beacon

[MOM4022]青森県DF伊藤柊(1年、青森山田高)_対するは地元・宮城県、攻守貢献で成長知らしめる

このエントリーをはてなブックマークに追加

青森県DF伊藤柊(1年、青森山田高)

[10.4 国体少年男子準々決勝 青森県 3-0 宮城県 真岡市総合運動公園陸上競技場]

 同じ東北同士の対戦とあり、青森県の選手の準々決勝にかける想いは強かった。対戦相手が宮城県でもあるのも、選手たちを燃えさせる原動力になっていたという。今大会でCBを務めるDF伊藤柊(1年、青森山田高)は宮城県出身。FCフォーリクラッセ仙台から、「このチームで強くなりたいと思いましたし、きつい環境を自分から選ばないとわざわざ宮城から出る意味がない。難しい環境、厳しい環境を選びたかった」と理由で青森にやってきた。

「伊藤は宮城から青森の地に門を叩いてきた。彼が宮城にいれば、国体にも選ばれていた選手だと思う。彼のためにも、彼に『宮城にいた方が良かったじゃん』という想いをさせないために、チームみんなで頑張ろうと試合前に話しました」。そう振り返るのは、上田大貴監督。青森県初の日本一に近付くため、伊藤のためにも絶対に白星が必要な試合だった。

 選手は気合に満ち溢れていたが、延長戦までもつれた2回戦の疲労もあり、前半は青森県らしい前からアグレッシブにボールを奪いに行くプレーができなかった。スピードのあるFW萩原空真(1年、聖和学園高)にDFラインの背後を突かれて、ピンチを招く場面も散見。「最悪な前半」と上田監督が評したのも理解できる試合展開だった。

 苦しい流れを一変させたのが、この日の主役候補である伊藤。前半終了間際の35分に右サイドの高い位置でスローインを獲得すると、伊藤はDF小沼蒼珠(1年)が放り込んだロングスローをニアで競った。ゴール前では味方と相手GKが競り合ったが、共に触れる事無くそのままボールはゴールネットへ。「ラッキーな形になりましたが、自分が狙っていた形」(伊藤)での得点によって、青森が1点リードで試合を折り返すと、勢いに乗った後半は2点を追加し、3-0で勝利した。

 チームに勝利をもたらす先制点だけでなく、本職である守備での働きも見逃せない。「安定して後ろを締めてくれた。DF山本虎(2年、青森山田高)がクローズアップされる中で、伊藤柊の安定感というのが、虎の力も引き立たせてくれている」と評価するのは上田監督だ。

 今大会、世代別代表の経験を持ち、プレミアリーグにも出場する山本とCBを組む経験は伊藤にとって貴重な財産になっている。「虎さんが早生まれとして、この国体に入ってきてくれたのは本当に有難い。隣にいる自分が、もっとやらなければいけない。相手は虎さんではなく、自分の所が狙われると思うので、虎さんと以上を目指して行きたい」。間近で山本が繰り出す質の高いプレーが見られるのも、伊藤の成長を後押しするのは間違いない。

 攻守両面で勝ち上がりに貢献する一方、今大会での反省点もある。入学のきっかけとなった昨年3冠を達成した青森山田は相手にシュートすら打たせないチームだった。憧れの代に近付くためには、自分たちの代で3冠を達成するのが目標だが、まだ彼らの基準には達していない。「昨年の青森山田は相手に何もさせなかった。選手権を見ていても何もさせず、シュート0の試合もあった。ただ、今日は危ないシーンがたくさんあり、無失点で終えられたのはラッキー。少しずつ無くしていかなければいけない」。勝利の喜びつつも、視線はすでに先を向いている。最強世代に近付くためにも、残り2試合を勝利し、一つ目のタイトルを手にするつもりだ。

(取材・文 森田将義)
●第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」特集

TOP