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近大附はスタンドの光景、相手の喜ぶ姿を忘れない。攻守の力、修正力を磨き、選手権で優勝を喜ぶ

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前半34分、近大附高の右WB高畑宗希が左足ミドルを決めて先制

[6.10 インターハイ大阪府予選準決勝 近大附高 1-3 関西大一高 J-GREEN堺S1]

「修正する力がなかった」

 寺師悠斗監督就任1年目の近大附高は準々決勝で優勝候補の一角、興國高を2-0で撃破。3年連続で準決勝へ進出し、13年以来となるインターハイ出場をかけて関西大一高と対戦した。

 この日は、バス6台で駆けつけた同級生たちが大応援。DF若松大輔主将(3年)を中心とした堅守から前線でボールを収めるFW上田泰地(3年)や推進力のあるFW梅地隆世(3年)が相手にプレッシャーをかける。

 そして前半34分、PA付近でこぼれ球を拾った右WB高畑宗希(2年)が切り返しから、アウトにかけた素晴らしい左足ミドルをゴールへ突き刺す。スタンドも大興奮の先制点。ほぼ隙のない守りを見せていた近大附は1-0で前半を折り返した。

 だが、後半12分、セットプレーのこぼれ球を繋がれると、シュートのコースをゴール前で変えられて失点。さらに18分、23分と連続失点を喫してしまう。チームは上手く行かない時に自分たちで解決する力を求められてきた。だが、大一番で修正力が不足。寺師監督は「甘さ、力の無さかなと」と残念がっていた。

 ただし、1-3とされてから10番MF高下麻実(3年)やボランチに上がった若松、上田、MF矢野皓誠(3年)といった主力選手たちが気迫を表現して前へ。苦しい展開の中で、「やるべきことをやるぞとしっかり戦ってくれていた」(寺師監督)。

 繋ぐべきところで強引に仕掛けてロストするシーンもあったが、声援に応えるような戦い。敗れたものの、指揮官から「鍛え直して、ああいうスタンドの状況を作ったことは紛れもなく自分たちが作ったことやから誇りをもってやろうと」と言葉を掛けられた選手たちは、スタンドの風景と、相手選手たちの喜ぶ姿を忘れずに冬へ向かう。

 寺師監督は、30年以上に渡って指揮を執ってきた山田稔前監督の後任として監督就任。「(山田先生は)サッカーだけじゃなくて人間教育というところに凄く重きを置かれている。最後まで諦めないとか、「全力に悔い無し」という言葉がある。伝統を大事にやっていかないといけない」。伝統の堅守に加え、ボールを大事に、「(きょうのような)修羅場でも、自分たちがやってきた攻撃的なサッカーはやっていきたい。(年齢の近い選手たちと) 一緒に成長していきたい」。選手、新体制のスタッフは大阪を勝ち抜くことの難しさを改めて学んだ。攻守の力、修正力を磨いて冬こそ大阪突破へ。そして、応援してくれる人たちと一緒に優勝、選手権出場を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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