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[全国自衛隊サッカー大会MOM]海自厚木ANFC FW中村京介士長_チーム救った“厚木で一番熱い男”

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[4.27 全国自衛隊大会準決勝 海自厚木マーカス1-1(PK3-4)海自厚木ANFC]

 不屈の男が、起死回生の一撃を放った。優勝候補筆頭の海自厚木マーカスが1点リードで迎えた後半のロスタイム。タイムアップの笛を待つばかりという会場の雰囲気をヘディングシュートでひっくり返した。GK堀史人3曹が長いフィードボールを送ると、海上自衛隊厚木基地ANFC(通称:厚木なかよし)のFW中村京介士長はタイミングを図って落下点へ飛び込んだ。「キックが良くて、来た!という感じだった。触れば入ると思い、ボールも見ないで(落下点へ)走った。最後に取れて良かった」と同点弾を振り返る表情に充足感が漂った。劇的ゴールの直後に試合終了のホイッスル。迎えたPK戦で中村士長はキックをミスしたが、GK堀3曹の好セーブ2本に救われて勝利を物にした。

 全国自衛隊サッカー大会における、海自厚木マーカスの存在は大きい。最多16度の優勝を誇る、絶対的な存在だ。「マーカスと対戦して帰りたかった」と言い残して予選ラウンドで去るチームがあれば、打倒マーカスのためにシステムを練り上げてきたチームもある。そして、マーカスのOBチームである海自厚木なかよしにとっては、同じ職場の仲間であり、ライバルである一層特別な相手と言える。中村士長も前回大会はマーカスの一員として出場した。相手を認める気持ちも、秘めていた勝利への思いも大きい。

 チャンピオンのシナリオを書き換えた男は「全自(大会の通称)は、1年に1回の大きな大会。トレーニングも、この大会に照準を合わせてやってきた。大会におけるマーカスの存在は特別。ほかのすべてのチームにとって大きな壁で、みんながマーカスに勝ちたいと思って臨んでくる。今日は向こうの中盤が厚くて、こっちは間延びしてしまった。前線で私たち2人が孤立してしまう場面が多かった。でも、最後まで走り切るのがうちの良さ。諦めるなんて、考えられない。最後まで狙っていた」と冷めやらぬ闘争心を垣間見せた。

 サッカーの強豪として知られる鹿児島実業高校(鹿児島)の出身だが「レギュラーでも何でもなかった」(中村士長)選手だった。公務員を志し、入隊してから自衛隊の各基地にサッカー部があることを知った。終わったはずのサッカー人生は、全自を通じて甦った。奇跡の同点弾は、歴史に名を残す一発だ。2試合連続でPK戦2本セーブのGK堀3曹も主君の立役者。しかし、その守護神が「厚木で一番熱い男と書いてください」と持ち上げたストライカーの執着心なしにはPK戦もあり得なかった。前回のマーカスでの優勝に続き、厚木なかよしでも栄冠を勝ち取るか。マーカスで金、なかよしで金。視線の先に描かれているのは、栄冠を勝ち取る決勝弾だ。

(取材・文 平野貴也)

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