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“公立の雄”大津は注目世代の次世代も強さ発揮中。チームとしてまとまり、勝ち方学んで2連覇:熊本

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大津高が熊本2連覇、次は悲願の全国制覇に挑戦

[6.5 インターハイ熊本県予選決勝 大津高 1-0 熊本学園大付高 熊本県民総合運動公園陸上競技場]

 注目世代の次世代がまとまりと強さを示し、2連覇――。5日、令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)熊本県予選決勝が行われ、昨年全国8強の大津高が1-0で熊本学園大付高に勝利。2年連続20回目の全国大会出場を決めた。

 昨年の大津はCB福島隼斗(現湘南)やいずれもU-18日本代表に選出されたCB吉村仁志(現流通経済大)とMF水野雄太(現早稲田大)ら錚々たるメンバー。下級生時から先発のほぼ全てを占めていた注目世代は、熊本3冠やインターハイ8強、プレミアリーグ昇格という結果を残して卒業した。代が入れ替わり、当初は不安視もされていた今年の大津だが、高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグWESTで4勝1分1敗、堂々の2位につけている。

 平岡和徳総監督は「(あの代の)スパーリングパートナーとして、日常からバチバチやっていた影響はあると思いますよ」と分析していたが、強力世代の下で力を磨いてきた世代が今、まとまりの良さや強さを発揮している。

 前日の準決勝を7ゴールで突破した大津はこの日の前半、技巧派MF佐藤悠平(3年)とMF藤井瑛斗(2年)が1タッチを交えて細かくパスを繋ぎ、サイドへ配球。そこから10番MF濃野公人主将(3年)とMF樋口堅大(3年)の両翼が、正確なボールタッチと緩急を活かしたドリブル突破を試みる。また、プレミアリーグ登録外から台頭中の左SB鵜木晴志(3年)が、時間の経過とともに推進力のある攻め上がりを増加。そして、こぼれ球をFW半代将都(2年)や佐藤がシュートへ持ち込み、相手ゴールを脅かした。

 対して、延長戦となった準決勝を突破し、6年ぶりの決勝進出を果たした熊本学園大付は、決勝常連の大津に負けないスタンドの盛り上がり。その中で、まずは守備と相手の背後を狙う攻撃を意識して試合を進める。左SB中井研太主将(3年)が出足の速い守備でサイドに蓋をしていたほか、中盤のプレスバックも徹底されるなど連動した守りで大津の攻撃を凌いでいた。

 そして、10番MF森山湧馬(3年)が左足キック一発で局面を変える。だが、大津が前半29分にセットプレーで先制した。濃野が中盤左サイドで獲得したFKを佐藤が右足で蹴り込む。これをファーサイドの半代が頭で右隅を破り、均衡を崩した。さらに追加点を狙う大津は、FW宮原愛輝(2年)がカットインから右足ミドル。だが、熊本学園大付GK坂崎俊哉(3年)にわずかに触られたボールはクロスバーをヒットしてしまう。

 1点ビハインドで前半を終えた熊本学園大付は後半立ち上がり、MF秋口優斗(2年)が前を向いてボールに絡むなど本来のショートパスを繋ぐ形にチャレンジ。大津の寄せよりも速く、正確にボールを動かした熊本学園大付は連続でラストパスにまで持ち込んだ。

 だが、その精度を欠いてゴールに結びつけることができない。この後は、普段からプレミアリーグでJクラブユース勢のパスワークに対抗している大津が、前線からの連動したプレッシングで相手を狭い局面に追い込み、インターセプト。対人での強さを見せるCB立野航海(3年)をはじめ、藤井、CB金子遼太郎(2年)、右SB本多陸也(2年)がシュートチャンスを作らせない。

 ゴール前に入ってきたボールも高い安定感を見せるGK福山翔紀(3年)が難なくキャッチ。そして、攻撃面では鵜木の力強い攻め上がりや細かなパスワークから濃野の放ったシュートなどで2点目を狙う。熊本学園大付は終盤もハードワークを継続していたが、個々の技術力高い大津は不要なボールロストがほとんどなく、相手に十分な攻撃機会を与えなかった。熊本学園大付は33分にFW廣瀬蒼馬(3年)がタメをつくり、森山が左足でフィニッシュ。だが、この日のシュートは森山の枠外シュート1本に終わった。

 1-0で2連覇を達成した大津の濃野は「(自分たちが)期待されていないと言ったらおかしいですけれども、あれだけ注目されていた先輩たちと自分たちも練習中、五分五分でやっていたので、自分たちも力が無いことは無いと思う。自分たちの力を信じてやっている。その結果がついて来ているかなと思います」。そして、古閑健士監督は「プレミアリーグの経験が大きいかなと思います。ディフェンスで必ずボールを持つ人のところへ行ったり、チームとしてやることがはっきりしている。(自分たちがこう戦えば結果が出るという)自信に繋がった。(チームに)一体感がありますね」と頷いた。

 大津は今大会、宿舎に戻るたびに濃野を中心に話し合いを重ね、次の試合では課題を改善。飛び抜けた個がいる訳ではない今年だが、まとまりと向上心、そしてプレミアリーグという環境がチームの強さの源になっている。濃野は今後へ向けて「まずはすぐに九州大会があるので、そこに向けて九州ひとつ取ること。これまでの先輩、OBの方たちも全国制覇を期待されていると思うので、その人たちの思いも胸にしっかり全国制覇を成し遂げたいと思います」と誓った。今年、評価を覆してきた世代の“公立の雄”が沖縄で悲願の全国制覇に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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