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セスク「フットボールは科学、数字、フィジカルに支配された。足の速い選手と少し遅くて才能ある選手ならば前者が起用される」

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MFセスク・ファブレガス

 現在モナコに所属する元スペイン代表MFセスク・ファブレガスが、フットボールが味気ないものに変わってしまったとの見解を述べている。

 バルセロナ下部組織出身で、アーセナルを中心にフットボール界に大きな足跡を残してきたセスク。時代を彩ったファンタジスタは、今のフットボールの在り方が、あまりに緻密過ぎると疑問を感じている様子だ。スペイン『マルカ』とのインタビューで、次のような考えを口にしている。

「フットボールは変わってしまった。もうすっかり、すっかり変わってしまったんだ。変化 は4〜5年前に始まり、もう皆が気づくようになってしまった。何人もの監督から指示を受けてきたけど、1〜2人の話じゃない。4〜5人が、もうそういった感じなんだよ。それはオートマティスムに基づく方法論で、監督は各瞬間に一体どこまでボールを出していいのかを指示してくるし、選手はいつも正しいポジションに位置していなくてはならない。ゲームが自動化されているわけだ」

「それから、GPSの存在だね。多くの監督が数字に執着している。その数字に満たない場合には、プレーする準備ができていないとみなしてくるし、休みでもレベルを保つために数字を維持する必要がなる……。僕はそういったことについて、少し“オールド・スクール”なんだ。自分はフィジカル的にも精神的にも、そこまで練習に取り組まなくても素晴らしいシーズンを過ごせてきた。でも今はまるで、練習しなければ良い調子になることはあり得ないようだ。すべては科学、数字、GPSがベースとなってしまった」

 セスクはフットボールの指導者の求める選手像が変化、もっと言えば画一的になり、試合についても予想がつく展開ばかりになったとの考えを述べる。

「現代の監督が求めているのは競争力、つまりフィジカルが最大限の選手なんだ。嘆かわしいことは分からないけど、そういうものになったんだよ。ほかよりも速い選手と、少し遅いけど才能のある選手がいるとすれば、より強く速い選手の方がプレーする。それは間違いない」

「試合を見れば、何が起こっていくかが分かってしまう。少しのプレッシングがあって、DFの背後にロングボールを出して、ストライカーはそのボールをウィングや後ろから飛び出してくる中盤の選手のために触る。多くのチームが単調になってしまっている。数字への執着はタレントを置き去りにしているか、重要視しなくなってしまった」

 フットボールは速さや強さなどフィジカルだけの勝負にはなり得ない……。セスクはそう強調した。

「19年フットボールをしてきて、経験とともに語れるようになった。フットボールは走ったり、フィジカルがすべてにはならない。もっとエモーショナルなものだ。レアル・マドリーとPSGの試合を見てくれよ。僕は父親とあの一戦を観戦していたけど、ベンゼマの最初のゴールが決まったときに顔を見合わせた。ベンゼマのゴールパフォーマンスに、叫び声を上げるベルナベウ……。あれ一発で、優勢だったPSGはプレーを止めてしまったんだよ」

「フットボールでエモーションは評価されていない。経験とエモーション、どこに位置すべきで、いつ加速して、いつそうしないかを理解すること……。僕は若い選手たちのことに頭を巡らせて、不安を覚える。今現在のフットボールの監督を見ているとね……。シルバやイニエスタのような純粋なタレントが出現して、もしレアル・マドリーやバルセロナみたいに、ほかより少しだけタレントを尊重してくれるクラブにいられなかったとしたら、どうするんだろうか」

「(バルセロナの)ペドリに関する仕事ぶりはとても素晴らしいと思う。彼にはチャンスが与えられた。違うチームで、もっと好戦的な選手を求める監督のもとでプレーしていたら、どうなっていたんだろうね。バルセロナはペドリ、ガビ、ニコをスターにしようとしている。彼らは見事な選手たちだよ」

 セスクはまた、ただのロマンと形容されることもあるクラブのDNAも信じているようだ。

「悪くないね。バルセロナがレアル・マドリーのようにカウンターや、もっと力強いプレーを見せたとしても、僕からは何もネガティブなことを言わないよ。自分もアーセナルで速攻を駆使してタイトルを勝ち取ったことがある。ただ、バルセロナでは受け入れられないことかもしれない。同様にマドリーも多くのチャンスを生むことなくパスをつなぎ続けはしないだろう」

「レアル・マドリーにはDNAがある。どうしてかは分からないけれど……、グアルディオラとティトは僕たちにこう言ったことがあるんだ。『気をつけろ。私たちの方が優位な状況で、もっとボールを保持している状況で、彼らはもっと危険な存在になる』ってね。彼らはまるで虎、野獣のように襲いかかってくる。凄まじいクオリティーで、一瞬で相手を仕留めてしまうんだ。彼らのことをもう死んでいるとみなせば、なぜそうなるのかは分からないけど、一気に試合に入り込んでくる。マドリーはそうやってチャンピオンズで優勝したんだよ」
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