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「最高の誕生日プレゼントになりました」富士大は主将DF藪中海皇の22歳バースデーに日本一を達成

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優勝カップを掲げるDF藪中海皇(4年=北海高)

[9.10 総理大臣杯決勝 富士大2-1関西学院大 ユアテックスタジアム仙台]

 これ以上最高の誕生日があるだろうか。「誕生日に試合をするのは初めて。朝、バスに乗った時に、みんなに『最高の誕生日にするよ』と言われた。自分もそうなるように頑張りました。最高の誕生日プレゼントになりました」。DF藪中海皇(4年=北海高)が22歳のバースデーに、大学サッカー日本一の主将になった。

「総理大臣杯を優勝できるなんて自分たちも思っていなかった。正直まだ困惑しています」

 夢のような10日間だった。これまで大学の全国大会で勝ったことのなかった富士大(東北2)だが、1日の1回戦で周南公立大(中国2)に勝利して初勝利を飾ると、2回戦で九州予選1位の日本経済大、そして3回戦で東海予選1位の中京大を撃破。さらに準決勝では優勝候補の法政大(関東6)をPK戦の末に下すと、決勝では関西予選1位の関西学院大に勝ち切って、東北勢として初の頂点に立った。

 ただ藪中は準決勝のPK戦で苦い思いをしていた。決めれば勝ちが決まる5人目のキッカーを務めた藪中だが、相手GKに止められてしまう。その裏のPKを相手が失敗したことで決勝に進出していたが、仲間への感謝の気持ちを持ってこの日の試合を迎えていた。

 決勝では前半26分に中学、高校、大学と一緒のチームでプレーしているMF芝西大希(4年=北海高)が負傷交代を余儀なくされた。「芝西の分まで。自分たちが高校から学んできたことを発揮できるようにという思いで最後までやりました」。盟友の想いを背負えたことにも胸を張った。

「相手を大きく見すぎないことは意識していました。確かにプロに内定していたり、すごいところを戦っている選手たちでしたけど、同じ大学生で、年も一緒だったり年下もいたので、リスペクトしすぎないように、逆に圧倒してやるという気持ちでプレーしていました」

 試合後には「明日授業がある…」と苦笑いを浮かべながら現実に引き戻されている選手の姿もあった。ただ今回の日本一と私生活は別。4年生の藪中らに授業はないというが、「そういうところがしっかりと出来てこそ、応援される部になると思うので、そこはしっかりとやらせます」と甘えを許すつもりはない。

 そして出場権を獲得した大学選手権(インカレ)に向けても、甘えをなくして、日々の練習に取り組んでいくつもりだ。 「上から目線ではなく、下から下から這い上がる気持ちで戦っていきたいと思います」。冬に向けた“日本一の挑戦者”の戦いは、もう始まっている。

(取材・文 児玉幸洋)
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児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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