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複数のJクラブが注目する10番MF鈴木唯人、市船も変えつつあるエースの変化

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11対11のゲームでゴールを決める市立船橋高MF鈴木唯人

 エースが変化し、市立船橋高を変化させてきている。今年、名門の10番を背負うMF鈴木唯人(3年)は日本高校選抜やU-18日本代表に選出されている万能型アタッカー。市立船橋のトレーニングでも一際目立つプレーをしている鈴木は、J1、J2の複数クラブが獲得に乗り出している注目株だ。

 だが、これまでは明らかに足りないものがあった。4月の日本高校選抜欧州遠征では自身2度目の海外遠征だったこともあって油断。自分で気持ちのスイッチを入れることができず、フワッと入ってしまう。それが影響して活躍しだしたのは、遠征の後半になってから。チームはデュッセルドルフ国際ユース大会で10チーム中6位に終わり、ゴールという結果も残せなかった鈴木は悔しさを滲ませていた。

 ただし、得たものがある。それが鈴木を「変える」きっかけになった。彼は欧州で選手権優勝校の青森山田高の選手たちと自分の「本気度」の違いを痛感。自身、チームの日頃を変えなければならないと感じた。そして、自分からスイッチを入れて日々の練習に取り組むこと。その姿勢の変化は市立船橋のチームメート、コーチ陣にも伝わるほどだったようだ。

「自分が先頭に立って声とか出すタイプではないですけれども、自分が先頭に立ってひたすら守備で追いかけたりとか、『俺がやっているんだから』と思わせるくらいまでやってやろうと思って。少しずつ認められたというか、(監督の)波多さんからも『変わったな』くらいに言われたので、これからも続けていきたい。全国を獲った山田の本気さを知ったから、その部分でもっと練習から強度を上げていかないといけない。だいぶ(市船の)練習の強度も、雰囲気も上がってきたと思います」

 負傷離脱していたMF町田雄亮主将(3年)も鈴木の前向きな姿勢に感謝していた。その鈴木は帰国から1か月経った現在も、変わらずにエネルギッシュなプレーを続けている。今月23日のトレーニングでは後半残り10分間、片方のチームが1点リードしている状況を想定して11対11のゲームを実施。ビハインドの状況の10分間も、リードしている状況での10分間も唯一のゴールを決めたのは鈴木だった。狙いすましたインターセプトや長い距離を走ってのディフェンスでボールを奪い、試合を決めるような仕事も。ただし、本人は満足していない。

 一週間ほど前に行われた大学生との練習試合で波多秀吾監督から「オマエの良さは何だ」と指摘されたという。確かに自分からスイッチを入れて、以前よりも守備をするようになった。自分がボールを奪いに行くことでチームも勢いづいていたため、それに意識が傾きすぎていたかもしれない。だが、彼の最大の強みはギャップを鋭く突くドリブルや巧みなボールキープから繰り出すラストパス、そしてシュート。「攻撃のところでももっとプラスでやっていかないといけない」。攻撃面でも結果を出すことを求めて、インターハイ予選など今後の試合に向かっていく。

 高校選抜では青森山田のMF武田英寿(3年)、尚志高のFW染野唯月(3年)とともにプレー。プレミアリーグEASTでも戦う彼らはインターハイで日本一を獲得するためのライバルになる。全国大会での実績、知名度で上回る彼らを相手に、「自分が点獲って勝って自分の方が上だとこれから思わせたい」と鈴木。彼らと遜色のない力があるだけに、それを示す1年にすることも目標だ。そして、進路にも注目だが、まずはチームとしての結果が第一。そのために、自分が先頭に立ってやるだけだ。

「市船を昔の市船に戻すということを自分の中で置いている。3年前の杉岡(大暉)さんたちの代くらいに戻すためにも、日頃から強度とかを上げていかないといけないと思うので、そういうところからやっていきたい」。インターハイこそ6年連続出場中だが、選手権は2年連続で予選敗退している。今回のインターハイ予選も選手兼予選も、そして全国大会でも負けるわけにはいかない。練習からやるべきことをやり続けて、「変化」した10番が市船を勝たせる。 

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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