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試合中に溢れたディ・マリアの涙…8年前に立てなかったW杯決勝で歓喜もたらす千金弾

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FWアンヘル・ディ・マリア(ユベントス)

[12.18 カタールW杯決勝 アルゼンチン 3-3(PK4-2) フランス ルサイル]

 8年前には立てなかったワールドカップ決勝の舞台、念願のピッチに帰ってきたアルゼンチン代表の34歳が母国に世界一の勲章をもたらした。2-0で終えた前半、圧巻の輝きを見せたFWアンヘル・ディ・マリア(ユベントス)。前半36分、追加点を決めた直後には試合中にもかかわらず歓喜の涙を流し、8年越しの歓喜に向けた覚悟を強く感じさせた。

 自身にとって2度目のW杯となった2014年のブラジル大会、ディ・マリアは不完全燃焼で大会を終えた。準々決勝のベルギー戦(○1-0)で右足の肉離れを負い、準決勝のオランダ戦(○0-0、PK4-2)は登録メンバー外。決勝のドイツ戦ではベンチ入りしたが、プレーできる状態ではなく、チームも延長戦の末に0-1で敗れて優勝を逃した。

 18年のロシア大会には4年前のリベンジを期して臨んでいた。しかし、決勝トーナメント1回戦で無念の敗退に終わった。対戦相手はフランス。自身は0-1で迎えた前半終了間際に強烈な左足シュートで同点ゴールを挙げ、チームに大きく貢献していたが、壮絶な打ち合いの末に3-4で敗れた。

 今大会は4度目のW杯。ディ・マリアにとっては厳しい大会になろうとしていた。グループリーグ3試合に先発したが、決勝トーナメント以降はコンディション不良も報じられ、出番は準々決勝のオランダ戦(○2-2、PK4-3)の終盤のみ。ところが、最後に出番は待っていた。リオネル・スカローニ監督は前回大会で敗れた因縁のフランスとの決勝で、先発メンバーに抜擢した。

 ポジションは普段の右ウイングではなく、左ウイングだった。守備的な役割のDFジュール・クンデを押し込むためか、相手の脅威になるFWウスマン・デンベレを押し込むためか。いずれにせよ、この起用は見事に的中した。

 ディ・マリアは前半3分、さっそくサイドチェンジを受けて鋭いクロスでチャンスを導くと、8分には精度の高い折り返しのパスからMFロドリゴ・デ・パウルのミドルシュートを演出。同17分には、右サイド起点のカウンターに飛び込むと、最後は逆足の右足シュートが大きく枠を外れたが、数多くのチャンスに絡んでいた。

 すると前半21分、ついにその奮闘が結果に結びついた。味方の波状攻撃で生まれたこぼれ球が左サイド深くに流れると、素早いスプリントでいち早く追いつき、そのまま追いかけてきたFWウスマン・デンベレを突破。ペナルティエリア内までえぐってファウルを誘い、PKを獲得した。これをFWリオネル・メッシが成功。持ち味のドリブルで先制点を導いた形となった。

 さらにディ・マリアは前半36分、右サイド起点のカウンターを左サイドで待ち構えると、MFアレクシス・マック・アリスターからのクロスに対してゴール前へ。最後は巧みにボールをバウンドさせるシュートで、GKウーゴ・ロリスの牙城を破った。前回大会に続くフランスからのゴール。直後、チームメートと歓喜を爆発させたディ・マリアの目には光るものが見えた。

 2-0の時間が続いた後半も左サイドのディ・マリアから次々にチャンスを作り出し、メッシが執拗な警戒を受ける中、攻撃を牽引していた。かと思えば守備の汗かき役も普段どおりに淡々と担当。後半19分に途中交代でピッチを去る際には、スタジアムの大半を埋めたアルゼンチンサポーターからは割れんばかりの大声援が送られた。

 その後、チームはFWキリアン・ムバッペの2ゴールで同点に追いつかれ、あらためてディ・マリアの存在の必要性を痛感することになった。それでも延長後半、メッシの勝ち越しゴールが決まると、いち早く背番号10のもとにビブス姿で走り寄り、歓喜をぶつけた。その後チームは再び追いつかれてPK戦へ。最後はその行方を見守るしかなかったが、結果はついてきた。

 試合後の表彰式、スタジアム内では一人一人の名前がコールされ、金メダルを受け取る流れとなったが、主将のメッシが最後に呼ばれたこともあり、背番号11の名前にはひときわ大きな声援が飛んだ。サポーターの熱量を一身に受け、ゆっくりと表彰台に歩みを進めたディ・マリア。感慨深い表情で静かにメダルにキスをした。

 偉大なエースの一挙一動に大きな注目が集まり、歓喜する姿に世界中が胸を打たれたカタールW杯。しかしその偉業の陰には、フットボールの才能にあふれ、チームのために汗をかき、着実に信頼を積み重ね、世界一をかけた決戦でも大仕事を成し遂げた34歳の存在があったのは間違いない。

(取材・文 竹内達也)
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