beacon

圧倒的な攻撃力に加わった守備安定と選手層向上、専修大が4連覇へ向けて6発発進:関東1部

このエントリーをはてなブックマークに追加

[4.5 関東大学リーグ1部第1節 専修大6-0駒澤大 味フィ西]

 5日、JR東日本カップ2014 第88回関東大学サッカーリーグ戦1部が開幕し、55-58年の早稲田大以来、約半世紀ぶりとなるリーグ4連覇に挑戦する王者・専修大は、全日本大学選抜FW仲川輝人(4年=川崎F U-18)の先制ゴールなど駒澤大に6-0で快勝した。

 ケルンからドイツ挑戦中のMF長澤和輝と甲府でプロ生活をスタートしたMF下田北斗の2本の柱が卒業した専大。だが周囲の不安を一蹴する6-0で会心のスタートを切った。仲川、右SB北爪健吾(4年=前橋育英高)、13年U-20日本代表GK福島春樹(3年=静岡学園高)、CB萩間大樹(3年=川崎F U-18)、左SB小口大貴(2年=川崎F U-18)と5人の全日本大学選抜が先発した専大は序盤、緊張もあってか、187cmのFW小牟田洋佑(4年=前橋育英高)やオープンスペースを目がけてロングボールを放り込んでくる駒大のサッカーに合わせる形となった。

 ただアンカーに入ったMF星野有亮(4年=静岡学園高)、MF北出雄星(3年=三菱養和SCユース)がポジショニング良くボールを受け渡して徐々に攻撃のリズムを掴んでいくと、圧倒的な破壊力を誇る仲川、北爪の右サイドが牙を剥く。8分には右サイドからカットインした仲川の強烈な左足シュートがゴールを捉えると、仲川が技術と速さ、北爪が走力というそれぞれの持ち味を発揮。駒大は中央の平尾優頼主将(4年=市立船橋高)と川岸祐輔(4年=前橋育英高)の187cmCBコンビがゴール前で相手よりも一瞬早くボールに触れてピンチを凌ぎ、注目ルーキー、左SB竹澤昂樹(富山一高)が攻撃参加からクロスへ持ち込むなど攻め返したが、専大が連続ゴールで突き放した。

 27分、専大は右サイドでクリアボールを拾った仲川が北爪とのパス交換で前を向くと、中央へ持ち出してから左足一閃。本人は「ダフッたんですけど・・・。もっと巻いて左上に決めたかったので理想と違うシュートだったんですけど、結果オーライという感じです。(ただ)イメージとは違いますけれどシュートが入ったことに意味があると感じています」と苦笑いしていたが、仲川のスピードを警戒してか、距離を詰めることができずに簡単にシュートを打たせてしまった駒大DF陣を嘲笑うようなコントロールショットがゴール左隅へ決まり、専大がリードを奪った。畳みかける専大はさらに29分、星野が右サイド後方から中央へアーリークロス。スピードに乗って飛び出してきた1年生MF廣瀬慧(前橋育英高)が競り勝って頭で右前方へ落とすと、抜け出したFW山川翔也(3年=新潟西高)が右足でゴールへ沈めて2-0とした。

 駒大は抜群のスピードでDFを振り切る右MF平野篤志(3年=大宮ユース)を突破口に反撃する。だが源平貴久監督が「(ミスから危ないシーンもひとつあったが)シュートらしいシュートを打たせていないですし、後ろの5枚は抜けているかなと思うところがある。きょうに関しては今まで3年間優勝した時よりも守備は安定しているかなと思います」と頷き、北爪が「(守備に関しては)例年にない手ごたえを自分たちの中で感じている。一番の要因はメンバーが変わっていないこと。(去年は立ち上がりに失点するシーンがあったが)先制点、追加点を取りに行きながらゼロに抑えるというところは去年にない手ごたえがあります。去年までは後ろ4枚で守る形だったんですけど、今年は前からディフェンスしていくことで、DFはかなり仕事が限定されて仕事が減ったというか、明確になっている。そこは安定感が生まれている。守備に関しては不安は感じていないです」と胸を張るように専大の守備は安定。ミスから迎えたピンチやクロスボールがゴールエリアへ入ってくる場面もあったが、CB河津良一主将(4年=作陽高)を中心に経験豊富な4バック、そしてレベルの違いを感じさせる福島の鋭い反応と読み、正確なキャッチングの前にシュートを放つことができない。1部復帰戦で王者撃破を目指した駒大だったが、シュート1本で90分間を終えてしまった。

 一方、専大は素早く、正確なパントキックを放つ福島と浮き球のコントロールだけで会場を沸かせる仲川の2人だけでもチャンスをつくり出す。そして19分に左サイドでキープした仲川のパスから北出が右足シュートをゴール右隅へ沈めると、33分には右サイドを切れ込んだ仲川のラストパスから北出がシュート。このこぼれ球を最後はFW前澤甲気(4年=清水商高)が左足でゴールへ叩き込んで4-0とした。

 最後まで攻め手を緩めない専大は44分にも北出からのパスを受けたMF野田卓宏(2年=大津高)がターンから左足シュートを決めて5点目。アディショナルタイムにも仲川、小口のコンビで左サイドを崩し、最後は北出が6点目のゴールを破った。

 連覇中以上に感じているという守備の手ごたえに加え、選手層の向上が王者をV4の快挙に近づける。専大には高校時代に年代別日本代表に選出されたような華やかな活躍をした選手はいない。ただ源平監督が「毎年誰か主力が抜けると、これどうなっちゃうんだろうと思うんですけど、みんなが底上げして、新しい子が入ってくれて、(全体的に技術レベルが高いなかで)渋い子も入ってくれている。ひたむきにやる子、あとは高校でなかなか結果が出なくて日蔭にいた子を日向に引っ張り上げてあげることを意識しながら来てもらっている」と説明する専大は、下級生時から積極的に公式戦で選手起用されるなど個々が高いレベルで経験を積みながら成長。現在、5人の全日本大学選抜経験者と4人の関東大学選抜経験者を擁するタレント軍団となり、今年も廣瀬やGK蔦颯(ともに前橋育英高)、FW深澤知也(横浜FMユース)といったポテンシャルを秘めた選手たちが門を叩いてきた。

 大黒柱が卒業し、1年時から主軸を務めてきた仲川と北爪もラストイヤーを迎えたが、その一方でこの日躍動した北出や萩間の成長や実力派の1年生の加入などによって非常に堅い基盤が構築されている。この日は指揮官も「前半はあんまり。後半もいいシーンはあまりない。攻撃に関しては6点入ったけれど、やっている選手はあんまりと思っているはずなのでメンバーの組み替えも考えてもう少し中身のある攻撃をしていきたい」と語ったように決して内容が良かった訳ではなく、全日本大学選抜組の合流が遅れたことなど連係面に欠ける部分もまだまだあるが、今年も専大が優勝争いの中心となることを十分に示す6-0発進だった。

[写真]前半27分、専修大はエースFW仲川が左足で先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
第88回関東大学リーグ特集ページ

TOP