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上手さに加えて身につけたタフさ。神戸弘陵が3試合連続の延長戦を制して兵庫決勝へ

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延長前半2分、神戸弘陵高はCB木津周馬が先制ヘッド

[6.3 インターハイ兵庫県予選準決勝 神戸弘陵高 2-0(延長)神戸星城高 アスパ五色メインG]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技兵庫県予選準決勝が3日に行われた。神戸弘陵高神戸星城高との一戦は、延長戦に2得点を挙げた神戸弘陵が2-0で勝利。神戸弘陵は5日の決勝で三田学園高と戦う。

 神戸弘陵は3試合連続の延長戦。70分間で勝利することはできなかったが、後半勝負でギアを上げ、「代わった選手が今年は活躍してくれるので延長戦になれば分があるかなと」(谷純一監督)という延長戦で好チーム・神戸星城を振り切った。

 3大会ぶり4度目の優勝を狙う神戸弘陵は4-2-3-1システム。GKが小野兼輝(3年)で右SB木下颯(3年)、CB木津周馬(3年)、CB岡未來(2年)、左SB大橋聖音(3年)、ダブルボランチが吉川海(3年)と谷倫太朗(3年)、右SH村井陸斗主将(3年)、左SH酒井春輝(3年)、前線はシャドー気味に構える中地奎人(3年)と馬場悠平(2年)がコンビを組んだ。

 一方、近年台頭中の神戸星城はプリンスリーグ関西1部の報徳学園高や選手権予選準優勝の相生学院高などを破って4強入り。4-1-4-1システムのGKは{宇治大輝}}(2年)、右SB大西陸人(3年)、CB野本健太(3年)、CB数元翔葵(2年)、左SB壷阪拓矢(3年)、アンカーの位置に宮本真都(3年)、インサイドに菊川昂成(3年)と岡田大樹主将(3年)、右SH安原修哉(3年)、左SH福井颯太(2年)、そして最前線に西田光貴(3年)が構えた。

 序盤はともに一つ一つの守備、攻撃のところからキチキチとスタート。互いにバランスを崩さず、ジャブを打ち合うような展開だった。その中で神戸弘陵は、谷監督の息子であるMF谷の強烈なシュートや、突破口になっていた酒井の仕掛けで相手ゴールへ。ポゼッションから相手の背後を狙った攻撃も見せる。

 一方の神戸星城は飲水頃からボール保持の時間を増やす。この日中盤で存在感ある動きを見せていた宮本やDFラインから左右へボールを動かして相手に揺さぶりを掛け、侵入を試みる。30分にはサイドチェンジから右の大西が後方へ落とし、ギャップへ潜り込んだ岡田が左足を振り抜いた。

 後半立ち上がりは神戸星城にビッグチャンス。スピード、また味方との連係を活かしてグイグイと攻め上がる大西が3分、4分に連続で右クロスを上げ切る。そして、西田の右足ダイレクトボレー、菊川のヘッドが神戸弘陵ゴールを襲った。

一方、「後半はプレス上げたり、ライン高くすることでミドルサード、アタッキングサードに入る形が増えた」(谷監督)神戸弘陵も18分、馬場が素晴らしいトラップからDF前へ潜り込んで決定的な左足シュート。だが、神戸星城GK宇治がファインセーブで阻止する。神戸星城も安原、大西の仕掛けからゴール前のシーンを作り出すが、神戸弘陵は吉川やGK小野が身体を張った守備を見せて得点を許さない。

 神戸星城の柏木佑介監督は「後半は彼らの頭の中が整理されて、だいぶリズムが良かった。あの時間帯に点が取れていたら良かったです」と振り返る。相手の4バックが守備重視に構える中、後半は立ち位置を修正して攻撃を好転させ、70分間で仕留めに行った。

 神戸弘陵は22分に酒井をFW北藤朔(2年)へ入れ替え、神戸星城も27分に西田をとFW東慎(2年)を交代。直後に神戸星城FW岡田の右足シュートが左ポストをかすめる。終盤はややオープンな展開に。そして迎えた29分、神戸弘陵FW馬場が右中間でのボールキープから反転したところでファウルを受けてPK獲得する。だが、キッカーの木津が放った右足シュートはクロスバーをヒット。好守を見せていたGK宇治が吼えるように喜びを表現していた。

 神戸弘陵はアディショナルタイムに吉川とMF 谷口由弥(3年)をチェンジ。延長前半開始から馬場、中地に代えてMF中野星南(3年)とFW谷内口力希斗(3年)をピッチへ送り出す。前後半計20分間の延長戦。神戸弘陵が体力面、選手層で差を生み出した。

 延長前半2分、神戸弘陵はロングボールを谷内口が懸命に追って右CKを獲得する。これを大橋が左足で蹴り込むと、ニアへ飛び込んだ木津がヘディングシュート。これがゴールを破り、神戸弘陵が待望の1点を奪った。

 神戸星城は同5分、福井とMF 猪坂蒼太(3年)を交代。直後には東のラストパスに走り込んだSB大西が右足を振り抜くが、GK小野が立ちはだかる。また、神戸弘陵の守りはDFリーダーの木津と高打点ヘッドなど能力の高さを見せていた岡の両CB中心に堅い。この後は相手にシュートを打たせなかった。

 神戸弘陵は延長後半開始から谷に代えてMF大井孝輔(2年)をピッチへ。神戸星城は同8分に壷阪とDF 古林颯斗(2年)を入れ替え、前線へ上げた野本へボールを集めて1点をもぎ取ろうとする。逆に9分、神戸弘陵はショートカウンターから決定的な2点目。右中間へ抜け出した谷内口が相手を引き付け、左でサポートした北藤へラストパスを通す。これを北藤が左足でゴールへ流し込むと、神戸弘陵ベンチは選手、スタッフともに大盛り上がりしていた。

 神戸弘陵の村井は「普段から走り込みや、兵庫県で一番強度の高い紅白戦を目指していて、試合がタフになるに連れて相手が落ちてきたところでギアを上げることができると思う」と説明する。中地や谷、木津ら攻守に力のある選手の揃い、技術力やポジショニングを軸に勝負する神戸弘陵だが、新チーム発足直後の新人戦神戸市大会準々決勝で敗戦。甘さを排除し、和衷協同の精神で一丸となって取り組んできたことによってタフで、粘り強いチームになってきている。

「僕たちは3点差の無失点で3冠と言っている」と村井。まだ、そのスコアを表現することはできていないが、優勝した新人戦県大会、今回のインターハイ予選と無失点を継続し、交代選手の活躍もあって決勝へ駒を進めた。自信を持つ走力、粘り強さも武器に全国切符を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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