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「優勝した先輩たちを見てきた」強み。新生・星稜は日々を積み重ねて再び頂点へ

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[2.7 ジャパンユーススーパーリーグ 四日市中央工高 4-2 星稜高 時之栖Hグラウンド]

「今の代の強みというのは優勝した先輩たちを見てきたというのが一番の強み。自分たちがそこまでのレベルを目指すという目標がある」。療養中の河崎護監督に代わり、今大会も星稜高(石川)の指揮を執っている木原力斗監督代行は今年のチームの強みについて、全国高校サッカー選手権優勝へ到達した「先輩たちを見てきた」ことを挙げた。「一からのスタートです。去年のチームもあの(準優勝した13年度の)選手権を経験しているメンバーが入っていましたけれど、当初、試合ではなかなか勝てなかったんですよね。1年間見て、どれだけ成長するか。どこで変わるか分からない」。当初、なかなか勝てなかった3年生たちが全国高校総体8強、そして選手権日本一へと駆け上がった。その姿を間近で見ていた1、2年生たちは先輩たちのように高い意識を持ち、彼らが取り組んできたような日常を過ごしていく決意でいる。

 新チームのリーダー格のひとりであるMF大橋滉平(2年)は「(選手権は)出ていた11人だけでなく、メンバー30人、全員が日本一獲りたいと思っていたと思いますし、その気持ちは間違いなく日本で一番強かったと思います。最初バラバラだった3年生のチームが『最後日本一取る』とずっと言っていた。今は間違いなく、『日本一獲れるチームではない』。でも、選手権期間も先輩やコーチといろいろ話したんですけど、『1年でチームは絶対に変わる』と言ってくれたので、そこは自分とか阿部(雅志)とかで監督、コーチと話してやっていきたい」と語った。なかなか結果が出なくても「日本一になる」と信じて取り組み、歴史を変えた先輩たちの姿を見ている。「『連覇しろ』とほとんどの先輩からは言われている」(大橋)という目標に近づくために、自分たちも先輩たち以上の意欲を持って日々に取り組むつもりだ。

 歓喜の全国高校選手権初優勝からまだ1か月弱。新チームは選手権から石川県へ戻った次の日に始動した。選手権の登録メンバーだった2年生は日本高校選抜候補に選出されたGK坂口璃久とU-17日本代表のMF阿部雅志、大橋、FW大倉尚勲の4人だけ。昨年は13年度決勝を経験したメンバーが半数残っていたの対し、今年決勝で先発を経験しているのは坂口ひとりだけだ。チームは大きく入れ替わったが、選手たちは経験面以上にこれからの日々の積み重ねを重視する。阿部は「今は自分の将来のために成長できるかを目指している。一つひとつの練習、試合で自分を成長させること。(選手権の経験もとても大事だが)プロになるとか、大学でもっと通用するために選手権よりも日ごろの練習の方が大切かもしれない」。

 チームとしてはまだまだ課題だらけだ。総入れ替えとなった最終ラインはこの日、四日市中央工に攻略されて4ゴールを献上。だが、この時期のテーマである守備のベースを築いていく段階の中で、強豪相手に学ぶことができたのは大きい。大倉は「個人の技術、チーム全体を見ても欠点だらけ。チームとしては苦労して、欠点、課題をいっぱい見つけてというのは今回の目的でもある」。試合中、試合後も選手たちで改善点について指摘し合う姿が見られた。

 新チームのスタート時に木原監督代行は選手たちに対してプレー面よりもまずは「私生活とか学校生活のところから良くしていこう」とメッセージを送ったという。河崎監督をはじめ、コーチ陣、選手たちは日常をとても大事にしてきた。日常、日々の積み重ねが人間としての土台をつくり、個人とチームを強くする。そして個々がどれだけ努力することができるか。「誰がトップチームに上がるかはボクらにも分からないところがある。チャンスをもらって、チャンスを掴めなくてもその子のためにはなるんです。(チャンスを掴むために)ちゃんとした準備をして、喜ぶ姿も、悔しがる姿を見てまた周りの子たちも頑張ろうとなるでしょうし」と木原監督代行。1年後、誰が活躍するかは分からない。それぞれが目標を持って、諦めずに、チャンスを掴むための準備をすることができるか。それが不足すれば、石川県予選で敗退しているかもしれない。だからこそ、チーム内で刺激し合ってを目標達成を目指していく。

 大倉は「今は苦しいですけれどもインターハイ、選手権で勝てるように一日一日大事にしていきたい」。そして阿部は「チームとしてはインターハイ優勝とか選手権優勝とかそれも目標ですけれども、一個一個積み重ねていって、1か月後に『チームとしてまとまりつつあるな』とか、成長していきたい。そう思われるように毎日、自分としてもやっていきたい」。先を見過ぎることなく、王者は一生懸命に日々を送る。

(取材・文 吉田太郎)

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