[5.29 インターハイ三重県予選準決勝 海星高 2-0 四日市工高 鈴鹿]

　選手権の全国大会で味わった初戦敗退の悔しさは、今年のチームにも脈々と受け継がれている。キャプテンを任されているGK栗村真尋(3年)は力強く言い切った。「今年はまず全国大会に出場してからが本番だと考えていますし、それを目指すというのはチームにも言い続けているので、それは全員が思っています」。29日、インターハイ三重県準決勝、6大会ぶりに夏の全国を手繰り寄せたい海星高と、四日市工高のゲームは、2-0で海星が勝ち切って、晴れ舞台へ王手を懸けている。

　いきなりのチャンスは2分の海星。自陣から「キックには自信があります」というGKの栗村が蹴ったFKはぐんぐん伸びて、何とワンバウンドでクロスバーを直撃。強烈な一発を見舞うと、先にスコアを動かしたのもセットプレーから。

　10分。右サイドで得たCK。レフティのキッカーFW新田夕晟(3年)が正確なボールをファーサイドへ届け、「もともとヘディングは得意です」と話すCB澤田大翔(3年)がドンピシャのタイミングで叩いたヘディングが豪快にゴールネットを揺らす。「ゴールシーンは自分が決めるという想いで打ったシュートだったので、決まって良かったです。もうバッチリでした」と笑った15番の先制弾。海星が1点をリードする。

　以降も攻勢は海星。16分にはMF北出匡(2年)のパスから、MF宇田大輝(3年)が狙ったミドルは枠を越えるも好トライ。20分にも再び栗村がFKを蹴り込み、こぼれに反応した澤田のシュートは枠外も、あわや自身2点目というシーンを。27分にもルーズボールを拾ったFW野原弘誠(3年)が、そのままドリブルシュートを枠の左へ。「攻撃も全然まだまだで、セットプレーぐらいですから」とは青柳隆監督だが、積極的に追加点を狙う。

　一方の四日市工も、最終ラインからきっちり繋ぐ意識の中で、10番を背負うキャプテンのMF吉中研人(3年)の配球から、2トップのFW佐藤真希人(3年)とFW大野颯汰(2年)を使った攻撃は徐々に機能。33分にはMF加藤晴人(2年)の右CKから、DF白川龍河(3年)はシュートを打ち切れず。35+1分にもMF伊藤吉平(3年)の右クロスに、佐藤が合わせたヘディングは栗村にキャッチされたものの、悪くないフィニッシュを取り切って、後半へ折り返す。

　だが、ハーフタイムを挟んでも大きな流れは海星。後半5分にカウンターから中央を単騎で運んだDF戸田晴喜(3年)が枠へ収めたシュートは、四日市工のGK岡山海人(3年)がファインセーブで防ぐも、一瞬で突き付ける失点への脅威。10分には本人こそ「アレはミスキックでした」と振り返ったが、またも栗村のFKがクロスバーにヒット。勢いが増していく。

　1点を追う四日市工も、FW岩田拓駿(3年)、MF中村優人(2年)と攻撃的なカードを切っていくものの、決定的なシーンまでは至らず。MF下中陵斗(3年)のシュートも枠を捉え切れずに、時間ばかりが経過してしまう。

　すると、後半アディショナルタイムに生まれたのはダメ押しゴール。35+3分。カウンターから野原がラストパスを送ると。その1分前にクローザーとしてピッチに送り込まれたばかりのMF小村駿(3年)はGKとの1対1を冷静に制し、ゴールネットへボールを送り届ける。終わってみれば2-0。「前半の最後の方に集中が少し切れかけていて、危ないシーンも何本かあったので、後半はもう1回締め直そうということでやりました」という栗村を中心に、守備陣も完封で終えた海星が、ファイナルへの切符を獲得した。

「向こうの方が上手い子がいるので、ボールが落ち着かなかったですね。『失点ゼロやったら負けないぞ』というぐらいの感じですかね」と青柳監督は終始謙遜する姿勢を崩さなかったが、海星の攻守にバランスの取れたチーム力は、この段階でも十分に際立っている。

「去年はパスサッカーをモットーにしてやっていたんですけど、自分たちはパスサッカーも踏まえつつ、裏への抜け出しとか、ロングパスも使っていく形で、セットプレーがチームの強みなので、そこを生かしていきたいです」とは澤田。確かにいろいろな形でのアタックを兼ね備え、実際にセットプレーとカウンターから2ゴールを奪うなど、1つの形に囚われない戦い方も兼ね備えているようにも見えた。

　決勝への意気込みを問われた澤田は、「チームとしても自分としても全国で1勝することを掲げている中で、まだそれが海星は成し遂げられていないので、その1勝を目標に頑張りたいです」ときっぱり。フォア・ザ・チームの精神で結集するブルースピリッツ。海星の全国切符を堂々と奪いに行く準備は、整っている。

(取材・文　土屋雅史)

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