beacon

豪雨のち快晴…西京が壮絶なピッチ状態での乱戦を制す

このエントリーをはてなブックマークに追加

豪雨の影響でピッチ状態は最悪だった…(写真協力=高校サッカー年鑑)

[7.26 総体1回戦 香川西1-3西京 黄金森公園陸]

 令和元年度全国高校総体「感動は無限大 南部九州総体2019」(インターハイ)サッカー競技(沖縄)1回戦。黄金森公園陸上競技場での第2試合は、四国学院大香川西高(香川)と西京高(山口)が豪雨が続く中で対戦。ぬかるむピッチ状態で推進力を持ち続けた西京が3-1で勝利した。西京は27日、西原町民陸上競技場第2試合で日章学園高(宮崎)と2回戦を戦う。

 試合前から降っていた雨が勢いを増し続け、ピッチにみるみる水が浮かび、その面積が広がっていく。ボールは水たまりで止まったかと思うとスリッピーにもなる。ボールを追いかける選手たちは濡れた芝に足を取られ、試合は前半から壮絶な模様になった。

 互いにボールを繋ぐことを意識したチーム。しかし、このようなピッチ状態ではパスもままならない。戦い方を先に変えたのは西京の方だった。田邊宏司監督は言う。

「難しいことをせずにワンタッチでDF背後を狙うように。そこでたまたまいいキックがいった。ラッキーでしたね。運よくボールがゴールに向かっていった方が勝った。かわいそうな試合でした」

 前半5分、香川西サイドに蹴られたボール。追っていたDFが足を滑らせた隙に西京FW水津彰太(3年)がボールをさらい、最小限のドリブルからシュート。これが決まり先制に成功した。

 ボールが思ったように転がらないピッチでは、ショートパスを多用すればするほどミスの可能性が高まる。浮き球をいかに有効に使うか、あとはセットプレーからいかに得点を狙うかがポイントに思われた。それを実践してみせたのが香川西だ。

 前半26分、右CKをMF箱崎達也(2年)がファーに蹴ると、MF熊野敬二郎(2年)が頭で折り返し、最後はFW山内拓海(3年)がサイドネットへきれいにコントロールしたヘディングシュートを決めて同点とした。

 しかし、シンプルにボールをDF背後へ蹴り出し、クリアされたボールが止まったところをまた背後へ蹴り出すことを繰り返す西京の圧力は衰えない。前半30分、さらに雨がひどくなる中、DF原田廉(3年)のFKが直接決まって勝ち越し。アディショナルタイムにもゴール前でクリアしたボールがぬかるみにはまったところをMF西谷嵩冴(3年)が奪ってシュートを決め、3-1とした。

 後半は一転して快晴に。ピッチはぬかるんだまま気温は上がるという、さらに難しいコンディションの中、選手たちは密集戦を戦い切ったがスコアは動かず、3-1のまま西京が勝利した。

 香川西の大浦恭敬監督によれば、西京とはよく練習試合をする間柄。その時の分は香川西の方にあるという。しかし、大事な全国の舞台の対戦では敗れてしまった。

「難しいピッチコンディションの中、イージーミスが出てしまいました。1失点目はうちのCBが転んでしてしまった。2点目も密集での競り合いの中で仕方がないとはいえ、くだらないファウルを与えてしまった。3点目もGKのファンブルから。西京は球際に粘りがありました。だから球際でもファーストタッチでかわせなかった。後半、ピッチが悪いので相手の嫌がること、CBの背後へボールを入れることを約束事として送り出したのですが、どこかでつなごうとしてしていました。勝負に対する執着心は西京の方がありましたね」

 せっかく勝ち進んだ全国の舞台で自分たちのスタイルにふたをするのは難しい。信じて積み上げてきたものを、一時的にとはいえ放棄することになるからだ。だが、それをしてでも勝ちたいと思うかどうか…。この試合では西京の方が勝利のために気持ちを割り切れていた。勝敗の綾はそこにあった。

(取材・文 伊藤亮)
●【特設】高校総体2019
★夏季インターハイ全試合配信!試合動画はこちら

TOP