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1年前の悪夢、そして5失点から目標持って成長…桐光学園の172cmGK北村がMVP級の活躍で得た自信と評価

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後半25分、桐光学園高GK北村公平がビッグセーブ。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.1 総体決勝 富山一高 0-1 桐光学園高 金武町フットボールセンター]

 また、止めた。0-0で迎えた後半25分、富山一高は右ロングスローの流れからボールを繋ぎ、最後は準決勝で決勝点のMF小森登生(3年)が、DFを外して左足を振り抜く。富山一にとって、この試合最大と言える決定機だったが、桐光学園高は前への動きで小森との距離を詰めたGK北村公平(2年)がビッグセーブ。今回のインターハイで、毎試合のようにチームを救う活躍を見せていた2年生守護神が、桐光学園に初の全国タイトルをもたらした。

 北村は「ゼロで終えるということを今大会こだわっていましたし、あそこで失点していたら負けていたかもしれない。防げて良かったと思います」。身長172cmの北村はGKとして決して大柄ではない。対する富山一は多彩なセットプレーを特長としており、2年生守護神には判断力と注意力が求められた。だが、後半9分のトリッキーなFK含めてほぼ完璧に対応。今大会4試合目となる完封勝利で日本一に輝いた。

「今日もゼロで本当に気持ち良いです。この試合だけじゃなくて、今大会通して5試合で1失点。守備の堅さというのもこの優勝に繋がっているのかなと思いますし、個人的にも手応えのあるセーブとかありましたし、何かを掴めた大会だったと思います」

 確信している訳ではないというが、掴めたと感じているものの一つが自信だ。昨年のインターハイで1年生守護神だった北村はチームの決勝進出に貢献。だが、試合終了間際の“悪夢の”失点から逆転負けを喫した。その後のプリンスリーグ関東でも結果が出ず、選手権は予選こそ突破したが、全国大会の1回戦(対大津高)で北村は5失点している。

 5失点の中には、ハイボールの判断を誤るイージーミスもあった。「大津戦が終わった後は、切り替えてやろうと思ったけれど1、2か月は何も考えられなかった」。夏のインターハイで得た自信は確かなものではなかった、と突きつけられた。

 だが、諦めずに意欲を持ってトレーニングを続けてきた。今春に就任した峯達也GKコーチの下で「自分の武器を一個作ろう」と取り組んできたキックは、恩師に比べるとまだまだ。ただし、目標を持って取り組む日々の中で、一つ一つの力が向上した。常に80点以上のパフォーマンスをする力、ここぞの場面での勝負強さなどは逆に峯GKコーチに「学ぶことがある」と影響を与えるほど。そして、「一歩成長するためには優勝という結果で示すしか無いと」こだわって戦った彼は、3度目の全国舞台で主役級の活躍をしてのけた。

 桐光学園OBでもある峯GKコーチは10年の沖縄インターハイに出場し、ベスト4。だが、静岡学園高や筑陽学園高という強豪校を完封しながら、大会優秀選手には選ばれなかった。その教え子は「選ばれて欲しいですね」という期待に応えて優秀選手選出。177cmの峯GKコーチを5cm下回る172cmの小柄な守護神は、失敗や悔しい思いを糧に成長を遂げて全国舞台で評価されるGKになった。夏の日本一、大会優秀選手を獲得した後も変わらずに、目標へ向かって進化を続ける。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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