病気との苦闘乗り越え、勇気をくれた仲間を必ず全国へ!思い結実の日大藤沢が神奈川予選突破!!
[6.17全国高校総体神奈川県予選準決勝 座間高 0-1 日大藤沢高 ギオンス]
17日、平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技への出場2枠を懸けた神奈川県予選は準決勝を行い、座間高対日大藤沢高戦は交代出場のFWギブソン・マーロン・マサオ(3年)の決勝ゴールによって日大藤沢が1-0で勝った。日大藤沢は2年ぶりとなる全国総体出場が決定。18日の決勝で第1代表の座を懸けて東海大相模高と戦う。
「全国3位の時よりも嬉しい」。日大藤沢の佐藤輝勝監督は選手たちに感謝すると、目に涙を浮かべたままチームジャージを着た1人の生徒、MF柴田晋太朗(3年)を肩車して選手、マネージャー、スタンドの控え部員たちと喜びを分かち合っていた。
U-17神奈川県選抜のキャプテンも努めていた注目MF柴田は昨年9月、右肩部の耐えきれない痛みの原因が骨に発生するガン、骨肉腫であることが判明。今年のチームの主力として期待されていたレフティーは、それから今年5月までかけて大変な抗がん剤治療を乗り越えてチームに戻ってきた。
病と戦う仲間の姿を知っているからこそ、日大藤沢イレブンは本気で戦ってきた。4月の関東大会予選で優勝を逃すと、選手たちは指導スタッフにトレーニングの強度をよりハードにすることを直訴。「こんなに3年生が頑張ってくれて、1、2年生は抜けないですよ」。何としても今年は全国へ行く、という思いを持ってきた佐藤監督も認める3年生たちの努力、そして強い思いがこの日実った。
日大藤沢のCB安松元気主将(3年)は「本当に一番つらかったのはアイツだと思っていたので、それで自分たちにできることは何かという時に晋太朗を全国に連れて行かなきゃという思いで、そこに3年生だけでなくて1、2年生も乗っかってきてくれて、ピッチの中もそうですし、大きな声を出して応援してくれていた。晋太朗のために全国の切符を届けられたのは良かった」と胸を張った。
仲間のために戦った神奈川県予選、そしてこの日の代表決定戦。試合は簡単なゲームではなかった。立ち上がり、日大藤沢が個の迫力ある仕掛けでプッシュするが、座間は粘り強い守りで対応。その後、ゲームは落ち着いて互いに良い距離感の中でボールを動かし合う展開となった。
前半により決定的なシーンを作っていた日大藤沢が後半も主導権を握って攻める。FW柏木純(3年)やFW桐蒼太(3年)のグイグイ前に行くドリブルやDFラインの背後を狙ったロングボールが相手DFに圧力をかけていく。対する座間は守備範囲広いGK荒井啓吾(3年)が良くカバー。またMF和田悠汰主将(3年)やCB白瀧優(3年)、CB高橋雅也(3年)がゴール前で良く粘ってシュートを打たせない。逆に奪ったボールを和田中心に動かし、MF村井建斗(3年)のテンポの違う仕掛けやFW青木奏太(3年)のスピードを活かして攻め返した。
だが、2試合連続無失点の日大藤沢も前線からのハードワークで相手の攻撃を限定すると、最終ラインの安松やCB竹繁颯音(3年)が相手を危険なゾーンまで攻め込ませない。拮抗した展開となった代表決定戦は、桐や柏木の仕掛けでジャブを打ち続け、さらに後半29分のギブソン・マーロン投入で1点をもぎ取りに行った日大藤沢に歓喜の瞬間が訪れる。
後半33分、日大藤沢は右サイド後方のSB櫻井風我(2年)がDFラインとGKの間に縦パスを入れる。これを座間守備陣が処理ミス。ゴール方向へ流れたボールにいち早く反応したギブソン・マーロンが右足で決勝点となる一撃を押し込んだ。
先制した日大藤沢は終盤、ギブソン・マーロンや同じく交代出場のFW三田野慧(3年)が前線で非常に献身的に走り回り、後方の選手たちも身体を張ってサポート。「(関東大会予選までは)際のところが足りなかった」(佐藤監督)というチームは逆にそれを武器とするチームに変わっていた。指揮官も讃えた80分間の頑張り。最後まで走り抜き、戦う勇気をくれたチームメート・柴田に全国切符をプレゼントした。
