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ゴールポストも多様化の時代…2020-21年、サッカーのルールここが変わる:解説②

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各国トップカテゴリでは丸型が一般的となっているゴールポストとクロスバー

 国際サッカー評議会(IFAB)が8日、2020-21シーズンに向けた競技規則の改正点を公式サイトに掲載した。大きな見直しが行われたハンドの他にも、近年の改正でGKの難易度が上がっていたPK戦をはじめ、オフサイド、イエローカード、ゴールポストの形状に関するルールにも変更があった。

■ルール改正はどう行われる?
 IFABはサッカーのルールを決定する唯一の機関。イギリス4協会とFIFA加盟国によって構成されている。年間を通じてさまざまな会議を開き、毎年2月下旬から3月上旬に最も大きなイベントの年次総会で、翌シーズンの改正案を決議するのが主な役割だ。今季の第134回年次総会は2月29日に開催。日本からはJFAの田嶋幸三会長も出席した。

 年次総会で決められた新ルールは通常、翌シーズンの初日にあたる6月1日に施行されることになっている。ところが今回は新型コロナウイルスの感染拡大により例外。前年度の各国リーグ戦が終了しそうにないため、「6月1日以降に始まった大会では導入する」という運用となった。なおJリーグでは例年、7月下旬〜8月上旬から順次新ルールが採用されている。(開始日は後日発表)

 2020-21シーズンに向けた主な変更点は以下のとおりだ。(3つの大きな改正があったハンド項目の変更点は関連記事を参照)

■“キーパー不利”の構図が一部解消?
 試合の決着がつかない場合に行われるPK戦では近年、GKにとって不利な改正が続いていた。中でも批判を浴びたのが、PK戦のGKが「飛び出し」(キッカーが蹴る前にゴールラインを離れる)行為をした場合、イエローカードを提示されるというものだ。万が一退場になっても選手交代が許されないため、フィールドプレーヤーがゴールを守ることになってしまう恐れもあった。

 またビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が導入されたことで、監視の目が強まったこともその不安を増大させた。昨夏のU-20W杯では警告をもらったGKがほとんど動けなくなり、PK戦の魅力が損なわれるという事態に発展。続いて開催された女子W杯では、PK戦でのGKにイエローカードを出さないという緊急ルール変更が行われていた。

 そこで今回、ようやくルール自体が見直されるに至った。まずPK戦より前に出されたイエローカードや注意はPK戦に持ち越さないことが決定。さらにもしGKがPK(試合中も含む)で反則を犯したとしても、最初に下される処分は「注意」に変更され、二度目の反則があった場合にようやくイエローカードが提示されるという流れに変わった。

 なお、キッカーが反則をした場合、キッカーにイエローカードが出される点は変わらない。一方、キッカーとGKが揃って反則した場合はこれまで両者にイエローカードが出されていたが、今後はキッカーのみの処分となった。キッカーの反則に気を取られたGKは反則を犯す可能性が高く、GKの責任ではない場合が多いからだ。これは試合の流れの中で行われるPKでも同様だ。

■守備側ハンド→攻撃側オフサイド
 オフサイドにも軽微な修正が加えられた。現行のルールでは攻撃側選手がオフサイドポジションにいたとしても、この影響を受けない守備側選手が「意図的なプレー」をした場合、オフサイドにならない。たとえば守備側選手がロングボールをクリアミスし、これを拾ってゴールを決めた攻撃選手がオフサイドポジションにいたとしても、ゴールは認められるというものだ。

 今回のルール改正では、上記の「意図的なプレー」に加えて「意図的な反則」があった場合にもゴールが認められることになった。たとえば守備側選手がロングボールを手で阻止した後、跳ね返りを拾った攻撃側選手がゴールを決めるという形を想定。この場合、守備側選手のハンドも認められるが、アドバンテージを得た攻撃側選手のゴールが優先される。

 もしこの改正が行われなければ、上記の事例では「攻撃側のオフサイド」か「守備側のハンド」かの二択となり、アドバンテージによるゴールは認められない。だが、これでは利益を得るはずの攻撃側にとって不利な結果となる。発生頻度は低そうな事例ではあるが、守備側選手の「意図」は反則でも同様の扱いになるようだ。

■アドバンテージ後のカード
 現行の競技規則では、守備側選手が「得点や決定的な得点機会を阻止する」(=DOGSO)反則をした後、攻撃側にアドバンテージが与えられた場合、カードの色はイエローに格下げとなる。アドバンテージによって攻撃側は決定機を失わないため、本来であればレッドカードに値する反則でも処分が軽減されるということだ。

 一方、現行ではイエローカード相当の「大きなチャンスとなる攻撃をファウルで阻止する」(=SPA)行為については、格下げが明記されていなかった。そこで今回の改正で新たに文言が追加された。上記のDOGSOのケースと整合性を取るため、イエローカードから「警告(イエローカード)を行わない」という結論となった。

 また、この規定は主審がアドバンテージを行った場合に限らず、主審のカード提示前に攻撃側選手がクイックリスタートを行った場合にも適用される。

■ドロップボールの妨害にも警告
 現行の競技規則ではコーナーキック、フリーキック、スローインでプレーが再開する際、相手選手が規定の距離を取らなかった場合、警告されるルールとなっている。しかし、前回の改正ではドロップボールにも「4m以上離れなければならない」というセットプレー的なルールが誕生。改正から1年遅れる形で、イエロー要件にドロップボールも加えられる形となった。

■ゴールポストも多様化の時代
 これまでゴールポストとクロスバーは「正方形、長方形、円形、または楕円形のいずれか」と定められていた。しかし、ここにも多様化の流れが到来。今後は「正方形、長方形、円形、楕円形のいずれか、あるいはこれらを組み合わせた形状」に変更され、ゴールポストとクロスバーの形状が異なっても許容されることが決まった。

■VARの運用にも微修正
 ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)はこれまで介入の際、主審に対して「どのような判定を下すべきか」を伝えることを禁じられていた。しかし、その原則を徹底すると助言が回りくどくなることから、この規定を問題視する声が挙がっていた。今回の改正ではその項目が削除。もっとも、主審は助言を受けることができるようになったというだけで、最終的な結論を出すという義務は今後も変わらない。

 また現行の競技規則では、主審は「レビューを行う直前」と「判定を覆す決定をした後」の二度にわたってモニターを描くサイン(『TVシグナル』と呼ばれる)をする必要があった。しかし、オフサイドやゴールなどの客観的な事象では、VARの助言だけを聞いて判定を変更する「VARオンリーレビュー」を行うケースもある。そのケースでは続けて二度も同じサインを出すのは不自然だという批判があり、今後はレビュー直前のTVシグナルは必ずしも強制されないことになった。

(文 竹内達也)


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