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W杯4強のポーランドを撃破したアンプティ日本代表の”逆境力”

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昨年6月のポーランド戦で唯一得点をあげた萱島比呂(左)は厳しいマークを受けた

[10.31 アンプティサッカーW杯C組 日本代表 2-0 ポーランド代表]

 メキシコの夕日に照らされた日本代表戦士が、誇らしかった。2点リードのままアディショナルタイム3分すぎて待望の長い笛が鳴る。日本代表の杉野正幸監督はゆっくりピッチ内に入り、GK長野哲也と抱き合い、喜びをかみしめた。
 
「長年のライバルに初めて土をつけることができたことが、何よりも嬉しい。1戦目(のコスタリカ戦)は勝利したものの、2戦目(コロンビア戦)はうまくいかなくてその中でポーランドに勝てたことは、本当に嬉しく思う」

 ピンチを乗り越えた。出発前、杉野監督は前回ワールドカップ(W杯)でベスト4の強豪・ポーランド代表と対戦するまでに2連勝で挑む目論見だった。特にコロンビア代表は競技が国内で浸透するまでの歴史が浅く、チームとして熟成していない、と予想。しかし、0-0の後半に点をとりに行く策が裏目に出て、ふたを開けてみれば0-3の完敗だった。

 昨年6月、ポーランドで開催された国際大会で対戦した時に1-6と完敗したポーランド代表との一戦は、日本代表にとって最初の剣が峰だった。その状況で杉野監督は堅守速攻の原点に返り、セットプレーからの得点を積み重ねる策がはまった。

「1試合目も2試合目もなかなか点を取ることができなくて、ゴールを決めることができて安心しました。決勝トーナメントでも点を決めたいですが、一番は勝つことなので、頑張って勝ちに行きたい」

 控えめに喜んだ先制ゴールの川西健太はW杯初参加。普段は関西の摂南大薬学部薬学科に通う大学生で、出発前日の10月23日、都内で行われた日本代表壮行会にも所用で唯一、参加できなかった。勝利を決定づける2点目を決めた天川隼輝も代表に5人輩出するFC九州バイラオールに所属するが、生活拠点は広島。月に1度、チームの全体練習ができればいいほうだという。普段から整っていない環境下でレベルアップを求められてきた日本代表戦士にとって、ポーランド戦で訪れた「逆境」は慣れっこだったのかもしれない。

「ゴールを決められて、最高でした。決勝トーナメントでさらに爆発させます」

 天川の言葉にも力がこもった。日本代表はコロンビア代表についでC組を2位で通過。史上初のベスト4を目指す旅はまだまだ続く。


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