指揮官からの肩車を「恥ずかしかったです」と振り返った柴田は素直に仲間や佐藤監督らへの感謝を口にした。「特に3年生のやつらには感謝しなければいけない。一人ひとりのモチベーションも高いですし、オレが萎えるのは違うと。誰よりもポジティブに、前に、乗り切って行こうという思い、仲間のために早くピッチに戻って貢献したいという思いだけで治療を乗り越えてきた」。
同級生たちは昨秋、抗がん剤治療に臨む柴田のために全員が丸刈りになってお見舞いに行くというサプライズ。家族やチームメートをはじめ、コーチングスタッフ、医師ら多くの支えを柴田は実感していた。横浜FMプライマリー出身の柴田のために、恩師の西谷冬樹監督(現横浜FMユース監督)やFW齋藤学、現磐田のMF中村俊輔も柴田の激励に駆けつけてくれたこともあったのだという。それらをエネルギーとしてチームに戻ってきた柴田はこの日、全国出場という大きなプレゼントを受け取った。
「プロを諦めている訳じゃない。恩返しするならばサッカーしかないと思っている」。復帰への道は簡単ではないはず。それでも、抗がん剤治療を終えた柴田は少しずつできることを増やしているのだという。7月末開幕の全国総体のピッチに立つことはまだ難しいようだが、本人は9月の復帰(試合に出ること!)に向けて、競争を勝ち抜くことを目指している。
イレブンもその姿をまたエネルギーとして、より強いチームを作り上げていく意気込み。安松は「全国出たからには初戦で負けてそれで終わりというつもりはないし、日本一へ向けてここから気を引き締めてやっていきたいです」。特別な個がいるわけではない。それでも、佐藤監督が「厳しい戦いになるのは分かっていた」と振り返った戦いを全員で乗り越えた日大藤沢。全国の戦いでも絶対に諦めず、力を出し切って白星を掴む。
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017
17日、平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技への出場2枠を懸けた神奈川県予選は準決勝を行い、座間高対日大藤沢高戦は交代出場のFWギブソン・マーロン・マサオ(3年)の決勝ゴールによって日大藤沢が1-0で勝った。日大藤沢は2年ぶりとなる全国総体出場が決定。18日の決勝で第1代表の座を懸けて東海大相模高と戦う。
「全国3位の時よりも嬉しい」。日大藤沢の佐藤輝勝監督は選手たちに感謝すると、目に涙を浮かべたままチームジャージを着た1人の生徒、MF柴田晋太朗(3年)を肩車して選手、マネージャー、スタンドの控え部員たちと喜びを分かち合っていた。
U-17神奈川県選抜のキャプテンも努めていた注目MF柴田は昨年9月、右肩部の耐えきれない痛みの原因が骨に発生するガン、骨肉腫であることが判明。今年のチームの主力として期待されていたレフティーは、それから今年5月までかけて大変な抗がん剤治療を乗り越えてチームに戻ってきた。
病と戦う仲間の姿を知っているからこそ、日大藤沢イレブンは本気で戦ってきた。4月の関東大会予選で優勝を逃すと、選手たちは指導スタッフにトレーニングの強度をよりハードにすることを直訴。「こんなに3年生が頑張ってくれて、1、2年生は抜けないですよ」。何としても今年は全国へ行く、という思いを持ってきた佐藤監督も認める3年生たちの努力、そして強い思いがこの日実った。
日大藤沢のCB安松元気主将(3年)は「本当に一番つらかったのはアイツだと思っていたので、それで自分たちにできることは何かという時に晋太朗を全国に連れて行かなきゃという思いで、そこに3年生だけでなくて1、2年生も乗っかってきてくれて、ピッチの中もそうですし、大きな声を出して応援してくれていた。晋太朗のために全国の切符を届けられたのは良かった」と胸を張った。
