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“7大会ぶり”の全国へあと一つ…東海大諏訪、ハードワークで掴んだ勝利

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東海大諏訪高が校名変更後、初の決勝進出

[6.4 インターハイ長野県予選準決勝 市立長野 1-1(PK4-5) 東海大諏訪 長野Uスタジアム]

 試合開始前、ロッカールームからは「最後までハードワークを貫こう!」という忽滑谷祐介監督の声が響いていた。結果として、この指揮官の言葉を選手たちが十二分に体現した東海大諏訪高が、決勝進出を掴み取った。

 準決勝まで勝ち上がった4チームの中で唯一の2部リーグ所属である東海大諏訪にとっては“格上”との戦いだ。そして、決勝を争う市立長野高は下から丁寧に繋ぎ崩してくる相手。主導権を持つことは難しい。そんな前提で東海大諏訪が志向したのは、相手に“持たせる”守備とPAに侵入させない堅い守備からのスピーディーな攻撃だ。

「相手はパスを繋ぎでくる。こちらはそれをさせないようにしっかり組織で守って点をとりにいくと。苦しくなるような時間帯はあったけど、最後はゴール、真ん中にくるので。周りを回させていても最終的に中をしっかり守れれば大丈夫だと思っていた」
(忽滑谷監督)

 市立長野はSBのDF若林愛斗とMF勝山壱生が積極的にボールを触って前へ展開する。特にホットスポットとなったのは右サイドで、SBのDF赤沼晃勇が幾度も東海大諏訪陣内へ侵入する。しかし、ボールを持ちながらもいわゆる決定機は作れない。シュートもエリア外からが多く、崩し切るのに苦心しているのは明らかだった。

 東海大諏訪は試合を通じて相手のスキを逃さない攻撃を展開。ボランチのMF藤森大夢とインサイドハーフのMF岡本圭佑が攻撃に転じた際は積極的に前へ飛び出てシュートを放ち、奪ったセットプレーでは左SBのDF泉田幹太が得意の左足でチャンスを作る。後半開始早々には相手DFのミスパスに反応し岡本がダイレクトで放ったシュートがポストを叩くシーンも。

 ただ、市立長野も上手く行かない場面が続いたわけではない。時間の経過とともに左サイドのMF金子太一のドリブル突破の成功数も上がり、赤沼が高い位置に入るシーンも増えていく。しかし、最後のところで東海大諏訪の壁を破れず、35分ハーフを消化し0-0で延長戦へ。


 均衡を破ったのは市立長野だった。延長前半8分、右サイドから流れてきたボールを中央で受けた途中出場のFW松下将がシュートを放ち、一度はブロックされるも再び反応して左足で鋭いシュートを右上隅に突き刺した。

 だが、これで試合は終わらない。東海大諏訪は延長後半1分、藤森が相手のボックス内に侵入しファウルを誘ってPKを奪い、これを自ら沈め同点とする。そのまま時計の針が進み、PK戦目前となったタイミングで東海大諏訪は控えGKの栗原陸を投入する。

 補足しておくと、彼は時折見る“PK要員”ではない。

「チームが始まったときから引っ張ってくれていて、常に声をかけ続けて締め役でいてくれた。身体は小さいけど心で熱く思うところがあって、任せたいと思った」

 忽滑谷監督のこの決断は奏功し、栗原は3人目をストップ。後攻の東海大諏訪は全員が成功した中、“決めれば勝利”の5人目が枠外で失敗も、市立長野の6人目も同じく枠外で失敗。その裏でFW竹田琉矢が成功し、東海大諏訪が決勝進出の切符を手にした。

 2014年に本大会出場を果たした際の名はまだ『東海大第三高校』だった。校名変更して以降は初めての決勝進出である。新たな名を全国へ知らしめるために、持ち味のハードワークで全国行きを掴み取りにいく。

(取材・文 竹中玲央奈)
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