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「強い鹿児島を復活させる」。中学生も大活躍の鹿児島県が千葉県に3発逆転勝ち!

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後半4分、鹿児島県はFW福田師王(神村学園中、右)が勝ち越しゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[9.30 国体少年男子2回戦 鹿児島県 3-2 千葉県 高松緑地多目的球技場(人工芝)]

 強い鹿児島を復活させる――。第74回国民体育大会 「いきいき茨城ゆめ国体」サッカー競技少年男子の部は30日に2回戦を行い、鹿児島県が3-2で千葉県に逆転勝ち。鹿児島県は10月1日の準々決勝で香川県と戦う。

 大久保毅監督(鹿児島U-18)の言う「良いサッカーをして、強い」「強い鹿児島を復活させる」を見事に表現していた。2020年の国体開催地、鹿児島県が会場を沸かせて逆転勝ち。圧巻の3アシストで“半端ない”活躍を魅せたU-15日本代表MF大迫塁(神村学園中3年)と2得点のFW福田師王(神村学園中3年)の活躍が際立ったが、彼らをサポートした高校生たちを含めてチーム全体で対戦相手との優位性を探し、ポゼッションからの3ゴールで前回3位の千葉県に勝ち切った。

 先制したのは、柏U-18と市立船橋高のプレミアリーグ勢に千葉U-18と八千代高の選手を加えてメンバー構成された千葉県だった。前半7分、この日抜群の左足ショットを見せていたMF大輪昂星(市立船橋高1年)が、パワーシュートでゴールをこじ開ける。

 その後は鹿児島県がボールを握るものの、「楽なところへのボール回しになってしまっていた」(大久保監督)。千葉県は相手が中に入って来たところでボールを奪い取り、左足キックで違いを生み出すU-17日本代表候補CB田中隼人(柏U-18、1年)の縦パスや右MF平良碧規(市立船橋高1年)の縦突破、クロスから追加点のチャンスを作った。

 鹿児島県は前半のうちにチームリーダーの右SB畠中健心(神村学園高1年)に代えてMF片山捷真(神村学園高1年)を左サイドへ投入。判断の良さ、技術面など好プレーを見せていた大迫を1トップの福田の背後に移動させた。神村学園中コンビの距離を近づけると、この選手交代、ポジションチェンジが後半に効果を発揮する。

 まずは後半2分、中央でボールを持った大迫がサイドへ展開すると見せかけて中へスルーパス。これで抜け出した片山がGKとの1対1を制して同点に追いつく。さらに4分には左サイド後方からSB抜水昂太(神村学園高1年)が入れた斜めのフィードを、大迫がジャンプしたまま1タッチスルーパス。これで抜け出した福田が左足で勝ち越しゴールを決めた。

 鹿児島県はいずれも技術力の高いMF崎野隼人(鹿児島城西高1年)やMF佐藤璃樹(神村学園高1年)、MF川原琉翔(鹿児島城西高1年)が神村学園中コンビのサポート役に回り、ボールを配球することに集中。彼らが連動しながら落ち着いてパスを繋ぎ続けたことで仕掛ける回数を増やした鹿児島県がペースを握った。

 ただし、千葉県も力のあるチーム。後半13分には大輪が左足の弾丸ショットを打ち込む。これは鹿児島県GK吉山太陽(神村学園高2年)の正面を突いたが、苦しい展開でも得点を獲る力があることを示していた。

 だが、次の1点を奪ったのは鹿児島県の方だった。17分、中学生トリオの一人、右SB笠置潤(重富中3年)の斜めのパスを起点に、大迫が巧みなターンから前進。そして、スルーパスで抜け出した福田が右足シュートをゴールに流し込んだ。「背後への抜け出しは自分の持ち味のプレーです。自分は決めるポジションなので決められて良かったです」という福田の2得点目によって、鹿児島県が3-1と突き放した。

 千葉県は失点の2分後、左SB伊達由太嘉主将(柏U-18、1年)の左クロスから平良が自ら放ったシュートのこぼれを決めて再び1点差。それでも、攻め続ける鹿児島県は相手を見ながらボールを繋ぎ、前向きなプレーが印象的な福田やFW上薗慶次郎(加治木高1年)の突破などから追加点のチャンスを作り出した。だが、千葉県は4点目を許さない。

 そして終盤、千葉県はゴール前のシーンを増やして相手にプレッシャーをかける。だが、鹿児島県は神村学園高の守護神である吉山や集中した守備を継続したCB田原寛人(鹿児島工高2年)、前への強さを見せたCB前原慶維(神村学園高1年)を中心に身体を張ってリードを守る。そして試合終了。鹿児島県が14年大会以来となるベスト8進出を決めた。

 1990年以降、鹿児島実高が選手権を2度制し、3度の準優勝。08年度にはFW大迫勇也を擁した鹿児島城西高が選手権で準優勝している。だが、近年はなかなか単独チームで結果を残すことができず、国体は過去10年で出場2回。勝ったのは14年大会のみだ。そこからの「復活」が鹿児島県のサッカー関係者の大きな目標となっている。

 今年の鹿児島県はトレセン活動で結果の出なかった世代なのだという。だが「一生懸命。素直で献身的」(大久保監督)という世代に、大迫ら1学年下のトップ選手が融合。国体候補のU-16選抜チームは鹿児島県2部リーグに参戦する機会を得るなど、県や各チームの協力体勢が彼らの質の高いパスワークや連動性に繋がっている。

 今大会は、「2020年に繋げる」「最低ベスト4」という目標を持つ鹿児島県。この日の試合内容にも決して満足していないだけに、目標へ向けてより、上手くて強いサッカーを見せてくれそうだ。福田は「今年は鹿児島県の目標がベスト4ですけれども、優勝目指して、来年も鹿児島国体なので自分が点を決める選手になってチームを勝たせたい」。この日、千葉県との好勝負を制した鹿児島県は今年、「強い鹿児島を復活」させて、注目集まる地元国体に王者として臨む。

(取材・文 吉田太郎)
●第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」特集

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