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育成王国アタランタのたぐいまれなる経営手腕に迫る

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 ペルカッシ会長率いるアタランタは、ここ最近どうやら潤沢な資金を手にしているようである。その理由は何なのか。イタリア経済紙『イル・ソーレ・24オーレ』のマルコ・ベッリナッツォ記者が、『GOAL』にその秘密を解説してくれた。

 最高の環境で若手を育成し、セリエにAデビューをさせたら強豪チームへ移籍させる。そしてその移籍金でスタジアムを改修する。

 かなり乱暴な言い方にはなるが、これこそがペルカッシ会長率いる“アタランタのやり方”だ。アタランタは将来設計を見通した、サッカー経営の賜物であると言えるだろう。

 アタランタの目覚ましい経営成長を支えたのは、まずその“育成力”だ。アトランタのユースに所属する選手たちには、将来有望な選手となるための効果的な育成プログラムが用意されていることはもちろん、理想的な環境で選手が成長できるようにと、周辺環境の配慮までされている。練習着などの用具類の準備、練習場への送り迎えまですべてのサービスが含まれているというから驚きだ。まさに至れり尽くせりである。

 現在のアタランタのホームスタジアムは、イタリアでは多くのクラブが羨むほどの素晴らしいスタジアムだ。改修工事を繰り返し行い、先ほどでは350万ユーロ(約4億3000万円)の費用をかけて新しい人工芝のピッチを入れ、観客席に屋根を設置した。だがアタランタの経営陣はさらにクオリティの高い設備の準備を進めている。今後は中央観客席を改修予定で、すでに220万から240万ユーロ(約2億7000万円から2億9500万円)を拠出済みだ。

 スタジアムの使用料は現在、同じく地元チームであるセリエBのアルビノレッフェと半分ずつ負担している。しかしアタランタはスタジアムの買い取りを計画しているようだ。交渉金額は783万6000ユーロ(約9億6400万円)ほど。購入後は、ペルカッシ会長の意向もあり、イングランドスタイルの箱型スタジアムへと大幅な改修工事を予定している。これが成功すれば、ピッチへの距離は近くなり観客にとっても見やすいスタジアムへと変貌を遂げそうだ。

 …そうだ、というよりも、もうすでにペルカッシ会長はそれを確信している様子である。その計画はもうすでに進行していて、まずは北側観客席の整備から始め、1年後には南側観客席の整備に着手するという計画が立てられている。また、スタジアムにはバールやレストラン、クラブの歴史をたどる博物館も併設されるという話まである。

 工事の終了は2020年となる見込みだが、問題の資金は4000から5000万ユーロ(約49億から61億円)が必要だという。さてその資金はどう捻出すのか? 疑問に思う人も多いだろうが、すでにアタランタはその目途を立てていた。

 まずアタランタは、1月にカルダーラをユベントスへ、ガリアルディーニをインテルへ放出したことで移籍金を手にすることができた。夏にも同様の手段で収益が見込める予定だ。アタランタの新星とも言えるケシエら300人を越える若手選手を抱えており、その資金は合計1億ユーロ(約123億円)ともなる。それに現在活躍する選手の後ろには、U-17、U-15などで活躍しているこれからのデビューを待つ輝かしい才能の選手も控えている。資金の捻出はそう難しいことではなさそうだ。

 選手は商品ではない、という声が聞こえてきそうだが、サッカー経営は紛れもなくビジネスだ。クラブの健全な運営のために売れる選手は高く売り、才能のある選手はより高い値がつくよう大切に育てる。

 サッカーの経営は情だけでは語れるものではない。ただ資金を得るためには選手を大切に育て上げるという愛情がそこにあることを忘れるべきではない。

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