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[関西選手権]赤黒の10番から緑の11番へ。大阪体育大MF佐藤陽成は新たなステージで日々奮闘中

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大阪体育大の1年生アタッカー、MF佐藤陽成

[7.3 関西学生選手権4回戦 大阪産業大 2-1 大阪体育大]

 住み慣れた北の大地を離れ、大阪で勝負することを決断した18歳の切れ味鋭いドリブルは、少しも錆び付いていない。ユニフォームの色が赤黒から緑に変わっても、そのスタイルは不変。とにかく、前へ、前へ。

「もっと自分の個の技術を伸ばしていかないと、ずば抜けた選手になれないですし、コンサドーレに戻れたとしても試合には出られないので、もっと自分の特徴を、見てもらった人に表現できるようにしていきたいです」。

 大阪体育大の右サイドで煌めくナンバー11。MF佐藤陽成(1年=北海道コンサドーレ札幌U-18出身)が新たに身を投じた大学サッカーの世界で、早くも頭角を現しつつある。

 飛躍の夏はちょうど1年前。札幌U-18は全日本クラブユース選手権、通称“クラセン”で並み居る強豪を蹴散らし、ファイナルへと進出する。最後は名古屋グランパスU-18に屈したものの、堂々の全国準優勝。そのチームで10番を背負い、チームの攻撃を牽引していたのが佐藤だった。

「スピードが速い方なので、縦突破が得意です」ときっぱり言い切るメンタリティと、実際に気持ちいいくらいに仕掛ける姿勢が印象的。赤黒のエースは、間違いなく真夏の群馬を彩った主役の1人だったと言っても、過言ではない。

 だが、トップチームへの昇格は見送られると、進路を模索する中である行き先が浮かび上がる。それが大阪体育大だ。「一番最初に『来てください』ということを伝えてくれたこともありますし、田中駿汰(札幌)くんに話を聞いたり、U-18の先輩の木戸柊摩もいたので、そういうことが決め手になりました」。先輩の存在も後押しとなり、新しい環境へと飛び込むことになる。

「リーグ戦の開幕戦にスタメンで出たんですけど、そこからはなかなか出られなくなったり、途中出場が多くなった中で、5月の最後の方の試合で結果を残せて、良いプレーがどんどん増えていったことで、信頼を勝ち獲れたのかなと思います」。入学直後からいきなり出場機会を得ると、瞬く間に確かな戦力として計算され始める。

 この日の関西選手権4回戦でも、大阪産業大と対峙する一戦にスタメン起用。11番を背負った1年生アタッカーは、右サイドで再三に渡ってキレのあるプレーを披露していく。チームは先制を許したものの、後半に入って追い付くと、以降は一方的に押し込む時間を作るも、なかなか勝ち越しゴールを奪えない。

「6月のリーグ戦は全部先制点を獲れていたんですけど、今日の試合は獲れなくて、ちょっとみんな焦っていて、1点獲れたけど、そこからも攻めあぐねましたね」と振り返った佐藤は、次々とアタッカーの交代カードが切られる中でも、ピッチに立ち続け、次の1点を狙い続ける。



 終盤には決定的なチャンスを創出する。40分。ここも右サイドを好連携で崩すと、マイナス気味にピンポイントのグラウンダークロスを中央へ。あとは決めるだけというようなボールだったが、チームメイトの放ったシュートは、枠の上へと消えていく。そして、その2分後に失点。大阪体育大は勝利を得られず、総理大臣杯の出場権も手にすることは叶わなかった。

「もっとゴール前に入って行けるシーンがあったので、そういうところはまだまだだなと思いますし、何回か良いクロスは上げられましたけど、もっとクロスの質を良くすれば点が決まるシーンもあったので、そういうところは改善していきたいです」。

「11番という良い番号をもらえて、決定的な仕事をもっとしないといけないなと思っていますし、得点を獲らないといけないシーンで、シュートを選択しないでパスを出したりしてしまうので、そういうところは決め切れるようにしたいです」。

 次々に口を衝くのは課題ばかり。本人の意識の中には「1年生だから」とか、「まだチームに加わったばかりだから」というような意識は微塵も透けて見えない。なぜなら、佐藤には明確過ぎるぐらい、明確な目標があるからだ。

「やっぱりU-18にいた時に、トップチームでのキャンプに参加してもやれる印象もあったんですけど、強化の人から見れば『まだまだだな』ということを伝えてもらったんです。だから、今は大学でもっと経験を積んで、ゆくゆくはコンサに戻れたらいいかなと思っています」。

 再び赤黒のユニフォームに袖を通すその時まで、とにかく、前へ、前へ。緑の11番。佐藤陽成。大阪のピッチで、日々奮闘中。



(取材・文 土屋雅史)
●第100回関西学生L特集

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