が終わるわけじゃないし、ここで調子に乗らないよという声もすでに出ていた。もう数段階上に行けるチームだと思っているので、一つひとつ練習から取り組んで、結果を出せるようにやりたいと思います」

 青森山田に静岡学園、日章学園に神村学園。高校年代でも結果を残す中高一貫校の活躍が近年のトレンドになっている。全中優勝世代として語られる浜松開誠館のこの世代にも大いに注目していきたい。

後列右端が種吉咲人、中列右端が斉藤俊星

サポートメンバーとして帯同した2人のコメント

斉藤俊星(3年)
「メンバーに入ることができなかったけど、サポートメンバーに入るか入らないかと聞かれた時に、自分で行きたいと言いました。自分たちの代はこういう時は一つのチームになって戦える。自分はサポートというより、声で協力できたと思います。高校ではもちろんプレーヤーとして頑張りたい。自分はドリブルが好きなので、そういうところを磨いて、今回のメンバーに入った選手に負けないような選手になっていきたいです」

種吉咲人(3年)
「怪我をしたのは初戦の前日です。心が折れかけているとみんなに言われたけど、全然そんなことはなかった。自分が折れたら全国優勝も出来ないと思ったので、ポジティブにやっていました。ベンチ外で観ていて、メンバーに入っている奴は凄いなと思った。とにかく日本一を目指して3年間やってきて、夏に結果を出せたのは嬉しかった。最高です!」

(取材・文 児玉幸洋)
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