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プリンス関西1部勢連破の大谷が決勝でも印象的な戦い。「一からやり直して」冬に京都の勢力図を変える

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大躍進の大谷高。冬に歴史を変える

[6.9 インターハイ京都府予選決勝 東山高 1-0 大谷高 サンガスタジアム by KYOCERA]

「もう内容では絶対負けてなかったし、一人ひとりの部分で見ても本当に負けてなかったと思います。やっぱり、ラストの詰めっていうのが、そこが自分たちの甘さだと思うんで、またもう一回、一からやり直して、選手権でもう一回ここの舞台で次は優勝できるように頑張りたいと思います」。大谷高のMF岩谷昊生主将(3年)はわずかな差を埋め、選手権予選で初優勝することを誓った。

 大谷はかつて選手権予選で決勝進出した実績があるものの、全国大会出場歴はなく、昨年の夏冬の全国大会予選はいずれもベスト16敗退。だが、今大会は準々決勝で京都橘高、準決勝で京都共栄高というプリンスリーグ関西1部勢を連破した。

 決勝では、今年の近畿高校選手権(近畿高校新人大会)優勝校でインターハイ予選3連覇中の東山高に挑戦。「攻守において主導権を握り続ける。僕らは(現体制で)4年前からスタートした時に、相手がどうとかじゃなくて、自分たちのそのスタイルを確立することで京都のサッカーを変えたいっていうのが、スタッフの一番大きなプロジェクトだった」(中川智仁監督)というチームは、全国大会初出場を懸けた一戦で印象的な戦いを見せた。

 チームリーダーで、司令塔でもある岩谷は、「東山相手にも、別にビビらずにちゃんと自分たちのサッカーができたし、球際の部分でも東山相手にも十分戦えていた」と振り返る。相手のハイプレスに対して全く怯むことなく、GK坂下遼平(3年)から徹底したポゼッション。立ち上がりから飲み込もうとしてきた東山の出足を止めることに成功する。

MF岩谷昊生主将はチームリーダー、司令塔として大谷を牽引

 パス&コントロールやポゼッションのトレーニングに力を入れているというチームは、ミスを起こさない。正確なタッチを見せる左SB島田恭佑(3年)への飛ばしパスなどで相手のプレッシングを回避。そこから中盤を活用して攻撃を加速させたり、右SB國嶋琉生(2年)や右SH白波瀬隼(2年)がドリブルで相手のマークを剥がしてスタンドを沸かせる。

 前半16分、CB今西旭(3年)の展開から白波瀬がクロス。これを10番MF樋口晃(3年)が頭で合わせ、26分にはクイックの右スローインから注目エースFW太仁紫音(3年)がシュートへ持ち込む。これはDFのゴールカバーに阻まれたが、CB浅田仁(3年)が身体を投げ出して相手のドリブルを止め、今西が競り合いで渡り合うなど、東山の迫力ある攻撃に対して守備でも健闘を見せていた。

 スタンドの大応援も選手たちの力になっていた。岩谷は「応援してくれてる方々が本当にいい準備をして下さって、何日も前から(1000本の)バルーンだったり、旗だったり、(生徒の)皆さんも歌をちゃんと覚えて下さって。金曜日にちょっと体育祭的なのがあって、そこでサッカー部代表して自分が挨拶したんですけど、その時も凄いみんな応援してくれて、やっぱ学校が一つになって、この決勝戦を迎えれたのかなって思っています」と説明する。

大応援がチームの支えに

 後半、東山がプレッシングの掛け方を変えてきた中、オープン攻撃も有効に。7分には、左サイドを抜け出した太仁がカットインからDFをかわして右足を振り抜く。9分にも、太仁の展開からMF高林亮太(3年)が左サイドを突破してクロス。その後もMF西内輝(3年)や樋口がバイタルエリアを突いたほか、高林のドリブルが左サイドで相手の脅威になっていた。

MF高林亮太は左サイドで突破力を発揮

 また、太仁が相手PAへ鋭く切れ込むシーンがあったほか、ピンチを迎えながらGK坂下を中心に無失点を継続していた。「歴史もありませんし、実績もありませんし、僕筆頭に、スタッフも、選手たちもオール京都の人間」(中川監督)というチームが、スタンドの同級生たちに“また見たい”と思わせるような戦い。経験豊富で勝負強い東山に一瞬の隙を突かれて敗れたが、指揮官のいう「ボールを大事にして、後ろでボールを繋いで、人が湧き出てくるような躍動感のある攻撃」「常に主導権を握りながら、自分たちでリアクションではなくアクションし続ける守備」を最後までよく表現していた。

CB浅田仁が身体を張ったディフェンス

 試合後、選手たちは表彰式や、スタンド前でカップリフトする優勝校の姿を目に焼き付けていた。岩谷は、「試合負けて、ベンチとかロッカールーム戻って、『もう一回、一からやり直そう』っていう風にみんな言ってたんで。来週のリーグ戦からまた自分たちのサッカーをして勝っていけるように、また準備していきたいなという風に思っています」と力を込めた。

 OBでもある中川監督の「(京都)橘、東山を倒して新しい歴史を作る」の言葉に賛同し、覚悟を持って集まった選手たちが進化。今大会では京都橘を倒し、東山を苦しめた。中川監督は「まだ選手権もありますんで、引退じゃありませんし、めちゃくちゃ悔しいですけど次に繋げていけたら。最後は笑って卒業できるように、ラスト約半年は頑張らせないといけない」。夏に爪痕を残した大谷は今後、自分たちの課題、東山との差となった細部の部分を徹底。テーマの「共創」「共想」「競争」を続けて秋に京都の勢力図を変える。

笑顔で選手権を終える

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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