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[総理大臣杯]元日本代表主将の前田秀樹監督率いる東京国際大、「可能性しかない」新鋭が初の全国切符獲得!:関東

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[6.7 関東大学選手権順位決定戦 青山学院大1-3東京国際大 赤羽]

 第37回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントの出場権7枠を懸けた「アミノバイタル」カップ2013 第2回関東大学サッカートーナメント大会は7日、5~8位決定戦1回戦を行い、東京国際大が3-1で青山学院大に逆転勝ち。初の総理大臣杯出場を決めた。
 
 元日本代表主将(国際Aマッチ65試合出場11得点)で水戸ホーリーホックの監督などを務めた経歴を持つ前田秀樹氏が08年1月に監督へ就任してから6年目。東京国際大は昨年まで埼玉県リーグに所属し、今年初めて関東リーグ2部に昇格したチームだ。「(就任当時は部員が)8人しかいなかったですから。同好会に近いようなチームでした。1年目はGKもいなくてDFの子をコンバートして。そこからですからね。(でも)早かったです」と指揮官が振り返る新鋭が、逆転勝利で初の全国切符をもぎ取った。

 前半、試合を支配していたのは2年連続の全国大会出場を目指す青学大だった。アンカーのMF新村賢祐(4年=湘南ユース)とその前方に位置するMF伊藤光輝(1年=柏U-18)、MF平久将土(1年=柏U-18)のトライアングルを中心としたポゼッションで揺さぶりをかけると、局面では鋭いターンから前進するFW関谷祐(3年=湘南ユース)と足技優れたMF恵龍太郎(2年=滝川二高)、そして抜群のキープ力を発揮した伊藤が個でDFをこじ開けてくる。そして23分、右サイドでボールを持った伊藤が鮮やかなターンでDFを置き去りにしてPAへ迫ると、ラストパスのこぼれ球を胸で収めてそのまま右足シュート。これがゴールヘ突き刺さり、青学大がリードを奪った。

 一方の東京国際大は試合開始直後にMF小玉敏之(3年=横河武蔵野FCユース)が負傷退場してしまうアクシデント。中盤の守備がハマらず、思い切りも欠けたチームは劣勢を強いられた。ただ、カウンターからMF若井祥吾(3年=浦和ユース)がスペースへ絶妙なボールを配球し、左SB鹿糠智正(4年=柏日体高)の正確なくさびへのパス、そしてFW福島遼(3年=神村学園高)の推進力も十分。20分にMF高橋明嗣(4年=筑陽学園高)の右クロスから阿部が放った右足シュートがGKの手を弾いてクロスバーを叩いたほか、39分にはカウンターから若井が絶妙な展開を見せて決定機に結びつける。無得点で前半を折り返したものの、鹿島アントラーズ内定の筑波大FW赤崎秀平(4年=佐賀東高)の弟、FW赤崎俊太(2年=神村学園高)らがシュートまで持ち込み、反撃を続けていた。

 東京国際大にとっては10番の若井が「(入学当初は遠すぎる存在で)全然考えていなかったです」という全国舞台。それでも2日前の準々決勝・中央大戦からメンバーをすべて入れ替え、この日に懸けていた東京国際大が後半、全国への思いをぶつけて、逆転劇を演じる。「体力的には青学さんよりもウチの方があると。走り勝つことが後半はできると思っていた。追いつけば勢いはウチの方がある。ここが大きかったですね」と指揮官も振り返っていたが、開始からアグレッシブに相手へ襲いかかると、両サイドの豊富な運動量がワイドへ開いた位置から攻撃を組み立てようとしていた青学大CBのパスコースを封鎖。また後半9分に前線へ投入されたDF加藤龍治(3年=成立学園高)が高い守備力を発揮し、相手のパスワークが鈍り出す。青学大はサイドの高い位置までは何とかボールを運ぶものの、そこから懐へ潜り込むことができずに攻撃が停滞した。

 逆に東京国際大は12分、MF佐伯拓磨(2年=麻布大淵野辺高)の右CK時にDFとポジション争いをした阿部がファウルを受けてPK獲得。これをキッカーの若井が右足チップキックで鮮やかにゴールヘ沈めて同点に追いついた。さらに15分には佐伯の右CKを中央でCB川島將(4年=東久留米総合高)が競り勝つと、ファーサイドで待ち構えていた左SB鹿糠が左足シュートをゴールヘと突き刺して勝ち越し。青山学院大は交代出場したMF後藤拓斗(3年=横浜FMユース)の右足シュートがゴールを襲う場面もあったが、終盤の攻防は縦への勢いのある東京国際大が上回る。34分、高橋が獲得した右FKを佐伯が中央へ放り込むと、ニアサイドで川島がヘディングシュート。クロスバーを叩いだボールはそのままゴールラインを越えて3点目が生まれた。阿部は「後半に入ってみんな落ち着いて、相手も体力的に落ちてきてどんどん行けば逆転できると思っていた。良かったです」

 歴史を変えた東京国際大は経験豊富な前田監督ら10名のコーチングスタッフの下で強化を図っているほか、坂戸キャンパスにサッカー場3面、フットサル場3面の練習場を持つ。今年は100人を越える新入生が入学したのも、高いレベルの指導と環境を求めてのこと。若井は「(東京国際大は)可能性しかないですね。大学一番の環境ですし、可能性しかないです。(昨年Jリーガーも輩出し)それに続きたいですし、続けるような大学チームにしていきたい」と意気込む。今大会、ターンオーバー制を活用して予選突破を果たしたが、前田監督が「高校時代なんて関係ない。今がどうかが大事」と説明するように、実績がなくても判断の速さを磨き、チームのトップレベルに届いてきた多くの選手にチャンスが与えられている。そして競争の中で、個人、チームとして成長を遂げている。

 全国大会は初出場だが、間違いなく注目集まるであろう東京国際大。最終ラインで奮闘した阿部は「全国は初めてなので、出れたことは本当に嬉しいです。ウチは上手くないかもしれないですけど、頑張るヤツが多いので、そこで勝っているかなと思います。今まで通り、守備をサボらず頑張っていければいい。サボったら本当にやられると思うので、サボらず頑張りたい」。関東リーグ1部2連覇中の王者・専修大や筑波大が敗退した関東予選を勝ち上がってきた新鋭。全国ではどのようなインパクトを残すか。

[写真]後半15分、東京国際大DF鹿糠(左)が勝ち越しゴール

(取材・文 吉田太郎)

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