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[デンチャレ]CB根本健太(流経大)が高校選抜を圧倒。高校時代は無名、大学3年で“初代表”のDFがパリ五輪出場を狙う

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関東選抜AのCB根本健太(流通経済大3年=東京学館高)は1-0の勝利に大きく貢献

[2.28 デンチャレ 関東選抜A 1-0 日本高校選抜]

 圧倒的なパフォーマンスで日本高校選抜の前に立ちはだかった。関東選抜AのCB根本健太(流通経済大3年=東京学館高)は、U-22日本代表の一員として昨秋の第19回アジア競技大会(中国)に出場している注目DFだ。東京学館高時代は千葉県2部リーグでプレーするなど無名の存在。この日は当時、「手の届かないところ」にあったという日本高校選抜と対峙した。

 特に前半は守備機会が少なかったものの、相手のカウンター攻撃やセットプレーに対応。その一方、左利きのCBは最終ラインからのパス、ドリブルで攻撃をコントロールしていた。味方が後半3分に先制した後も隙のない動き。抜群の高さ、迫力のヘッドで相手の攻撃を跳ね返し、自陣PA付近での回収から一気に20~30m前進して速攻の起点になるシーンもあった。

 日本高校選抜は、後半12分にU-17ワールドカップ4ゴールの“切り札” FW高岡伶颯(日章学園高2年)を投入。練習試合とは言え、高岡は日本体育大、桐蔭横浜大相手に抜群の高さ、スピードを活かしてゴールを決めているストライカーだ。日本高校選抜は高岡投入後、スペースへの配球を増加。だが、根本は逸材FWを完封して見せた。

「ちょっと背後を気にしながら、縦パスが入ったら潰しに行くっていうのも考えて。相手の走るコースに自分が入って、風の影響もあったんで(GKヒル)袈依廉との良い距離を保ちながら、良い対応ができたかなと思います」。危なげのない対応。サイドに抜け出されたシーンも冷静にクロスを弾き返すなど、大学屈指のCBが違いを示していた。

 U-22日本代表の活動に参加してきた大学生DFは、基準を世界に置いている。「(U-22日本代表の)大岩(剛)さんには、『もう相手は日本人じゃない』『相手はもう外国人だ』っていうのは凄く話をされてるので、基準ってところをそこに置いて、どんな相手でも完封できるようにっていうのはこだわっています」と説明。どんな相手でも100パーセント勝てる選手になることを目指している。

 パリ五輪出場を狙う世代のメンバーとともに、第19回アジア競技大会に出場。「初めての国際大会だったんですけど、スタジアムの歓声だったり、そのアウェイ感っていうのを初めて体感できて。緊張しなかったんですけど、初めてがっつり外国人選手とマッチアップしてやっぱり強さも違いましたし、そういうスピード感っていうのも全然違ったので、これ以上の強度でやっていかないと、代表のポジション奪うには難しいかなと思いました」と振り返る。

 根本は昨年4月にU-22日本代表候補初招集。大学3年生になるまで年代別日本代表に選ばれた経験が一度もない。だが、22年1月にA代表のトレーニングパートナーに選ばれた当時から、一つ一つ課題を改善してきた。

 U-22日本代表候補初招集時は、代表スタッフから「『差を感じた』とストレートに言って頂いて、そこからまた考え直して、チームに戻って、フィジカルコーチにお願いしてステップやプレー以外の面での自主練を増やして、今もやってるんですけど、そこから試合中のプレーにも自信がついてきたので、今はそんなに差はないかなと思います」。また、アジア競技大会経験後は、より高い目標を設定して取り組んできた。

「10本中1本、2本負けることとか、たまにあるんで、そういうのを減らして、もう100パーセント全部勝てるようにしないといけないっていうのは、流経大のスタッフ、(中野雄二)監督とかにも凄く言われますし、100パーセント勝てるようになれば代表でもしっかり信頼できるCBになると思うし、ポジションを奪えるようになると思うんで、そういう細かいところをしっかり突き詰めていきたい」と力を込める。

 今年はJ1の3クラブに練習参加。それぞれの雰囲気、戦い方を学び、自分のプラスにしている。「どんなチームに入って、どんなサッカーでも活躍できるような選手になれば、どんどん上に行ける」という考えの下、プロからも、代表チームからも求められる選手に。「まずはチームのことを考えて、もちろんパリ五輪に選ばれるように、どんどん活躍していってチームに貢献できるようにする。今年こそは強い流経大を取り戻すためにも、自分が選抜だったり、代表に絡んで行ったりして、流経大だけでなく、大学サッカーを自分が引っ張っていければ」。流経大を勝たせ続け、パリ五輪出場を懸けたアジア最終予選、本大会でU-23日本代表の勝利に貢献することを今年の目標に掲げている。

「日の丸を背負って出てきたからには、もう命を懸けて戦うっていうか、血を流してでも戦い抜いて勝つっていうことを意識しています」

 無名の高校時代を過ごした根本は、プロになることを一時諦めていたという。だが、決意してプロを目指す選手たちが集う流経大でチャレンジ。周囲の影響も受けて「負けたくない」と意識を変えた。現在184cm、81kgという恵まれた身体、左利きという特長も持つDFはチャンスを掴んで、ステップアップ。今年はさらなる飛躍のためにも重要な一年だ。大学サッカーを引っ張り、世界で輝き、自分の3、4年前と同じような境遇にいる高校生たちにも勇気を与える。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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