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[総体]「作陽を倒して全国に行く」。入学時の悲願を叶えた岡山学芸館が3年ぶりの全国へ:岡山

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[6.14 全国高校総体岡山県予選決勝 玉野光南高 1-2 岡山学芸館高 美作サッカー・ラグビー場]

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技岡山県予選は14日に決勝を行い、岡山学芸館高玉野光南高を2-1で下し、3年ぶり2回目となる全国総体出場を決めた。

 12年に長野県で開催された全国総体で初めて全国の舞台に立ちながらも、以降は作陽高と玉野光南に行く手を阻まれ続けた岡山学芸館が、2度目の全国行きの扉をこじ開けた。試合序盤から仕掛けたのは玉野光南。DFラインから素早く攻撃陣にボールを配球すると、MF桑田大樹、FW土居晃貴らの仕掛けで、相手陣内でのプレーが続く。勝負の鍵を握る存在となったのはFW新地猛。中学時代は陸上部に所属していた異色の選手の持ち味はロングスロー。小学校時代から得意だったという必殺技を左右、場所問わず投げ続け、「どこからでもCKという感じで、嫌だった」(岡山学芸館FW竹田そら)と岡山学芸館に脅威を与えた。

 先制点も彼から生まれた。21分に右サイドでスローインを得ると、新地がゴール前にボールを投げ込む。DF西中竜斗が競ったこぼれ球をDF尾上翔が押し込んで、玉野光南が試合を動かした。リードを奪われた岡山学芸館は以降も、ロングスローを受け続けたが、ターゲットの西中を二人がかりで挟み込み、自由を与えず。競り合ったこぼれ球に対しても選手全員が集中力を絶やさずはじき返した。守備の奮闘に呼応するように、攻撃陣も徐々に持ち味を発揮し、外に張り出したMF井上瑞貴西崎剛司の両サイドMFが縦への突破からチャンスを作った。32分には右サイド高い位置で得たスローインから井上がゴール前に浮き球のパスを展開。竹田が胸トラップから左足ボレーを狙ったが、しぶとく対応した玉野光南のDFに阻まれた。

 1点を追う展開ながらも、高原良明監督が「前半から崩しの部分ではウチの方が出来ていた。先制されたけど、後半残り35分あるから落ち着いて崩していこう」と振り返ったように岡山学芸館に焦りの色は無し。後半に入ってからもサイド突破を狙いながら、積極的に交代カードを切って同点を狙った。策が実ったのは後半18分。後半途中から入ったばかりのDF平野智大が相手DFのクリアを高い位置で拾って、冷静に右足でシュート。この一撃がゴールネットを揺らし、試合をイーブンに戻した。

「平野は本来DFで、ロングスローでウチもやり返そうと思って入れた選手。まさか入るとは思っていなかった」(高原監督)という選手の活躍で、勢いづいた岡山学芸館は30分にも好機を作り出す。後方からのパスに竹田が中央を引いて反応すると、素早く右サイドのスペースにパス。フリーで抜け出したFW川口洋平のクロスに竹田がダイビングヘッドで飛び込んだが、枠を捉えることができない。

 このまま70分を終えるかと思われたが、アディショナルタイム突入後の39分、岡山学芸館に再び歓喜の瞬間が訪れた。岡山学芸館は右サイドの川口、中央のMF森下基と繋ぎ、PAにスルーパス。キャッチに出たGKの直前で途中出場のMF西山敢太がスライディングで触ると、そのままゴールラインを割って逆転に成功。岡山学芸館が2-1で勝利し、3年ぶりの全国行きを掴んだ。「カードを隠さず、スタートからフルスロットルで先手必勝を狙っていた。狙い通りの展開だったけど、一瞬の隙を突かれてしまった」と乙倉健二監督が肩を落とした玉野光南に対し、タイムアップの瞬間、応援団がピッチになだれ込むなど岡山学芸館は喜びを爆発させた。

「勝てば優勝できる。一番のヤマ場だと思っていた」と高原監督が話す作陽とは準々決勝で対戦。PK戦で下したが、直後には登録メンバー、応援団の多くが胃腸炎に見舞われるアクシデントに見舞われた。前日に行った準決勝・就実高戦は主力2人を欠き、「最低のゲーム。試合後に『お前ら、明日負けろ』と言ってしまうくらい、何もできなかった」(高原監督)と散々な内容ながらも、1-0で辛勝。この日は「勝ったら全てチャラだから」と声をかけて、ピッチに送り出したという。

 朝まで点滴を打っていた選手がいたが、最後まで全員が全力でプレーしたのは全国への思いが強かったから。今年の3年生は初めて全国総体に出た世代に憧れて岡山学芸館の門を叩いた世代。入学直後には、「作陽を倒して全国に行くぞ。緑と青の時代は俺たちで終わらすぞ」と声を掛け合ったという。個性派が揃い、一筋縄とは行かなかったが主将のGK岡崎修也を中心に当時の言葉を思い出し、練習と話し合いを重ねて成長した結果が今回の優勝に繋がったと言える。一つの目標は達成したが、「まだ満足することなく、全国でも上を目指していきたい」(岡崎)。次なるターゲットは憧れの世代が敗れた全国総体のベスト16を超えること。2つ目の目標も叶えるためにも歩みを止めるわけにはいかない。

(取材・文 森田将義)
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