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J内定コンビ擁する筑波大と復権狙う流通経済大の“茨城ダービー”はドロー:関東1部

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[4.13 関東大学リーグ1部第2節 筑波大1-1流通経済大 味フィ西]

 JR東日本カップ第87回関東大学サッカーリーグ戦1部は13日、第2節1日目の4試合を行い、筑波大と流通経済大との一戦は1-1で引き分けた。

 ともに茨城県に所在する強豪同士、大学サッカーの“茨城ダービー”は勝ち点1を分け合った。前半主導権を握ったのは開幕前に全日本大学選抜MF上村岬(4年=磐田ユース)のジュビロ磐田内定が発表されたのに続き、前日12日に全日本大学選抜FW赤崎秀平(4年=佐賀東高)の鹿島アントラーズ内定も発表された筑波大。上村が「(流経大が)ショートカウンターで攻めてくるのは分かっていた。なるべく低い位置でボールを取られないようにしようというのを意識して、あとは立ち上がりどんどん裏を狙って、相手をひっくり返してボクらのペースをつくっていこうという話だった」という筑波大は、トップ下に入ったMF中野嘉大(3年=佐賀東高)がSB背後のスペースへ飛び出し、そこからの連係と個の突破力でゴールへ迫っていく。

 開始2分には左スローインから赤崎がターンしながらの右足シュート。14分には上村の右クロスから赤崎が右足ボレーを放ち、17分には右サイドから細かくボールを動かし、最後は赤崎の落としたボールを上村がポスト直撃の左足シュートへ持ち込んだ。中盤で存在感を放つ全日本大学選抜の大型ボランチMF谷口彰悟主将(4年=大津高)や上村を軸に攻める筑波大は21分にも上村、中野、SB片岡爽(3年=神戸U-18)の連係で右サイドを打開。32分には右サイドから切れ込んだ赤崎がFW曽山慶太(4年=アミーゴス鹿児島U-18)とのワンツーから左足シュートへ持ち込むなどゴールへ迫っていく。

 一方、主力のMF椎名伸志(4年=青森山田高)が左膝の負傷のために長期離脱中で、司令塔のMF中山雄登(4年=広島ユース)も先発を外れた流経大は守備のバランスを取りながらショートカウンターを狙い、チャンスもつくった。12分には左サイドでボールを奪ったMF中美慶哉(4年=前橋育英高)が右サイドへ展開。そしてSB田向泰輝(4年=水戸短大附高)のアーリークロスからFW田上大地(2年=流通経済大柏高)がダイビングヘッドでゴールを襲うなど対向する。そして後半も、9分に右オープンスペースを突いたMF富田湧也(3年=流通経済大柏高)の折り返しから10番MF黒田拓真(4年=東大阪大柏原高)がDFのギャップを突く絶妙なラストパス。これに反応した中美が右足を振りぬく。シュートはDFにブロックされたが、ともに突破力のある中美とMF中村慶太(2年=流通経済大柏高)のドリブルが効果を発揮するなど、PAまでボールを運ぶ回数を増やしていた。

 試合が動いたのは後半21分だ。筑波大は同12分に右FWへ1年生FW吉川修平(柏U-18)を投入し、右FWの上村をボランチに下げていたが、この2人がゴールをもたらす。中央から左中間の上村へボールをつなぐと、「ディフェンスの身体の向きと吉川の入り方を見て、前へ落として上げた方がいいかなと思った」という上村が右サイドの大外からゴール前へ飛び込んで来た吉川へ絶妙なループパス。これを吉川が頭で押し込んで先制点を奪った。交代出場の1年生FWの大仕事。筑波大が待望の1点を奪った。

 だが、終盤は相手のパスをインターセプトした流経大がサイド攻撃から立て続けに決定機をつくる。28分には田向の右クロスから中村が右足ボレー。これはGK神舎宏(4年=広島皆実高)の好守に阻まれたものの、32分には交代出場のFW石井雄輔(4年=流通経済大柏高)のラストパスに同じく交代出場のMF土屋智義(4年=千葉明徳高)が走り込み、35分にも田向のラストパスから石井が決定的なヘディングシュートを放った。相手を押し込んだ流経大は40分、ついに同点に追いつく。1分前に投入されたばかりのMF森保圭悟(2年=広島ユース)の左CKからCB川崎裕大(3年=成立学園高)が渾身の同点ヘッド。中野雄二監督が「森保はFKがめちゃくちゃ上手い。終盤はCKなり、FKがあると思ったので、そこは意図通りだった」という森保投入だったが、サンフレッチェ広島・森保一監督を父に持つMFと、最終ラインで奮闘していたCBのコンビで同点弾をもたらし、引き分けへ持ち込んだ。

 流経大の中野監督は「筑波さんは強い。ウチからすると永遠のライバルなので、1-1になっただけでも良かったと思います。欲を言えば逆転したかったのはありますけれど、きょうの内容からすれば、1-1は無難な結果だった。今年は過去になく4年生(の人間性)が素晴らしいんですよ。(応援する姿勢など)勝たせてあげたい学年。(主力にけが人がいるなど)楽な試合はないですけど、こういう試合を粘り強くやっていけばチャンスはどこかにある」。関東リーグ1部や総理大臣杯タイトル奪取の経験を持つ選手たちはすべて卒業しており、チームはどこか自信に欠けている部分がある。ただ前線の田上、中美、中村のトリオや黒田、大型SB湯澤聖人(2年=流通経済大柏高)ら選手層は厚い。引き分けに持ち込んだ試合を全国復帰、タイトル奪取への自信にしたいところだ。

 一方、筑波大は赤崎、上村、谷口が最終学年を迎えた期待の世代だが、10番MF玉城峻吾(4年=三菱養和SCユース)、全日本大学選抜DF車屋紳太郎(3年=大津高)がともにケガで不在の中、開幕2試合で勝ち点1。各選手がレベルの高さを見せてはいるが、パスの微妙なズレ、弱さでボールを失うなどが相手を攻め倒すようなサッカーには至っていない。赤崎も「(きょうは)ボールを持っているというよりも持たされている感じが多くて。バイタル(エリア)に入っていくシーンを増やしていかないと筑波らしさが出てこないし、単調な試合で終わってしまったなという感じがしています。(内容が良くないことは)やっている自分たちが一番良く分かっている。全然納得の行くパフォーマンスじゃないし、みんな頑張っているんですけど、それがうまい方向に働いていない。もどかしい感じがみんなしていると思います」と首を振る。内容の向上とともにまずは初勝利が必要。自分たちのサッカーを突き詰めながら、首位戦線へ浮上していく。

(取材・文 吉田太郎)
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