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初めてキャプテンマーク巻いた日は「絶対に忘れない」ミスも。青森山田の“最強”CB藤原優大は将来の糧に

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浦和内定の青森山田高CB藤原優大主将はこの日の1失点を「絶対に忘れない」

[8.30 スーパープリンスリーグ東北第1節 青森山田高 13-1 秋田U-18 青森山田高G] 

“高体連最強”のCB藤原優大(3年、浦和内定)は、怒りの矛先を自らへ向けていた。「自分があそこで焦る必要はなかった」「ああいう一つのミスで失点してしまうと心残り」「キャプテンとしてまだまだ力不足」「スキルをつけないといけない」。13-0の状況で許した1失点。ミスしたこと、そして青森山田高(青森)全員の目標「無失点V」を実現できなかったことを心の底から悔しがっていた。

 後半39分、青森山田は敵陣CKからのカウンターを食らう。これを一番後方にいたDFが対応してボールを奪い取ったが、タッチが大きくなったところを秋田U-18MF安藤功記(1年)に奪い返されてしまう。

 藤原は敵陣ゴール前からのスプリントで自陣へ戻り、先行く相手MFに追いついた。このままシュートコースを切っていれば失点することはなかったかもしれないが、「仲間がミスして、あそこでカバーしてボールを取り切るまでがカバーリングだと思う。取り切って次のシーンに繋げるのがキャプテンだと思う」という藤原は、右前へ持ち出した相手へスライディングタックル。このタックルが安藤の足を引っ掛ける形となり、PKを与えてしまった。

 そこまではパーフェクトな内容。鉄壁の守備面だけでなく、対角のフィードを次々と通し、ヘディングシュートを決めるなど際立つプレーを見せていた。だが、このシーンでは焦ってボールを奪い返しに行き、失点に繋がるPK献上。藤原は昨年のプレミアリーグEAST・尚志高戦でも同じような形からタックルへ行ってPKを与えてしまっている。責任感の強さ、また「奪う」ことを意識しすぎた結果、最悪の結果に。だからこそ、「学習不足ですし、これから成長するために謙虚にやっていかないといけない」と引き締め直していた。

 黒田剛監督は1年時から選手権決勝のピッチを経験し、昨年から絶対的な選手となった藤原について、「右足・左足の精度もキック力も、スピードもあって、ヘディングも強いでしょう。コントロールも上手い。ウイークポイントが少ない、レベルの高い選手になった感じはするかな。今すぐプロでやれる感じがする」と賛辞を惜しまない。一方で昨年と同じミスを指摘。そして、「これからのサッカー人生で良い教訓になった」と糧にすることを求めていた。

 藤原自身も「自分がプロサッカー選手になった時に、ああいうプレーで対応し切ること。(この経験を)活かさないといけない。しっかりと学習して、切り替えるは切り替えるんですけれども、反省点として絶対に忘れないように次に向かっていきたい」と誓っていた。

 1つのプレーについてここまで悔しがるのは、本人が高みを目指しているからこそ。プロの世界に入れば、高校でできていたことができなくなると考えている。だからこそ、高校サッカーではミスなくやり切ること。簡単に切り替えることができない様子だったが、将来を嘱望されるDFは必ず成長のきっかけとする。

 新チームで主将を務めてきた藤原はこの日、初めてキャプテンマークを巻いてのプレー。その感想について、「初めてキャプテンマークを任せてもらったんですけれども、重みも感じますし、青森山田のキャプテンとして見られると思うので、責任はあるなと思っています。ヒデさん(武田英寿、現浦和)や歴代のキャプテンは責任を背負ってきた。みんながやっていなくても、自分はやらないといけない」と説明した。

 主将として臨むシーズンは、もちろん初めて経験するコロナ禍。公式戦が行われない状況で「自分のモチベーションを保つのでいっぱいいっぱいだった時があった。チームに働きかけることができない時もあった」と振り返る。それでも自分について来てくれる仲間たちと乗り越えてスーパープリンスリーグ開幕を迎えた。

 そこで青森山田イレブンは躍動して圧巻の13得点。一方で藤原にとって、初めてキャプテンマークを巻いた日は悔しさで「絶対に忘れない」一日となった。その悔しさを常に持ちながらより成長を遂げて、青森山田が無失点で勝ち続ける原動力に。“最強”CBはこのミスを絶対に繰り返さない。

(取材・文 吉田太郎)
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