beacon

決勝で「今年の売り」得点力を発揮。守備も収穫の富山一が3-0で日本一への挑戦権獲得

このエントリーをはてなブックマークに追加

富山一高が30回目のインハイへ

[6.4 インターハイ富山県予選決勝 富山一高 3-0 高岡一高 高岡スポーツコア]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技富山県予選決勝が4日に行われ、富山一高高岡一高が対戦。3-0で勝利した富山一が、2大会連続30回目の出場を手にした。

 大勝を続けてトーナメントを勝ち上がる例年との富山一とは違い、今年の準々決勝、準決勝は1-0での辛勝。内容も決して満足できないものだったが、迎えたこの日はMF稲垣禅太郎(3年)の先制点を皮切りに3ゴール。主将のMF多賀滉人(3年)が「今年の売り」と胸を張る得点力を示し、北海道行きのチケットを掴み取った。

 序盤は風の影響もあり、互いにロングボールが増加。落ち着かない試合展開となった。高岡一はGK坂井凌太(3年)のロングキックを1トップのFW絹野仁(3年)に当て、セカンドボールの回収から2次攻撃を狙ったが、富山一はDF岡田駿也(3年)と福光翔太(3年)のCBコンビを中心に落ち着いて対処。奪ってからは稲垣とMF川原瑠偉(3年)の両ウイングを起点にチャンスを伺ったが、相手に引っかかる場面が続いた。

 ただ、ベンチの焦りの色は見られない。「硬いゲーム運びになっていたけど、個人的には悪くないと思っていた。どこかの時間帯で子どもたちがトレーニングしてきたことを発揮しだすんだろうなと見ていた」と口にするのは、加納靖典監督だ。時間の経過と共に相手の状況を見て、選手たちが攻略法を見つけていく。「相手は5バックだったので、サイドバックに対しては守備に来ないと思っていた。だから、SBを中心に攻撃しようと思っていました」(多賀)。

 狙いはハマり、24分には左サイドでボールを持った川原のパスから、DF大居優汰(3年)が思い切りよく左サイドを駆け上がった。中に通したパスをFW放崎結生(3年)が上手く後方にスルーすると、反応したのは反対サイドからゴール前に入った稲垣。「俺らの武器は左サイドからの攻撃。プリンスリーグでも、今日みたいな形で点を獲ってきた。ボールが来ると思っていたので、合わせるだけでした」と冷静にゴールネットを揺らした。

 先制点によって緊張がほぐれた富山一は27分にもGK魚住秀真(3年)、川原と素早く繋いで、相手DFの背後に展開。抜け出したMF平田一葵(3年)が前に出たGKの脇を射抜き、2-0で前半を終えた。

 後半に入ってからは高岡一にシュートを打たれる場面が増えたが、「やられる気はしなかった」(稲垣)。後半14分にはショートCKから、DF朴木浩史朗(3年)にヘディングシュートを打たれたが、魚住が阻止。15分にCKからDF石田勇人(3年)に打たれたヘディングシュートもDFがクリアし、無失点を続けた。「シュートを打たれて危ないように見えても、実はGKとちゃんと連動して守れていたので、心配はしていなかった」(加納監督)。

 試合終盤に入ると、「誰を出しても良い働きをしてくれるから、交代で悩んでいない」という加納監督は交代枠をフル活用し、攻撃を再び活性化させた。35+4分にはMF松井凛空(3年)とのワンツーで右サイドを抜けたMF谷柊杜(3年)がクロス。ゴール前のMF羽根成千加(3年)が右足ボレーで叩き込んで勝負あり。3-0というスコアは全国に向けて、弾みとなったのは間違いない。

 4月に加納監督が就任した当初は守備の連動性やアグレッシブが足りなかったため、5バックから4-3-3にシステム変更。そこから積極的に奪いに行く意識を植え付けた上で、ブロック守備をトレーニングするなどチーム強化に励んできた。

 プリンスリーグでは毎試合得点を記録する一方、失点の多さで白星を逃してきたが、今大会の5試合はいずれも無失点で終えたのは一つの収穫だ。「全国では俺らがこんなにボールを保持する試合はあまりないと思うので、しっかり無失点に抑えてカウンターでしっかり点を決めていきたい」(稲垣)。

 これから絶対的なストライカーが出てくれば、勝利の可能性も高まっていくだろう。試合後、加納監督が「目標は日本一になること。もう1度競争して強くなっていきましょう」とスタンドで応援していたメンバーに声をかけたように新戦力の台頭も交えながら、全国に向けた準備を進めていく。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2023

TOP