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[プレミアリーグEAST]青木スーパーゴール!静学との激戦制した首位・流経大柏、復調へ「大きな1勝」

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[6.30 高円宮杯プレミアリーグEAST第7節 静岡学園0-2流通経済大柏 時之栖裾野G]

 30日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2013 プレミアリーグEAST第7節が行われ、ともに全国高校総体出場を決めている静岡学園高(静岡)対流通経済大柏高(千葉)の注目対決は2-0で流経大柏が制した。流経大柏は首位キープ。一方の静岡学園は9位へ後退している。

「ハーフタイムに『この試合は一進一退だよ』と。『ひとつ先を読んだり、ひとつ走った方が勝つよ』と話しました」。流経大柏の本田裕一郎監督は非常に激しい攻防戦だった前半45分間の終了後、選手たちにことばをかけた。全国総体の優勝候補に挙げられる流経大柏と静学の強豪対決。やや優勢に試合を進めていたのは流経大柏だったが、わずかでも気を抜けば相手に上回られてしまう。その危機感を指揮官だけでなく、選手たちも肌で感じていた。そして気持ちを入れ直して臨んだ後半は好守と鮮やかな2発。技術、運動量、闘争心でも上に立った流経大柏が復活への足がかりとなる勝利を果たした。

 総体の千葉県予選決勝で市立船橋に2-3で敗れた流経大柏は、清水ユースや青森山田高に大勝していた今季序盤の勢いがやや衰えてきていた。そしてこの日は得点ランキング首位のFW森永卓と185cmCB三嶋廉士(ともに3年)が負傷欠場。その中でプレミアリーグの戦い、そして激戦ブロックに入った全国総体へ向けてよりレベルアップを目指すチームは、FWジャーメイン良(3年)ではなく、期待のFW立花歩夢(3年)を1トップに、またU-18日本代表候補の左SB石田和希(3年)を左MFへ配置して試合に臨んだ。

 立ち上がりは静岡学園のペースだった。少ないタッチでボールを動かし、縦への速い攻撃も見せる流経大柏だが、静岡学園は中央を守るCB長島來雅とCB吉田健(ともに3年)のコンビが強固。失ったボールをすぐに取り返そうとする流経大柏のプレッシャーも静学は怖れない。CBからボールを動かすと、U-17日本代表候補MF須藤駿介やFW山本啓介(ともに3年)の個人技やショートパスでDFを剥がしてゴールヘ迫っていく。その技巧で中盤のラインを突破した静学は5分にMF大坪岳(2年)が左足シュートを放つと、9分には右サイドの須藤が絶妙な縦パス。トップスピードでディフェンスラインの背後へ飛び出した右SB手塚朋克主将(3年)がDFを振りきって右足を振りぬく。強烈な一撃はGKの正面を突いたが、早くもビッグチャンスをつくり出した。

 だが流経大柏は守備からリズムを奪い取る。抜群の運動量を見せた10番MF小泉慶(3年)とこの日が18回目の誕生日だったMF西槙翼(ともに3年)のダブルボランチが激しいチェイスで静学の前進を阻む。逆に正確なパスワークでボールを支配して主導権を握り返すと、32分に右中間から持ち込んだ立花が左足シュート。33分にはこぼれ球に反応したCB石川将人(3年)がポスト直撃のシュートを放った。また41分にもCB時田和輝(3年)からの縦パスで抜けだした立花が快足を活かしてPAへ侵入。静学は局面での攻防戦で劣勢となり、ファウルを連発するなどリズムに乗ることができない。ただ、須藤やMF望月勇哉(3年)が球際で厳しい守りを見せ、背後へのボールはCBコンビが的確な対応。回数は時間の経過とともに減っていったが、本来主軸のMF米田隼也とMF原田鉄平(ともに3年)が負傷のために不在ながらも技術で相手の守備網を切り裂くシーンをつくった。

 そして、後半立ち上がり、再び静学が押し返す。手塚が右サイドを個で攻略し、また絶妙な切り返しでDF1人を外す山本がシュートへ持ち込んでいく。だが立花のスピードと、後半目覚めたU-18日本代表候補MF青木亮太(3年)の個人技が静学との差を生み出す。後半15分、青木からのパスを受けた立花がPAへ侵入すると、切り返しでDFを外して右足シュート。これは静学DFにブロックされたが、フォローしていた青木が「身体が勝手に動いた。無意識的にあんなゴール前でできたので不思議ですね」とPAでの切り返し2発でDFとGKをかわして右足シュートをねじ込む。J注目のタレントが決めたスーパーゴールで流経大柏がついに試合を動かした。「前半はチームのマイナスになるプレーしかできていなかった。ヤバイな、と。チームのプラスになるプレーをやらなきゃいけないと思っていた。チームから中心と言われているので、点取ってエースにならなきゃいけないと思っているし、点取れるプレーヤーにならなきゃいけない」という青木の一撃で流経大柏は勝ち点3へ大きく近づいた。

 静学はショートパスをつないでPAまで運ぼうとしていたが、流経大柏はやや対応が緩くなった静学の背後やバイタルエリアを立花やMF秋山陽介(3年)、石田が突いて相手に攻撃する時間を与えない。選手交代を繰り返して活性化しようとした静学は38分、プレミアリーグ初出場で技術の高さを見せていた左SB佐野成也(3年)のインターセプトから中央のスペースでパスを引き出した1年生FW加納澪が右足を振りぬく。静学にとっては終盤最大のチャンスだったが、シュートは枠を捉えず。逆に流経大柏は42分に石田のスルーパスから立花が決定的なシュートを放つと44分、青木からのパスで左中間を完全に抜けだした立花が、GKを引きつけて逆サイドでフリーのMF上田将寛へダイレクトのラストパス。これを上田が右足で難なくゴールヘ沈めて勝敗の行方を決定づけた。

 静岡学園は対抗できる力を見せながらも惜敗。手塚は「ボールを支配できなかった。みんな練習から意識してやらないといけない」と無念の表情だった。一方、練習でも状態の良くなかった流経大柏にとっては“変わる”きっかけとなる、またプレミアリーグ優勝へ向けても貴重な1勝となった。緊迫した好ゲームで勝利を収めた本田監督は「きょうの試合は勉強になりました。(静学のレベルが高く)チームにカツを入れてくれた」。そして石田は「みんな身体が動いていない。この大事なところで結果を出せたのは、大きな1勝だったと思う。チームとしてこの勝利をバネにして、モヤモヤしている現状を変えていきたい」とここから再びチーム力と個々のコンディションを高めていくことを誓っていた。試合後は、わずか数人で声を響かせていた控え組の選手たち中心に、誕生日の西槙を祝福。笑顔でアウェー戦を終えた流経大柏が“最強軍団”への道へ新たなスタートを切った。

[写真]後半15分、流経大柏MF青木が先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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