beacon

[MOM2147]大阪桐蔭FW菊井悠介(3年)_延長戦終了間際に劇的ゴール。2試合連続決勝点でチームを近畿王者へ導く

このエントリーをはてなブックマークに追加

決勝点を決めた大阪桐蔭高FW菊井悠介

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.19 近畿高校選手権決勝 大阪桐蔭高 1-0 京都橘高 上富田スポーツセンター]

 前日に行った準決勝の東海大仰星高戦でもアディショナルタイムにFKを直接決めて決勝点をマーク。「FWの選手は、1点でも多く点を獲ってDFを少しでも楽にするのが仕事」。そう意気込む大阪桐蔭高のFW菊井悠介(3年)が、2試合続けてストライカーとしての仕事を果たした。

 主将のMF西矢健人(3年)曰く、菊井は「良い意味でも悪い意味でも自分を持った選手。“俺に出せ”キャラ」。気持ちの強さが持ち味の“切り込み隊長”と言える選手で、「勢いに乗ったら止まらない」(西矢)選手ではあるが、気の強さが空回りしてしまい、自分に良いボールが出なかったら、イライラしてしまう姿も珍しくないという。

 京都橘高と対戦したこの日も前半だけ見れば、“良くない”日の菊井だった。自陣からボールを繋いで相手を揺さぶりながら、機を見て西矢とMF神戸康輔(3年)のダブルボランチが縦パスを前線に入れたが、パスが渡るのはFW今岡陽太(3年)がほとんど。菊井がボールを持っても、PAから離れており、ゴールという自らの仕事はこなせない。

 チームメイトの目からは、平常心ではないように映っていたというが、ハーフタイムに永野悦次郎監督からメンバー全員に「イライラする必要はない」と声をかけられたことで、落ち着きを取り戻すと、後半からはゴール前での仕事が増加。「スコアも0-0だったので、気持ちを1から入れなおすことができ、前半よりも後半は良いサッカーができたと思う」と振り返るように、チームとしてはチャンスの機会が増えたが、自身のシュートは前半に続いてゼロで終わった。

 延長戦でも、試合を動かすことができず、不完全燃焼のまま、PK戦に入るかと思われたが、絶好のチャンスは後半終了間際の9分に訪れた。右サイドでボールを持ったMF北田ダイア(3年)がクロスを入れると、ニアで味方が反応。ジャンプで競り合ったこぼれ球がPA中央で待ち構えた菊井の下へと落ちてきた。

「直前にベンチ前で給水していたら、中垣(典明)コーチに『ワンチャンス』あるからと言われたので、チャンスが来たら、後悔しないように決めるだけだなって思っていた。そうしたら、本当にクロスが上がって、こぼれてくるなって思っていたら、本当にこぼれてきた。イメージはできていたので、動きは速かった」。そう振り返った菊井は、瞬時に胸で浮き球をコントロール。体勢を崩しながら放った右足ボレーがゴール左隅に突き刺さると、これが決勝点となり、チームの優勝が決まった。

 今大会は準決勝と決勝の2試合で決勝点を奪う活躍を見せた菊井だが、「小中学生の頃は点を獲るキャラじゃなかった」と振り返るように、大阪桐蔭に来るまでは点取り屋というよりも、前線でボールを受けてから、味方の得点をお膳立てするパサータイプの選手だった。

 大阪桐蔭への入学後も2年間、FWとして試合出場を重ねたが、Aチームの公式戦で記録した得点は5得点。得点に対する嗅覚が芽生えたのは、今年に入ってからで「アシストの方が好きだったけど、高校に入ってからはそれだけでは相手は怖くないと気付いた。3年生になって、自分がもっと点を獲ってチームを勝たせないといけないという想いが強くなったのもあって、ゴール前に飛び込む回数が増えた」。

 それでも、総体の府予選では2トップを組む今岡の陰に隠れ、ゴールを奪う機会は少なかったが、今大会の活躍によって点取り屋として覚醒しつつある。次なるターゲットは、選手権予選。「大阪はどこが勝ち抜くか分からないと言われているけど、そうじゃなくて桐蔭が圧倒的な強さで勝ち抜くために努力していく」と意気込むように、ストライカーとしての牙を磨き、今後もチームを勝利に導くゴールを奪うつもりだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2017

「ゲキサカ」ショート動画

TOP