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マンUの同点弾はオフサイドだったのか? 現地メディアが「誤審と言えない理由」を徹底分析

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FWマーカス・ラッシュフォードの背後で抗議するマンチェスター・シティの選手たち

 今月14日に行われたマンチェスター・ダービーでは、0ー1で迎えた後半33分に決まったマンチェスター・ユナイテッドの同点ゴールが物議を醸した。イギリス『ESPN』ではオフサイドに関する競技規則を参照しつつ、ゴールが認められた理由を探っている。

 マンチェスター・Uは0-1の後半33分、MFカゼミーロのスルーパスに対し、オフサイドポジションにいたFWマーカス・ラッシュフォードが反応。ボールを追いかける形でゴール前に走り込んだ。だが、結局はボールに触らず、遅れて追いついたMFブルーノ・フェルナンデスが右足でシュート。これがゴールに吸い込まれた。

 その直後、ダレン・カン副審はオフサイドフラッグを上げ、ラッシュフォードにオフサイドの反則があったと認めた。ところが、ここでスチュアート・アトウェル主審が副審のもとに向かい、議論を開始。判定を覆してゴールを宣告した。またVARのマイケル・オリバー氏もこの判定を支持。マンチェスター・シティの選手たちは猛然と抗議したが、再度覆ることはなかった。

■現地記者の分析は…
 現地では判定に詳しい『ESPN』のデイル・ジョンソン記者がこのシーンを分析。記事の冒頭では「ゲームの精神、また“サッカーが期待するもの”の観点からすれば、オフサイドがより良い決定であったことには疑いの余地はない。もしゴールが認められなかったとしたら、誰も議論をしなかったであろう」と述べ、ピッチ上ではオフサイドが適切な判定だったとの見解を示した。

 その一方で「ただし、オフサイドの主観的な要素に関して言えば、競技規則はそれほど単純ではない」とも指摘。競技規則に沿って「アトウェルが明確な誤りを犯していたかどうか」という点において言えば、現行のルールでは「間違いなくノーだ」と記し、誤審とは言えないという結論を示した。

 その理由は競技規則にある。

 オフサイドの主観的な判定(主に対象者がボールを触れなかった場合)については、競技規則で以下の基準が定められており、いずれかの条件を満たした場合にオフサイドの反則が認められる。(※条文はJFAによる日本語訳)

①明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレーする、もしくは、プレーする可能性を妨げる。
②ボールに向かう相手競技者にチャレンジする。
③自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える。
④相手競技者がボールをプレーする可能性に影響を与えるような明らかな行動をとる。

 記事ではそれぞれの論点について分析している。

 まず①の「明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレーする、もしくは、プレーする可能性を妨げる」について。これは「ボールがプレーされた時に、オフサイドの対象者が視線を遮っていたかどうか」が焦点となるが、今回はカゼミーロとラッシュフォードの直線上に遮っている選手はいないため、間違いなく該当しない。

 次に②の「ボールに向かう相手競技者にチャレンジする」について。今回の場合、ラッシュフォードを追いかけるDFマヌエル・アカンジ、DFカイル・ウォーカーはプレー可能な距離になかったため、チャレンジしているとはみなされない。なお、記事では「アカンジがラッシュフォードまで戻れていたら、別の判断(オフサイド)になっていただろう」と説明している。

 続いては③の「自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える」について。ラッシュフォードはボールをプレーしようとはしていないため、この反則にも該当しない。記事では「単にボールに向かって走ることによってオフサイドになることはできない。それによって相手プレーヤーに影響を与えているにすぎない」としている。

 最後に④の「相手競技者がボールをプレーする可能性に影響を与えるような明らかな行動をとる」について。記事では「ラッシュフォードが反則だとみなされる可能性がある唯一の条項だ」としている。

 それでもジョンソン記者は、この文言について「通常、攻撃側の選手がボールをスルーするか、プレーしようとすることが含まれる。そして相手選手はインターセプト、クリアしようとすることで直接影響を受ける」と内容を解説。「ラッシュフォードはボールがボックスの端に到達して減速している。フェイントやシュートのための体制の整備と表現する人もいるが、解釈は自由だ。単に走りを止めているとも言える」とグレーゾーンを指摘する。

 また、ラッシュフォードがオフサイドになるためには「このアクションが対戦相手をボールにプレーする能力に明らかに影響を与える必要がある」と説明。両DFは「ボールのプレー距離には決してない」ため当てはまらないし、GKエデルソンの動きについても「GKがボールをプレーする能力には影響を与えていない」と総括している。

 加えてジョンソン記者は「この類のゴールはVARが導入されるリーグにおいてのみ可能となる」と付記。「通常であればB・フェルナンデスがシュートを打つ前の段階で、ラッシュフォードに対してフラッグが上がっているからだ」とし、オフサイドディレイの影響も大きく作用したと分析している。

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