仲間のために戦った神奈川県予選、そしてこの日の代表決定戦。試合は簡単なゲームではなかった。立ち上がり、日大藤沢が個の迫力ある仕掛けでプッシュするが、座間は粘り強い守りで対応。その後、ゲームは落ち着いて互いに良い距離感の中でボールを動かし合う展開となった。
前半により決定的なシーンを作っていた日大藤沢が後半も主導権を握って攻める。FW柏木純(3年)やFW桐蒼太(3年)のグイグイ前に行くドリブルやDFラインの背後を狙ったロングボールが相手DFに圧力をかけていく。対する座間は守備範囲広いGK荒井啓吾(3年)が良くカバー。またMF和田悠汰主将(3年)やCB白瀧優(3年)、CB高橋雅也(3年)がゴール前で良く粘ってシュートを打たせない。逆に奪ったボールを和田中心に動かし、MF村井建斗(3年)のテンポの違う仕掛けやFW青木奏太(3年)のスピードを活かして攻め返した。
だが、2試合連続無失点の日大藤沢も前線からのハードワークで相手の攻撃を限定すると、最終ラインの安松やCB竹繁颯音(3年)が相手を危険なゾーンまで攻め込ませない。拮抗した展開となった代表決定戦は、桐や柏木の仕掛けでジャブを打ち続け、さらに後半29分のギブソン・マーロン投入で1点をもぎ取りに行った日大藤沢に歓喜の瞬間が訪れる。
後半33分、日大藤沢は右サイド後方のSB櫻井風我(2年)がDFラインとGKの間に縦パスを入れる。これを座間守備陣が処理ミス。ゴール方向へ流れたボールにいち早く反応したギブソン・マーロンが右足で決勝点となる一撃を押し込んだ。
先制した日大藤沢は終盤、ギブソン・マーロンや同じく交代出場のFW三田野慧(3年)が前線で非常に献身的に走り回り、後方の選手たちも身体を張ってサポート。「(関東大会予選までは)際のところが足りなかった」(佐藤監督)というチームは逆にそれを武器とするチームに変わっていた。指揮官も讃えた80分間の頑張り。最後まで走り抜き、戦う勇気をくれたチームメート・柴田に全国切符をプレゼントした。
指揮官からの肩車を「恥ずかしかったです」と振り返った柴田は素直に仲間や佐藤監督らへの感謝を口にした。「特に3年生のやつらには感謝しなければいけない。一人ひとりのモチベーションも高いですし、オレが萎えるのは違うと。誰よりもポジティブに、前に、乗り切って行こうという思い、仲間のために早くピッチに戻って貢献したいという思いだけで治療を乗り越えてきた」。
同級生たちは昨秋、抗がん剤治療に臨む柴田のために全員が丸刈りになってお見舞いに行くというサプライズ。家族やチームメートをはじめ、コーチングスタッフ、医師ら多くの支えを柴田は実感していた。横浜FMプライマリー出身の柴田のために、恩師の西谷冬樹監督(現横浜FMユース監督)やFW齋藤学、現磐田のMF中村俊輔も柴田の激励に駆けつけてくれたこともあったのだという。それらをエネルギーとしてチームに戻ってきた柴田はこの日、全国出場という大きなプレゼントを受け取った。
「プロを諦めている訳じゃない。恩返しするならばサッカーしかないと思っている」。復帰への道は簡単ではないはず。それでも、抗がん剤治療を終えた柴田は少しずつできることを増やしているのだという。7月末開幕の全国総体のピッチに立つことはまだ難しいようだが、本人は9月の復帰(試合に出ること!)に向けて、競争を勝ち抜くことを目指している。
イレブンもその姿をまたエネルギーとして、より強いチームを作り上げていく意気込み。安松は「全国出たからには初戦で負けてそれで終わりというつもりはないし、日本一へ向けてここから気を引き締めてやっていきたいです」。特別な個がいるわけではない。それでも、佐藤監督が「厳しい戦いになるのは分かっていた」と振り返った戦いを全員で乗り越えた日大藤沢。全国の戦いでも絶対に諦めず、力を出し切って白星を掴む。
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017