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山梨学院、「完全に格上」の市船を堅守速攻で沈める

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V候補の市立船橋高撃破。勝利を喜ぶ山梨学院高イレブン

[8.8 総体2回戦 市立船橋高 0-1 山梨学院高 上野]

 8日、夏の高校サッカー日本一を争う平成30年度全国高校総体「2018彩る感動 東海総体」(インターハイ)サッカー競技(三重)は2回戦を行い、山梨学院高(山梨)が市立船橋高(千葉2)を1-0と撃破。3回戦へと駒を進めた。

「一人ひとりが強いし、速いし、うまい。かなう相手じゃないんです」

 山梨学院・安部一雄監督はそう言って笑う。単純な真っ向勝負となると分が悪いという分析をした上で、相手のキーマンと観た「10番の子」井上怜(3年)にマンツーマンディフェンスを貼り付ける作戦を敢行。本来は右SBのDF市川大葵(3年)をボランチの位置に上げて、“井上番”に据えた。その上で守備は中を締めて、クロスをある程度上げられることは許容する対応をしつつ、同時にカウンター攻撃に活路を見出すプランを採用した。

 序盤は市船が開始1分に井上が決定的シュートを放つなど優位に進める流れとなったが、山梨学院が徐々に守備のリズムを掴んでいくことに。「(市船は)完全に格上なので」と語るエースFW宮崎純真(3年)を含めた全員がチャレンジャー精神をもってまず守備から入る意識を徹底。隠忍自重を強いられる時間があっても、チャンスを待った。

 迎えた23分、ロングボールを前線で宮崎が巧みに収め、ドリブルでエリア内へとトライ。最後のクロスは相手DFに当たったが、そのこぼれ球に反応したのは、それまで井上のマーク役に徹していた市川。「ああいう場面を判断できる頭の良い選手」という安部監督の言葉どおり、絶妙な攻撃参加から「決めなきゃやばいシュート」を落ち着いて押し込み、見事に先制点を奪い取った。

「先制点を奪われるとああなるしかない」と市立船橋・朝岡隆蔵監督が肩を落としたように、こうなると試合は山梨学院のペース。守りを固めながら、宮崎という一人でもボールを運んでいけるFWの個性を活かしつつ、理想の展開に持ち込んだ。

 後半、市立船橋は井上のポジションを下げるなどの戦術的なアレンジを加えつつ、相手ゴールへ迫り続ける。クーリングブレイク明けからはワイドに選手を張らせる形から何度も相手ゴールに迫るシーンを作ったが、山梨学院も大石悠介(3年)、西澤俊主将(3年)のCBコンビを軸に粘り強くこれに対応。ゴール前は迫力ある肉弾戦の連続となったが、最後まで体を張って守り続けた。

 負傷による中断もあって長いアディショナルタイムとなったが、最後まで山梨学院の牙城は崩れず。タイムアップのホイッスルが鳴り響き、優勝候補と目された市立船橋を下した山梨学院が16強へ名乗りをあげた。

 敗れた市立船橋・朝岡監督は「技術偏重、頭でっかちの指導になり過ぎていたのかもしれない。勝つために必要なものが出てこなかった」と肩を落とし、「走る、戦うといった根本的な部分が感じられなかった。出直してきます」と言って冬のリベンジを誓い、会場を後にした。

(取材・文 川端暁彦)
●【特設】高校総体2018

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